>   >  モバイルで最大100人同時プレイ可能な本気のオンラインRPG『禍つヴァールハイト』
モバイルで最大100人同時プレイ可能な本気のオンラインRPG『禍つヴァールハイト』

モバイルで最大100人同時プレイ可能な本気のオンラインRPG『禍つヴァールハイト』

Topic 3 画面を大きく彩る背景&エフェクト

コンセプトアートの"第一印象"を360度で再現する

画面の多くを占めることになる背景、プロップ制作は、描画の最適化を行う上で、最後の最後まで負荷軽減の調整をすることになる。しかしながら、世界観を語る上で、その世界を形づくる背景は最も大事なポイントでもある。「コンセプトアートを上野拡覚氏にきっちり起こしてもらい、そのビジュアルの第一印象が360度、オンラインRPGなのでどこを見回しても変わらないようにしようという意識でつくっています」と語るのは、背景担当の宮﨑 洋氏。「最終的にユーザーはモバイル端末の小さな画面で、そのビジュアルに向かい合う。そこで重要になるのは細かなディテールではなく、色彩的な再現、光の情報、ぱっと見の印象です」。そこがコンセプトアートと離れていないかに注意を払うようにしたという。

物量的にオブジェクトもテクスチャも多いプロップでは、ギリギリまでメッシュやマテリアル数、テクスチャの数やサイズも、頂点レベルで不要な情報を削る作業が最後に待ちかまえている。しかし、最もユーザーが目にするであろう場所、ホームタウンの"帝都"を最初にきっちりメッシュでつくりきっていたことによって、Substance Designer、およびSubstance Painterを用いたディテール単純化+テクスチャリングによるデータ削減を経てなお、コンセプトの雰囲気を十分に保つ街並みを完成させることができたという。なお、Substanceの導入には複数のねらいがあり、まずは小さな画面での、まずは小さな画面でのプレイに合わせた本作独自の"密度より質感を重視"するビジュアルづくりのため、加えて制作効率の向上、そしてもうひとつが、フローが安定して流用が容易になったり、修正対応のイメージがつきやすくなることによる、ビジュアル品質の担保である。「ビジュアルのしくみそのものは複雑ではなくベーシックな構造ですが、ツールが進化していることによってトライ&エラーも早くなり、修正も気負わずに行える。より品質が詰めやすくなってきました」と宮崎氏。

エフェクト制作も同様で、Mayaなどで制作したメッシュやテクスチャをUnityパーティクルのShurikenで編集して作成されており、スプライトベースのスタンダードなものと言える。しかし、そこにポスト処理を加えるとなると、Unityの標準処理はモバイル端末向けに最適化されているわけではないため重く、プログラマーの手によってつくられたブルームやフォグ、被写界深度などのポストフィルタの1パス処理化といったチューニングを経て初めてポスト処理が使えるようになるなど、本作のようなモバイル向けのハイエンド開発においては、R&D的な開発がまだ欠かせない状況ともいえる。

背景コンセプトアートからワークフローまで、品質の安定性と作業効率の向上を目指す

背景の仕様としては、ポリゴン数は1エリアあたり7~8万ポリゴン程度。テクスチャは512、または1,024(を実機描画時に1/4のサイズに変換)×60~70枚となっている。ワークフローとしては、まず上がったシナリオからプランナーがどういった遊びをさせるステージなのかを仕様に落とし、その後コンセプトアートが描かれて、そこからエリアデザイン、モックモデルをつくっていく。なお、フィールドはエリア切り分け制となっており、遊びの仕様やプロップの複雑さなどに合わせて区切ることができるため、ある程度はデータ量のコントロールはできる。モックが上がった段階で一度遊べる段階までもっていき、操作感覚や広さ、遊びに対しての適応性などをチェックし、プランナーからOKが出たらディテールを詰めていく

上野氏による帝都のコンセプトアート

ステージ上の遊びや構造を踏まえた街のモックモデル

ある程度のディテールまで詰めた街のモデル

GIベースレンダラのTurtleを使って影をベイク

完成した帝都

特殊なエリアのコンセプトアート

テクスチャをほぼ使わず、白黒のマスク画像のみ適用し、カラー、スペキュラ、アルファのマテリアルの数値のみ(UVスクロール)で通常フィールドとは雰囲気の異なる独特なステージを作成。発光もUnity側のシェーダでコントロールした

Unity上の数値を変えるだけで、色味や雰囲気の異なるステージをつくり出すことも可能となった

リサーチ部門と共同で、Substanceを用いて背景の制作フローも最適化を進めた。画像はルックデヴ初期の様相。Photoshopで実写真をラスタライズ加工してテクスチャ化するようなフローでは、テクスチャの元の情報量が多すぎて密になりすぎ、携帯端末の小さな画面のトゥーン的なビジュアルには合わない。フローも煩雑で、品質は個人依存になりがちだ。そこでSubstanceを用いた流用のしやすい、人を選ばず再現性の高いワークフローを構築することで、制作効率と成果物の品質の安定の両方を目指した

エフェクトの仕様と制作フロー

エフェクトに関しては概ねキャラクターの動きと連動しているため、モーション班とのすり合わせ、連動が欠かせない。仕様としてはテクスチャが512×1~2枚と、必要に応じてMayaでメッシュ素材を用意する

モンスターから発せられるエフェクト(モンスタースキル)の仕様書の例

【上画像】(モンスターから発せられるエフェクト)をUnityのShurikenで制作した実例

Shurikenで作成したエフェクト

エフェクトを構成するテクスチャ

エフェクト実装用のオリジナルツールでタイミング調整する



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