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「THE IDOLM@STER MR ST@GE!!」レポート&インタビュー(後編)>>彼女たちは、いかにして現実世界のステージに立ったのか?

「THE IDOLM@STER MR ST@GE!!」レポート&インタビュー(後編)>>彼女たちは、いかにして現実世界のステージに立ったのか?

バンダイナムコエンターテインメント(以下、BNE)が展開するアイドルコンテンツ『THE IDOLM@STER』。その作中に登場する芸能事務所「765プロダクション」(以下、「765プロ」)の女性アイドル13人が、横浜市のDMM VR THEATERにて「THE IDOLM@STER MR ST@GE!! MUSIC♪GROOVE☆」(以下、「MR ST@GE!!」)というライブに出演した。

声優が出演するライブではなく、これまでゲームの世界にいたアイドルが現実世界のステージでリアルタイムに歌い踊り、来場者とインタラクティブなトークも行うライブ。彼女たちは、いかにして現実世界のステージに立ったのか? 前編では2018年10月7日に行われた「MR ST@GE!! 2nd SEASON」の「双海亜美・双海真美 主演回(第二部)」のレポートと、アイドルのパフォーマンスを陰で支えたバンダイナムコスタジオ(以下、BNS)の『THE IDOLM@STER』開発メンバーへのインタビューの模様をお送りした。続く後編でも、同メンバーへのインタビューを通して、「双海亜美、双海真美の共演」という『THE IDOLM@STER』史上初の偉業に挑戦した経緯や、アイドルをより輝かせるためのこだわりをお伝えする。

TEXT_田端秀輝 / Hideki Tabata(@hitabataba
EDIT_尾形美幸 / Miyuki Ogata(CGWORLD)
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota

「プロデューサー」の夢だった「双海亜美、双海真美の共演」

CGWORLD(以下、C):双海姉妹の共演は、どんな経緯で実現にいたったのでしょうか?

遠藤暢子氏(以下、遠藤):1st SEASONのとき、「アイドル2人にリアルタイムで一緒に出演してもらったら、どうなるんだろうね」と試したことがありました。「そんな仕組みはつくってないから、無理だと思います」とプログラマーには言われたんですが、できてしまったのです。その後、双海姉妹も一緒に出演できることを確認した時点で、チーム全体が「いける」「これはやんなきゃダメだろう」という雰囲気になりましたね。

C:共演が可能とわかったにしても、高槻やよいと水瀬伊織とか、我那覇 響と四条貴音とか、まずは声がちがうアイドルの組み合わせでやった方が技術的なハードルは低いと思うんですが、どうして同じ声の双海姉妹の主演回を最初にやったのでしょうか。

▲うさぎの耳で隠れているが、向かって左側を髪留めで結わいているのが妹の双海亜美(写真左)。ねこ耳を着けている、向かって右側をサイドポニーにしているのが姉の双海真美(写真右)。双海姉妹の声は同一人物が担当しているため、「プロデューサー(ファン)」たちも同時出演は難しいだろうと予想していた


土井良文氏(以下、土井):難易度の高い方からチャレンジしました(笑)。

遠藤:そこさえクリアしたら後は簡単だろうと(笑)。

C:かつてひとりずつしかステージに立てなかった2人(※1)の同時出演は、多くの「プロデューサー」の夢だったと思います。私自身、ステージに立つ双海姉妹の姿を見ただけで泣いちゃいました。

※1 かつてひとりずつしかステージに立てなかった:初期の『THE IDOLM@STER』における双海姉妹は「2人が代わりばんこで『双海亜美』というアイドルをしている」という設定もあり、同時にステージに立てない仕様だった。双海姉妹の声の担当は同一人物のため、声優が出演するライブでも2人は同時に立てないこともあり、リアルタイムでの2人同時出演は『THE IDOLM@STER』史上初の偉業であった。

飯島弘通氏(以下、飯島):だからこそ、期待に応えたいと思いました。

C:2人の主演回では「亜美が」「真美が」「亜美が」「真美が」と早口で言い合う場面もありましたが、ちゃんと各々の声、口パク、表情、身体の動きがシンクロしていて驚きました。

佐々木直哉氏(以下、佐々木):プロジェクトメンバー全員による入念な事前準備と、現場での咄嗟の対応力のおかげですね。実際、私の勘違いをキャストさんの機転で乗りきってもらったこともあります(笑)。皆の愛があったからやり遂げられました。

▲双海姉妹のトークコーナーでは、双海真美の楽曲「放課後ジャンプ」を「2人で歌おうと提案したのは自分だ」という真美と、「それは自分のアイデアだ」と言い張る亜美による「亜美が」「真美が」「亜美が」「真美が」という言い争いが勃発。双子ならではの鉄板のコンビ芸を見せてくれた

普段のゲーム以上に、意識して「プロデューサー」たちと目を合わせる

C:「MR ST@GE!!」では、そのアイドルらしいかわいらしい表情や、ドキっとさせられる表情などがあり、「そこにいる」という実在感がすごく伝わってきました。

遠藤:普段のゲームでは笑顔で歌っていることが多いのですが、秋月律子や菊地 真はシリアスな表情で歌う場面もあったので、アイドルの新たな一面をお見せできたと思います。

