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『コードギアス 復活のルルーシュ』作画とCGが混ざり合う、妥協なきナイトメアフレーム表現 No.1 ランスロットsiN 編

『コードギアス 復活のルルーシュ』作画とCGが混ざり合う、妥協なきナイトメアフレーム表現 No.1 ランスロットsiN 編

2月9日(土)より全国劇場にて上映開始となった『コードギアス 復活のルルーシュ』は、TVアニメシリーズ『コードギアス 反逆のルルーシュ』(2006〜2007)、『コードギアス 反逆のルルーシュR2』(2008)全50話を再構成した劇場版3部作(2017〜2018)のその後をつづる完全新作だ。谷口悟朗監督、脚本の大河内一楼氏をはじめ、TVシリーズを支えた多くのスタッフが再結集し、主人公 ルルーシュの「明日」を描いている。

ナイトメアフレーム(Knight Mare Frame/以下、KMF)と呼ばれるロボットによる戦闘は本シリーズの見どころのひとつで、TVシリーズでは中田栄治氏(本作での役割は、KMFデザイン/総作画監督)、中谷誠一氏(本作での役割は、総作画監督)をはじめとする、多くのアニメーターによる作画で表現された。その後制作された、赤根和樹監督によるOVAシリーズ『コードギアス 亡国のアキト』(2012〜2016)全5話では、KMFをオレンジがCGで表現し、生物的な動きや、立体的なアクションとカメラワークによる斬新な表現が話題を集めた。そして、最新作である『コードギアス 復活のルルーシュ』のKMFは、前述の中田氏や中谷氏などのアニメーターによる作画と、サンライズD.I.D.スタジオ(以下、D.I.D.スタジオ)によるCGを混ぜ合わせた表現が試みられた。本記事では、D.I.D.スタジオへの取材を通して、本作に携わったCGスタッフの仕事を以下の全3回に分けてお伝えする。

No.1 ランスロットsiN 編
No.2 ゲド・バッカ 編
No.3 月虹影 編

TEXT_尾形美幸 / Miyuki Ogata(CGWORLD)
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota

▲劇場予告編 第2弾(90秒)。上の予告の1:07あたりから始まる紅蓮特式(ぐれんとくしき)の戦闘カット、および1:09あたりから始まるランスロットsiNの戦闘カットのメイキングを、本記事5ページ目に掲載しているので、ぜひご覧いただきたい

モブとして使うはずのランスロットsiNが、メインで使う方針に変更

『コードギアス 復活のルルーシュ』のCG制作を担当したD.I.D.スタジオは、『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』シリーズ(2015〜2018)(以下、『THE ORIGIN』)の3DCGも手がけており、モビルスーツや戦艦が登場するCGカットを、作画とCGのハイブリッドで表現した実績をもつ(※1)。

※1 『THE ORIGIN』におけるCG制作については、「『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 激突 ルウム会戦』作画&CG中核スタッフがふり返る『THE ORIGIN』のこれまでとこれから」をご覧いただきたい。以降で紹介する井上喜一郎氏(CGプロデューサー)、長嶋晋平氏(3DCGチーフ)、熊野祐介氏(3DCGアニメーションチーフ)は『THE ORIGIN』の制作にも携わっており、井上氏と長嶋氏は前述の記事にも登場している。


  • 井上喜一郎氏(CGプロデューサー)
  • サンライズを代表する長寿コンテンツである『ガンダム』シリーズのモビルスーツを手がけたD.I.D.スタジオだからこそ、多くのファンに長年愛されてきたKMFを表現するという大役を任されたのかと思いきや、『コードギアス 復活のルルーシュ』に着手した当初は「KMFの大半は、作画で表現する予定でした」とCGプロデューサーの井上喜一郎氏はふり返る。「本作の尺は110分ほどで、全体のカット数は約1,500。その中でCGを使うカットは250程度、300を超えることはないだろうという話でした。主な用途はヘリコプターや列車などのメカ、モブ(群衆)などで、ほとんどのカットにおいて、CGは脇役に留まるはずでした」(井上氏)。



  • 長嶋晋平氏(3DCGチーフ)
  • 本作の3DCGチーフを務めた長嶋晋平氏は、前述の井上氏が語った前提のうえで、2017年後半からランスロットsiNのモデリングに着手した。ランスロットは本シリーズを代表するKMFで、枢木スザクの専用機だ。本作にはその最新機としてランスロットsiNが登場する。なお「siN」は「罪」を意味している。「画面の奥、『例えば、背景の倉庫に立っているのを小さく映すだけですから......』という話だったので、テイク1のCGモデルはモブのつもりでつくりました。正直、これは楽な仕事だなと思っていたら、テイク3あたりから道のりが険しくなってきました(苦笑)」(長嶋氏)。



  • 中尾慎一郎氏(CG制作デスク)
  • 「本作は練馬スタジオの主導で制作されたので詳細はわかりませんが、作画カットを減らしCGカットを増やすという方針変更があり、『CGモデルのランスロットsiNもメインで使う』という話に変わったと聞いています」とCG制作デスクの中尾慎一郎氏は語る。谷口監督をはじめ、本作の演出や作画スタッフはサンライズの練馬スタジオを拠点としており、杉並区にあるD.I.D.スタジオとはやや距離が離れた環境で制作が進められた。「あくまで推測ですが、長嶋のテイク1の出来が思ったより良かったので、これなら使えるという判断があったのかもしれません」と井上氏は補足する。

加えて、最近の谷口監督作品である『revisions リヴィジョンズ』(2019)では全編をCGベースで表現している(※2)ため、CGを増やしても良いだろうという判断がなされたのではないかと筆者は推測する。

