現実世界の椅子の上に立ち、さらに飛び降りる菊地 真
C:現実世界のダンサーがアイドルと一緒に踊る演出も「MR ST@GE!!」の大きな特徴でした。この演出は最初から決まっていたのでしょうか?
飯島:その点は1st SEASONの前に時間をかけて議論がなされました。最終的には、「そこにアイドルがいる」ことを強く感じられるステージにするため、アイドルと現実世界のダンサーに、一緒にパフォーマンスをしてもらおうという結論になりました。
遠藤:期待通り、この演出を見た瞬間から「刺さる」方が多くいたように思います。ユニットライブパートでアイドルたちだけが歌唱しているときは普段のゲーム体験の延長のような感覚だったけど、アイドルとダンサーの共演が始まった瞬間に「あれ!?」となり、「世界が変わった」と多くの人が語っていました。
▲ライブ中にポーズを決める双海姉妹とダンサー。向かって左のダンサーは双海亜美、右のダンサーは双海真美の髪型を真似ている
C:現実世界のダンサー、小道具などとアイドルがインタラクションする演出は、実在感を強く感じさせてくれましたね。菊地 真の主演回では、ステージ上に置かれた椅子に片足を乗せながら歌い、その後椅子の上に立ち、さらに飛び降りるというパフォーマンスが披露されました。「今、真が椅子の上に乗ったよね? 何が起こったの?」と、多くの「プロデューサー」が驚愕していましたが、このパフォーマンスが生み出された経緯も教えていただけますか?
遠藤:1st SEASON中の休憩時間に、如月千早がステージ上で座っている姿を見たJUNGOさん(演出家)が、「椅子に座る演出も有りじゃないの?」とひらめき、千早が現実世界の椅子に座って歌うパフォーマンスが生まれました。そんな感じで、リハーサル中のアイドルの姿がヒントになって、新しい演出が考え出されることも多かったです。
石田直秋氏(以下、石田):その発展版が、菊地 真のパフォーマンスです。でも、椅子の上に立ったり飛び降りたりするのは、椅子に座る以上に難易度が高かったです。真とモーションアクターさんとでは足の比率がちがうため、ステージ上の椅子と同じ高さの椅子を使ったキャプチャでは、自然なパフォーマンスにならないんです。そこで、ちょうどいい高さを測り、その高さの椅子の代用品を新たにつくり、それを使ってキャプチャするというアナログな対策で乗り切りました。
臨機応変に選ばれる衣装と、それに応じた「衣装合わせ」
C:「MR ST@GE!!」では「プロデューサー」のリクエストに合わせてアイドルが着替えてくれる一幕もありました。家庭用ゲームの『THE IDOLM@STER』のシステムがベースになっているからこそ、実現できたパフォーマンスだったのでしょうか?
飯島:そうです。家庭用ゲームで用意されている衣装やアクセサリーは全て身に着けられる仕組みになっています。1st SEASONではアクセサリーまでは着けられなかったので、2nd SEASONの直前に、土井に仕組みを追加してもらいました。そのことをBNEの勝股春樹P(※2)に2nd SEASONのリハーサル中に報告したら、「ぜひ着けましょう!」と言っていただき、当初の予定を変更してアクセサリーも身に着けてもらうことになりました。その効果は、思った以上に大きかったと思いますね。
※2 勝股春樹P:BNE所属の「MR ST@GE!!」のプロデューサー。勝股氏へのインタビュー「2次元アイドルが現実世界に!?THE IDOLM@STER MR ST@GE!!勝股Pの挑戦」「THE IDOLM@STER MR ST@GE!!で広げたい、アイドルプロデュースの可能性」も本記事と合わせてご覧いただきたい。
土井:身に着けたアクセサリーの中には、すごく大きいものもあって、共演するダンサーさんに立ち位置を変えてもらったこともありました(笑)。いつもの立ち位置だとダンサーさんがアクセサリーにぶつかってしまうことにリハーサル段階で気付いて、振付師さんが変更をお願いしていましたね。
遠藤:双海亜美の「キリン」と、双海真美の「かっぱ」はインパクトがありましたね。こういうアクセサリーは双海姉妹じゃないと着けられません(笑)。ほかのアイドルは、アイドルらしい恰好をしていました。
▲PS4ゲーム『アイドルマスター ステラステージ』(以下、『ステラステージ』)のゲーム画面より、「キリン」のアクセサリーを身に着けた双海亜美【上】と「かっぱ」のアクセサリーを身に着けた双海真美【下】。特に「キリン」の頭部は、身に着けるだけで2頭身ほど伸びる。「双海亜美・双海真美 主演回(第一部)」では、このアクセサリーを身に着けた2人がハチャメチャなライブを展開してくれた
佐々木:でも、そのながれで翌日の主演アイドルだった高槻やよいは、「とら」のアクセサリーを身に着けていましたね。
▲「ステラステージ」のゲーム画面より、「とら」のアクセサリーを身に着けた高槻やよい。ゲーム中では「衣装」と、「頭」「体」「手」「足」の4ヶ所の「アクセサリー」を自由に着せ替えることができる。2nd SEASONでも、その日のアイドルのコンディション、演出、客席の「プロデューサー」の声などに応じて、臨機応変に衣装とアクセサリーが変わっていった
C:高槻やよいは、もともと「とら」のアクセサリーを身に着ける予定だったのでしょうか?
飯島:直前のリハーサル中に決まりました。前日に双海姉妹が「キリン」と「かっぱ」を着けたから、やよいも......というながれでした。衣装やアクセサリーは、その日の公演の雰囲気や、直前の「プロデューサー」の反響によって変えることも多かったですね。
石田:ゲームと同じように衣装やアクセサリーをすぐに変更できることはメリットでしたが、一方で、モーションアクターさんには「次に着るスカートはボリュームがあって形が崩れやすいので、上から手で押さえこむような動きはしないでください」といった注意点を伝え、実際に身に着けた上で、衣装やアクセサリーに合わせた動きの練習をしていただく必要がありました。それこそ本番が始まってからも、ユニットライブパートが展開している舞台裏で、一生懸命に練習していたんですよ。
C:普通のライブと同様、「MR ST@GE!!」にも「衣装合わせ」があったのですね。
石田:まさに「衣装合わせ」でしたね。
C:秋月律子の主演回のトークコーナーでは、「961プロダクション」(※3)所属の詩花の衣装「メルヘンリリー」が登場したそうですね。
※3 961プロダクション:『THE IDOLM@STER』シリーズに登場する、「765プロ」のライバル事務所。
土井:当日は詩花の誕生日(9月16日)でもあったので、「秋月律子に着せたい」という提案がメンバーのひとりから出されました。それを受けて僕の方で「メルヘンリリー」を含む2着の衣装を用意して、「プロデューサー」に選んでもらうことにしました。「プロデューサー」の多数決では「メルヘンリリー」が選ばれたのですが、律子が断固として拒んで、結局もう1着の衣装を着ていました。もう少しで着せられたのですが、惜しかったですね(笑)。
石田:だから次の律子主演回のトークコーナーでは、「961プロに衣装を返しに行く」という話をしていましたね。
土井:律子主演回は本当にいろいろありましたね......。
▲「MR ST@GE!!」のオペレーターブースでアイドルを見守る(写真右から)土井氏、飯島氏、佐々木氏
©窪岡俊之 ©BANDAI NAMCO Entertainment Inc.