ラフ原画を下敷きとした、CGカット制作
本作のカット制作は『THE ORIGIN』の制作フローの一部を踏襲しており、最初に絵コンテからラフ原画が描かれ、ラフ原画を作画監督が修正し、ラフ原画と作画監督修正からラインテスト用のムービーが制作された。そのラインテストを練馬スタジオの演出や作画監督が確認し、各カットを作画で表現するのか、CGで表現するのか、両者を組み合わせるのかが判断された。基本的には、激しいアクションがあるカットのKMFはCGで表現し、止め絵(動画を使わない1枚絵)で見せるカットや、動きの少ないカットのKMFは作画で表現するという方針に基づいた判断がなされている。
例えば、大ヒット上映中PV(90秒)の、0:47あたりから始まる紅蓮特式の戦闘カットは、ラインテストを基にCGで表現された後、ミサイルの作画が描き足されたり、一部のフレームのKMFが作画に差し替えられたりしている。一方で、1:22あたりから始まるランスロットsiNの発進ポーズのカットは当初から作画だけでつくると判断された。
練馬スタジオにも席を置いていた熊野氏は、演出や作画監督などから、カット制作に関する詳細を相談されることが多かったと語る。「どのような絵を描けばCGスタッフに意図が伝わるか、レンダリング時にあるモデルと別のモデルのレイヤーを分けることは可能かといった質問をされることが多かったです。僕自身もD.I.D.スタジオの席でカット制作をやりつつ、お互いにとってベストの方法を提案するよう心がけていました」(熊野氏)。
前述の制作方法は、最近のTVアニメシリーズの制作では実現困難な、時間も費用も手間もかかる、非常に工程の多い効率度外視のやり方だと言える。その分、作品のクオリティは上がったが、課題も残ったと井上氏はふり返る。「事前の打ち合わせがあったものの、どのカットの、どの部分をCGで表現するのか、正確なところはラインテストが届くまでわかりませんでした。そのため、作業量の見積もりが難しかったのに加え、スケジュールも立てづらかったのは、本作で感じた課題のひとつです」(井上氏)。ラインテストを受けてCG制作を始めた後、作画でも同じ部分の制作が進行していると発覚したケースもあり、情報伝達の面でも課題を感じたという。
カット1323の制作/ヴァリスを撃つカット
▲【左列】カット1323のラフ原画/【右列】同原画に対する作画監督修正。ランスロットsiNがマウント状態のヴァリスを右手に持ち、画面左下から飛んでくるハーケンを避けながら、ノーマルモードに変形したヴァリスを撃つカット。作画監督がカメラの角度、ポーズ、エネルギー波の形状などを細かく修正している
▲カット1323のCG初期テイクの映像。画面左上には、比較用にラインテスト(先のラフ原画と作画監督修正を基に制作)が置かれている。本カットは熊野氏が最初に担当したもので、劇場予告編 第2弾(90秒)(1:09あたり)でも使われた。練馬スタジオで作画監督から直接リテイク内容を聞き、CG完成テイクまで仕上げたそうだ
▲カット1323のCG完成テイクの画像と映像。先のテイクと比較すると、ポーズ、カメラ位置、タイミング、ラインの出し方などが細かく修正されている
カット1312の制作/紅蓮特式が輻射波動を構えるカット
▲カット1312のラフ原画。画面右手前から奥へと軌跡を描きながら飛翔する紅蓮特式を、数多くのミサイルが追いかけるカット。カット終盤で再び紅蓮特式が画面手前に戻ってきた後、右手から輻射波動を放つ構えに入る
▲カット1312のCG初期テイクの映像。画面左下には、比較用にラインテストが置かれている
▲カット1312のCG完成テイクの画像と映像。この後の工程で、作画のミサイルが追加される
▲カット1312の完成カットの画像。劇場予告編 第2弾(90秒)(1:07あたり)では全フレームでCG完成テイクの紅蓮特式が使われた一方で、劇場公開版ではカットの前半フレームではCG【左】、後半フレームでは作画【右】の紅蓮特式を併用している。このように、本作では公開直前までカットのブラッシュアップが行われた
カット1374の制作/ナギド・シュ・メインとの接近戦のカット
▲カット1374のラインテスト。本作クライマックスのランスロットsiNとナギド・シュ・メインの一連の戦闘カットでは、制作末期のためラフ原画が間に合わず、かなりラフな原画によるラインテストを基にCGカットが制作された。ランスロットsiNの右脚中段蹴りがナギド・シュ・メインに決まった後、楯に刺さったMVSが爆発。さらに回転して左脚上段蹴り、剣を避けながら再び右脚中段蹴り。離脱した後、エナジー・ウイングで剣を弾いてから、さらに離脱。最接近した後、左手中段突き、さらに右手中段突きを決める。シンプルに言うと、ランスロットsiNが終始優勢の接近戦だ
▲カット1374のCG初期テイクに対する作画監督修正。目線やポージングの修正指示が描かれている。一連の戦闘カットでは、このような具合に、ほぼ全フレームに対して細やかな指示が描き込まれた。「1フレームたりとも気が抜けませんでした」と長嶋氏と熊野氏は口を揃える。なお、本カットは熊野氏が担当している
▲先の作画監督修正を受け、修正されたCG完成テイクの画像
▲同じく、カット1374のCG完成テイクの映像
No.1 ランスロットsiN 編は以上です。
No.2 ゲド・バッカ 編
No.3 月虹影 編
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info.
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『コードギアス 復活のルルーシュ』
監督:谷口悟朗
脚本:大河内一楼
キャラクターデザイン原案:CLAMP
キャラクターデザイン:木村貴宏
ナイトメアフレームデザイン原案:安田 朗
ナイトメアフレームデザイン:中田栄治
メカニカルデザイン・コンセプトデザイン:寺岡賢司
メインアニメーター:木村貴宏、千羽由利子、中田栄治、中谷誠一
CG制作:サンライズ D.I,D.スタジオ
製作:サンライズ、コードギアス製作委員会
www.geass.jp/R-geass/