▲【左】飯島氏や遠藤氏の指示に合わせ、トーク中もコロコロと表情を変えていく双海姉妹/【右】歌唱中、口を開けて驚きの表情を見せる双海真美。「普段のゲームのアイドルたちは、逆三角形の口をして笑顔で歌っています。「MR ST@GE!!」ではあえて笑顔で歌わない仕組みもプログラマーが実装してくれたので、アイドルたちがシリアスな表情でも歌えるようになりました」(飯島氏)


C:目パチや口パクの自動化は行なっていますか?

土井:どちらも行なっています。目パチに関しては、普段のゲームと同様、ランダムにまばたきします。さらに2nd SEASONからは、より柔軟に目線を動かせるようになりました。

▲トークコーナーで話す双海真美を、双海亜美が見守っている様子が、目線からもはっきりわかる


遠藤:萩原雪歩は、恥ずかしくなると地面に穴を掘って埋まる癖があるアイドルです。「MR ST@GE!!」でも「穴を掘って埋まってますぅ」という定番の台詞と共にステージ上でしゃがんだら、客席の「プロデューサー」が「いつも見てるながれだ」と沸き立ちました。そうしたら雪歩が「えっ、どうしてみんな喜んでるの?」と意外そうに客席をチラっと見たんです。そういう目線によるコミュニケーションも今回のライブでは実現できました。

佐々木:口パクに関しては、2nd SEASONではアイドルの声を内製の音声解析ツールでリアルタイムに解析し、それに合わせて口の形が「あ」「い」「う」「え」「お」のいずれかに自動的に変化する仕組みを実装しました。

▲双海真美が喋るときは、その声に合わせてちゃんと本人の口が動いている。一方で、双海亜美の口はちゃんと閉じている


遠藤:モーションキャプチャと同様、声も主演アイドルによって個人差があるので、音声解析ツールの値は主演アイドルに合わせて本番前に調整していました。

佐々木:主演アイドル全員分のボーカルトラックだけの歌唱データを事前にもらい、その中から「あー」とか「いー」とか言っている部分を抽出し、それに合わせて個別に値を調整しましたが、それだけでは不十分なので現場でも毎回調整していましたね。

土井:ライブとトークで声の音量が全然ちがうアイドルもいましたし、その時々のテンションで音量が変わるアイドルもいましたので、現場での調整は必須でした。例えば秋月律子は思いっきり情熱を込めて歌うので、その音量に合わせて値を調整しています。2nd SEASONの途中からは、直前のリハーサル時の音量と値を記録しておき、臨機応変に切り替えられる仕組みも追加しました。

飯島:目線や口の動きがよくなったことで、1st SEASON以上にアイドルたちがいきいきと輝いてくれたことが、すごく嬉しかったですね。

C:トークコーナーでは指名された「プロデューサー」とアイドルが1対1で会話する場面もあったので、アイドルの実在感が特に際立っていたように思います。天海春香は最近のゲームでは見せなかったアマアマな拗ね方をしていたのでキュンとしましたし、菊地 真はすごくジェントルな振る舞いをしていたので惚れ直してしまいました。

遠藤:菊地 真は、「プロデューサー」と接するときの物腰がすごく紳士的でしたね。いきなり指名された「プロデューサー」の中には「はわっ」とテンパってしまう方もいましたが、 真は「大丈夫、ゆっくり考えていいんだよ」という紳士的なオーラを、声と表情と身体の全てから発していました。そういう真らしい振る舞いを見ていただけたのも「MR ST@GE!!」ならではの醍醐味だったと思います。

真に限らず、「プロデューサー」とアイドルが1対1で会話するときは、明確な感情のながれが生じます。しかも指名された「プロデューサー」はアイドルだけでなく、周囲にいる「プロデューサー」たちの注目も集めるので、より濃密なコミュニケーションが発生するんです。だからアイドルには、指名された「プロデューサー」がリラックスして話せるように、ちゃんと目線を合わせて、心のこもった表情をするようにお願いしました。それがアイドルの実在感につながったのだと思います。

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「プロデューサー」の話に耳を傾ける双海姉妹


C:だからこそ、感極まって泣き出す「プロデューサー」が続出したわけですね。

飯島:公演が終わっても、感涙して立ち上がれない「プロデューサー」もいらっしゃいました。その姿を見られたことも、得がたい体験でした。アイドルには、普段のゲーム以上に、意識して「プロデューサー」たちと目を合わせてもらうようにしましたね。「弓なりにした細い目の笑顔」はゲームの中では映えるのですが、その表情のまま動き続けると不自然なんです。あまり目を閉じっぱなしにせず、客席に目を向けてもらうようにしました。


©窪岡俊之 ©BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

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現実世界の椅子の上に立ち
さらに飛び降りる菊地 真

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