POINT 01 原作の雰囲気を意識した画づくり
本作では、原作漫画の雰囲気を映像にすべく、線画の表現にも力を入れている
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まず原画を二値化する。「まるで漫画そのままじゃないか!」と筆者は思ってしまったほど原作の雰囲気が出ている。これをアニメーションさせるというのも恐ろしい話だ -
こちらは二値化前の原画だ。線画に関しては、二値化されたものをそのまま使うのではなく、撮影でにじませたり、この原画のような二値化する前の線を上から乗せたりすることで、独特のタッチを出している
線画とは別にタッチ素材も準備された
最終的な完成画。正直、アニメの作画というよりは「絵」という印象だ。個人作品などでこのようなタッチのアニメ制作に挑戦している人は見かけるが、劇場作品でこれをやってしまうところがSTUDIO4℃らしい
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こちらは別のカットの二値化された線画。実はこちらのカットはデジタルで作業されている。線のニュアンスとしてはアナログと遜色はない -
デジタル処理されたニュアンス線。アナログ作画のようだ。これを二値化の線画に重ねる
完成画。細部の線までニュアンスが出ていて、アニメーションとしてのみでなく、一枚画の作品として成立している
POINT 02 デジタルの強みを発揮するカメラワーク&群衆カット
CSPでカメラワークを付けた、ハンドボール部の部活のシーン。タイムライン(画像下部)の動きと共にカメラ(画像上部内の青いフレーム)も動いている
CSP内でキーフレームを打ち、カメラワークを付けて書き出した参考ムービー。カメラワークを想定しながらの作画は、かなり高度なスキルを要する作業だ。しかしデジタル作画ならば、実際にカメラワークを付けて、プレビューでイメージを確認しながら作画できる強みがある
カメラワークの指示。フレーム単位で書かれている
群衆(モブ)カットの調製例。デジタルであれば、モブキャラクターの位置や傾きの調整もアナログに比べて遥かに簡単に行える
POINT 03 デジタル作画を用いたエフェクト
作例は、夜光虫が光る印象的な海のシーンだ
絵コンテ。こちらは紙に描かれている
CSPの作業画面。複数の素材を重ねつつ、一気にイメージをつかめるという点でも、デジタルの恩恵は大きい
最終画。デジタル作画というと線画が注目されがちだが、工夫次第でエフェクをも自在に描くことができる
POINT 04 デジタル作画×3DCGのカット
ここでは、CGのカットに対するデジタル作画の修正や加筆の事例を紹介する
CG素材。CGならではの立体感がある。ハイライトとCG独特の陰影が影響しているからだろう
完成画。フォルムなどが修正され、今までのアニメともCGともちがう、新たな表現になっている。本当に絵がそのまま動いている印象だ
別カットの、基となるCGのラフ。このままでも十分迫力がある
CGの素材に対して、デジタル作画(CSP)でエフェクトが描き足された。かなりのこだわりを感じる
描き足されたエフェクトの原画のみの状態
完成画。こちらも高密度の画になっている
次号『vol.251』の連載「アニメCGの現場」では、映画『海獣の子供』の3DCGメイキングをご紹介します!
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