※2 『revisions リヴィジョンズ』におけるCG制作については、「3DCGによる"アニメ"の新機軸、TVアニメ『revisions リヴィジョンズ』」をご覧いただきたい。



  • 熊野祐介氏(3DCGアニメーションチーフ)
  • ともあれ、終わってみれば最終的なCGカットは402にのぼった。プロジェクトの期間は2017年初頭から2019年初頭までの約2年、本格的なカット制作期間は約7ヶ月、D.I.D.スタジオのスタッフ数は当初予定より増員され、モデリング約10人、カット制作約30人、2Dレタッチ約10人からなる、約50人が本作に携わることになった。また、一部の制作は外部の協力会社にも依頼している。カット制作の物量がピークに達した2018年後半には、3DCGアニメーションチーフの熊野祐介氏の席を練馬スタジオとD.I.D.スタジオの2ヶ所に設け、両スタジオの円滑な情報伝達と連携を図る措置もとられた。


「熊野は『THE ORIGIN』などで難しいCGカットをつくってきた実績があるので、本作には2018年の初頭から参加してもらいました。練馬スタジオに席をつくった後は、技術的な問い合わせなど、すぐD.I.D.スタジオと情報共有できる体制にしました」(井上氏)。約4年にわたった『THE ORIGIN』のプロジェクトでも、開始直後は作画スタッフとCGスタッフのつくり方や考え方に齟齬があり、その解消が最優先の課題だったという。「終盤にはいい体制ができ、最後は笑顔で終われましたが、そこにいたるまでには様々な問題が起きました。練馬スタジオとの仕事は本作が初めてだったので、『THE ORIGIN』のときと同様、情報伝達にはとりわけ神経を使いました」(井上氏)。

ちなみに、ランスロットsiNのモデリングに着手した2017年後半の時点では、本作における長嶋氏はモデラーのひとりという位置づけだった。しかしカット制作が本格化した2018年の夏頃、井上氏から3DCGの制作全体をまとめてほしいと打診された。「その頃には、ピーク時の山がそれなりの高さになることが予想できたので『長嶋がいないと対応しきれない』と判断しました。その少し前から中尾にもCG制作デスクとして加わってもらい、テコ入れを図りました」(井上氏)。中尾氏は練馬スタジオの制作スタッフと過去の仕事を通して面識があったのに加え、『機動戦士ガンダムユニコーン』(2010〜2014)第2話で3DCG担当の制作進行を務めた際に中田氏や千羽由利子氏(※3)とも関わっていたため、練馬スタジオとの連携を重視する本作には適任だと判断されたという。

※3 本作の総作画監督を務めた中田氏と千羽氏は、『機動戦士ガンダムユニコーン』第2話では作画監督を務めている。

以上の経緯で3DCGチーフになった長嶋氏は、CG制作全体のディレクションに加え、前述のランスロットsiNのCGモデル制作や、ゲド・バッカ(ジルクスタン王国の量産型の機動兵器、詳細はNo.2 ゲド・バッカ 編で紹介する)のCGモデル改修、高難度カットの制作なども担当した。「不測の事態が起こった場合に、なんとかするのも僕の役割でした(苦笑)。前半の状況を知らなかったので戸惑うこともありましたが、できうる限りがんばりました」(長嶋氏)。練馬スタジオとのやり取り、各種データのチェック、高難度のCGモデル、およびカット制作など、全方位で尽力し、プロジェクトを支えてもらったと井上氏は補足する。

以降では、約1年、テイク15におよんだランスロットsiNのCGモデル制作と、それを使ったカット制作の過程を紹介する。合わせて、紅蓮特式(紅月カレン専用機)のカット制作にも触れる。

ランスロットsiNの設定画

▲中田氏による、ランスロットsiN(全身)の設定画。左腰に手持ちライフルのC7-anti-materiel-VARIS(以下、ヴァリス)、左胸に肩パーツのコクーン(繭の意)を装備している。なお、ランスロットsiNやゲド・バッカをはじめとするメインのKMFのデザインは中田氏、KMFのコックピットなどのデザインは寺岡賢司氏が担当している


▲【左】前述のヴァリスとコクーンを外した状態。この設定画を受けて、後述するセットアップではヴァリスはもちろん、コクーンも分離できるリグが組まれた/【右】ランスロットsiNのエナジー・ウイング(エネルギー翼)を展開した状態。この翼で、飛行、刃状の粒子の射出による攻撃、防御まで可能


▲【左】ランドスピナーを展開した状態。スピナーは地上を高速走行する際に使用/【右】ランスロットsiNの頭部


▲【左】ランスロットsiNのヒジとヒザの可動、上半身、足パーツの参考/【右】ハンドパーツ。後述するモデリングとセットアップでは、ランスロットsiNのCGモデルの手が、この設定画と同じポーズをとれるようにすることが求められた


▲ランスロットsiNの武装の設定画。【左】はヴァリス、【右】はメーザー・バイブレーション・ソード(以下、MVS)。いずれも変形ギミックがあり、CGモデルでも同じ変形ギミックが再現された


▲ランスロットsiNとナギド・シュ・メイン(シャリオ専用機)の色彩設定は、当初、基本色に加え、夜色、朝焼け色の3種類がつくられた。その後、朝焼け色は日の出前【左】と日の出後【右】がつくられたため、両機の色彩設定は合計4種類になった。本作クライマックスの両機による戦闘は、深夜に始まり日の出と共に勝敗が決するため、その色彩の移り変わりには格別のこだわりが発揮された。なお、色彩設定へのこだわりについては、No.2 ゲド・バッカ 編で詳しく触れるため、そちらもご覧いただきたい

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約1年、テイク15におよんだ
ランスロットsiNのCGモデル

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