02 エフェクトワーク
撮影が終わったところで、植原氏により撮影素材を仮合成したVFX用のアニマティクスが作成され、いよいよ本制作に入っていく。まず壊される書斎全体をモデリングしてエフェクト班に渡し、エフェクト班はそのモデルを基に破壊エフェクトを作成。モデリングに関しては、実際に劇中の時代設定である19世紀の建築物を模して、壊すことを前提として建物の骨組みや壁の構造まで厳密に再現されている。相当量の破片が飛び交うわけなのだが、その作業はエフェクト班の分業で行われた。「自分がPIXOMONDOやScanlineVFXでやっていた方法なのですが、まずベースになる動きを決めてから、それを基に皆が大体同じ手法で要素別に作業を進めていきます。ひとりひとりがちがう手法でやっていると合わなかったり、後で誰かに引き継げなかったりするので。今回こうして手法を統一したことで、誰かが抜けても誰かが絶対に入れるという状況を意図的につくりました。海外のプロダクションではどんどん人が入れ替わるので、そういった点が合理的にできている。それを今回自分たちもやってみたんです」と米岡氏は語る。
アニマティクス
画像はCG班用のアニマティクスだ。実際に撮影された人物プレートを仮合成して、おおまかに完成形をイメージできるところまでもっていっている。「このプレートをこのタイミングで貼って動かすと成立するね、といったことを一度確認して、CGスタッフと共有します」(植原氏)。「ここまで来てしまえば、あとは複数のスタッフで作業してもイメージがずれない。これをつくり上げることがSVとしての重要な仕事です」と曽利監督
セットモデリング
アニマティクスが固まったところで、植原氏は破壊用の部屋のモデリングに着手
「骨があって、壁があって、レンガが積まれていて、さらに手前に壁があって。こうすると破壊したときに内部の構造がきちんと見える。こういうモデルを、あとはthinkingParticlesでどうぞご自由に、といった具合でエフェクト班に渡しています」(植原氏)
破壊された部分は内部のレンガなどがきちんと見えているのがわかる。セットでは様々なプロップ(小道具)が配置されているが、モデルとしては制作されていない。「プロップが何もないのは気になっていたのですが、監督から『必要ない』と指示があって。実際に繋いでみると案外気にならないものでした」(植原氏)
エフェクトワーク
モデリングされた書斎を破壊のためにプリカットした様子
プリカットに沿って破壊を加えたモデル
「あらかじめモデルを分割してディテールのある状態に破片をつくっておき、それに対してシミュレーションをかけるというやり方にしました。このプリカットというのが面倒な作業ではあるんですが、この作業如何でクオリティがものすごく左右されるので、慎重にやらなければいけないんです」(米岡氏)
thinkingParticlesでの作業画面。画像中の青い線と黄色い線はそれぞれ渦巻きの軌道と速度を表している。「ひとりがだいたいこのくらいのスピードで回しますよ、といった回転の大元となるパーティクルをつくり、それを基に大体3~5人くらいが同時進行でそれぞれの要素ごとに作業をしました」(米岡氏)
プリカットした破片を全て飛散させた状態。プロップをモデルで配置していない分、この書斎が壊れたであろう雰囲気を出すために、書斎らしく本や書類のようなものを飛ばしている。「それっぽくなっていれば成立して見えますからね」と米岡氏
また、その後のコンポジットで調整できるよう、煙などは光源別に色分けされたRGB素材を出している
完成画像