>   >  『コードギアス 復活のルルーシュ』作画とCGが混ざり合う、妥協なきナイトメアフレーム表現 No.3 月虹影 編
『コードギアス 復活のルルーシュ』作画とCGが混ざり合う、妥協なきナイトメアフレーム表現 No.3 月虹影 編

『コードギアス 復活のルルーシュ』作画とCGが混ざり合う、妥協なきナイトメアフレーム表現 No.3 月虹影 編

カット0082の制作/メカ(ヘリコプター)のカット

▲カット0082のラフ原画と、カメラワークを伝える参考画。ジルクスタンの荒野を飛行するヘリコプターが、線路上を走る装甲列車の上を飛行した後、海上に建設された首都グラルバードの王城に達するカット。本作の序盤に登場する本カットでは「国土の9割が砂漠と荒野」「強大な軍事力を有する」というジルクスタンの風土や特性と、物語の要となる王城付近の地形を伝えるため、CGの強みを活かした長尺映像がつくられた


▲カット0082のCG初期テイクの映像。画面右下には、比較用にラインテストが置かれている。この段階では、美術素材が貼り込まれていない



▲カット0082のCG完成テイクの画像と映像。広大な荒野や、王城との位置関係をわかりやすく伝えるカットに仕上がっている。このように、本作ではヘリコプター、列車、自動車などのCGメカが、状況説明や場面転換で効果的に使われている。「3D空間内のカメラを使うことで、広さ、遠近感、立体感などを表現できるのがCGのメリットのひとつだと思います。それを活用する一方で、カメラを動かさなくても表現できるとき、例えば遠くでメカがターンしているときには、あえてカメラを動かさないといった判断がなされていました。こちらとしても、カメラを動かした方が効果的なのか、動かす必要がないのか、しっかり見極めるよう心がけていました」(熊野氏)

カット0391の制作/Cの世界のカット

▲カット0391のラフ原画。TVシリーズにも登場したCの世界は、本作ではフル3DCGで表現された。本カットでは、Cの世界をカメラが俯瞰した後、中央にある球体へと接近する。なお、最後に球体内に現れる女性は作画で表現されている


▲カット0391のCG初期テイクの映像。画面左下には、比較用にラインテストが置かれている



▲カット0391のCG完成テイクの画像と映像。球体に接近するときのカメラワークが変更されている



▲カット0391の本撮テイクの画像と映像。フォグの追加によって空気感が増している

『コードギアス』では、情報量を増やすことが正解とは限らなかった

総作画監督として本作のメカ作画を支えた中田氏と中谷氏は、TV版の第1話(2006年放送)から『コードギアス』シリーズに携わってきた。ちなみに第1話では、中田氏が総作画監督、中谷氏が作画監督を務めている。また、本作の作画監督のひとりである重田 智氏は、『機動戦士ガンダムSEED』シリーズ(2002〜2005)や、『新世紀GPXサイバーフォーミュラ』のOVAシリーズ(1992〜2000)のメカ作画を支えてきたことがよく知られている。いずれもサンライズの長寿コンテンツのメカ表現において長年尽力してきた面々であり、その指揮の下、KMFをCGで表現することは、大きなプレッシャーであり、多くの困難があったと想像する。

「『コードギアス』シリーズならではのKMFの格好よさをCGで表現するのは、本当に難しかったです。つくっている最中は、夜逃げしたくなったこともありました。『THE ORIGIN』の場合は、情報量を増やせることや、形状を作画に合わせて変形させつつ、絵として崩れないことがCGで表現するメリットだと思っていました。『コードギアス』シリーズでは、情報量を増やすことが正解とは限らなかったので、どこに着地させれば良いのか、答えを見つけるのに苦労しました」(長嶋氏)。

「『コードギアス』の名を冠する作品は、いろんなことがあり、どれも大変だという話は事前に聞いていました。まさか自分が携わることになるとは思っていなかったのですが、ご多分にもれず、大変な現場ではありました。ただ、本当にいろんな経験をさせてもらえたので、この経験値を今後に活かしていきたいです」(中尾氏)。

「次に同種のプロジェクトをやるなら、その作品において、作画の方が有効なこと、CGの方が有効なことをすり合わせ、最初にテストカットをつくった後、本制作をスタートしたいです。実際、『THE ORIGIN』の前には『シャア専用オーリス』のPVをテストカットを兼ねてつくりました。そこで方針や課題を洗い出しておけば、カット制作後のCGモデル修正の回数を減らせると思いますし、CGカット数の見積もりの精度も上げられると思います」(熊野氏)。

「制作を終えたときに悔いは残したくなかったので、3Dも、2Dも、CG制作も、最後までやれることは全部やりきりました。全ての要望に応えられたとは思いませんが、例えばゲド・バッカの物量や、カメラまで動かす激しいアクションシーンは、CGでなければ対応できなかったし、間に合わなかっただろうと思います。そういう点では、お役に立てたのではないでしょうか。本作品を通して強く感じたことは、新しいスタッフと作品をつくるときには、技術の前に、コミュニケーションが非常に大切だということでした。その上で、クリエイティブな部分に入っていく。当社の人気タイトルに携われたことに感謝しつつ、今後のCG制作にとって大きな教訓となりました」(井上氏)。

アニメファンの中には、メカ表現に続々とCGが使われていく昨今の状況を惜しむ人もいるが、メカの作画ができるアニメーターは減り続けており、時計の針は巻き戻らない。そんな中で、作画スタッフとCGスタッフが共に妥協なきメカ表現を追求し、互いの強みが混ざり合った『THE ORIGIN』や『コードギアス 復活のルルーシュ』のような作品が生み出されていくながれは、時代の必然だと感じる。本作の経験を新たな土台として、今後もその時代に即したメカ表現が生み出され、作品を盛り上げてくれることを期待したい。



No.3 月虹影 編は以上です。
No.1 ランスロットsiN 編
No.2 ゲド・バッカ 編

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info.

  • 『コードギアス 復活のルルーシュ』
    監督:谷口悟朗
    脚本:大河内一楼
    キャラクターデザイン原案:CLAMP
    キャラクターデザイン:木村貴宏
    ナイトメアフレームデザイン原案:安田 朗
    ナイトメアフレームデザイン:中田栄治
    メカニカルデザイン・コンセプトデザイン:寺岡賢司
    メインアニメーター:木村貴宏、千羽由利子、中田栄治、中谷誠一
    CG制作:サンライズ D.I,D.スタジオ
    製作:サンライズ、コードギアス製作委員会
    www.geass.jp/R-geass/

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