<2>演出で魅せるライブシーン
ライブシーンでは、かなりの数のエフェクトや特殊効果、モニタ演出が仕込まれており、これらの演出的なコンポジットは、渥美氏ほぼひとりで担っているという。例えばライティングは、演出からおおまかなプランを提示してもらうだけで、細かい部分は渥美氏が詰めている。画面をリッチに見せるべく、『DREAM LIVE』しかり、他のアイドル作品なども参考に、カッコ良いライティングやレーザービームの動かし方を探ったそうだ。また男性アイドルの場合、明るくポップでかわいい演出がしづらく、クールでカッコ良い演出になりがちで、色遣いも寒色系が多くなるという。「女性アイドルに比べて男性アイドルはできる演出の幅が狭いので、アイデアを搾り出すのが大変でした」と渥美氏は話す。
本作では「やっていない演出をやる」というテーマの下、例えば『紅月』は和風に、『UNDEAD』はハードになど、ユニットごとのカラーやイメージに沿った演出が採り入れられている。さらに、イメージカットを効果的に使い、ライブとPVの間がねらわれた。これは演出を手がけるソエジマヤスフミ氏がPV制作をした経験が活きているとのこと。クイックやキャラクターの目線、カッコ良いシルエットなど、ファンを意識したつくりとなっている。「『Trickstar』のライブでは、絵コンテにプロジェクション・マッピングや派手なライティングがしたいと書かれていたので、テストをくり返しながら時間をかけてアイデアを練りました」と渥美氏。PVのアプローチからさらに煮詰めることで、服が光る演出などが生まれた。白鳥貴子チーフプロダクションマネージャーも「視聴者がキャラクターと目が合うようにフェイシャルを調整するなど、ファンが喜ぶ工夫が満載です」と自信を覗かせる。
『百花繚乱、紅月夜』紅月
映像資料や他のCGアイドルのライブ映像を参考にしながら、ユニットイメージに沿った演出をしていく。色味はユニットカラーやイメージボードを参考に、ライティングは楽曲のリズムやユニットのイメージに合わせて構成された。第二話の『紅月』のライブでは、『紅月』が和の伝統芸能をテーマにしたユニットということや、曲が進むにつれて舞台のセットが大がかりになることを考慮し、原作ゲームのスクリーンショットが参考にされた。レーザービームのようなコントロールしやすいライティングをアクセントに添えて、画面が派手になるように演出されている
3DBGによるセットも作成されたCG完成素材
撮影処理後の完成画
テーマカラーの赤もあちらこちらに散りばめられた、別カットの完成画
『Melody in the Dark』UNDEAD
ステージは原作準拠ということもあり、絵コンテの演出が全てできるわけではないが、工夫しながらできるだけ派手な演出ができるように構成されている。背徳的かつ過激な第三話の『UNDEAD』のライブは、イメージボード準拠で構成し、ダークな雰囲気やロックな感じが出るように演出された。本作は個性的なユニットが数多く登場するため、それに合ったライブを魅せていけるように、使いまわしは少なく、ユニットごとにガラッとつくり変えている
イメージボード
ライティング。ユニットのテーマカラーである黒と紫が採り入れられた
CG完成映像
完成映像。ライブシーンではあるが、PV寄りな演出も入れ、ライブとPVの間をねらっている。このようなイメージカットを間にはさむことで、演出の幅が広がっていく。このカットではマイクパフォーマンスも見どころだ
『Rebellion Star』Trickstar
イメージボード。このイメージボードに従いつつ、渥美氏が演出を入れていく
完成映像。主人公ユニットである『Trickstar』は、ストーリー上、モニタとスポットライトのライティングしか使えなかった。ライトの数は多すぎるため、あまり動かさないで明滅だけで済ませたり、動かしてもある程度の数だけ絞って動かしたり、工夫をしながらできるだけ派手になるように演出されている
別カットの完成映像。『Trickstar』のテーマカラーの赤と青を採り入れて演出されている。通常のアニメ制作であれば色指定がシーンごとにキャラクターの色を決めていくが、本作ではバーチャルライブモデルの色味がそのまま使用された。ライブでは派手なエフェクトや激しく変化するライティングが乗り、色が変化しやすいため、最終的にAEで色調整が施されている
『終わらないシンフォニア』fine
第七話の『fine』のライブは、他のユニットとちがい、ステージが野外ということや、他のユニットにはないオプションがあったため、ユニットのテーマカラーの白と金をふまえ、単色で落ち着いた雰囲気で調整されている
イメージボード。このイメージボードに従いつつ、渥美氏が演出を入れていく
CG完成映像
完成映像
-
メンバー4人が並ぶ場面カット。ユニットカラーの白が目を引く
-
天祥院英智と日々樹 渉のアップカット。作画とのハイブリッドとなるフェイシャルカットだ。当初は作画の線に合わせるために、CG素材のラインを少し太くしていたが、CACANiチームからCGのラインに挑戦したいと提案があり、現在はCGのラインに作画が線を合わせているという
『Love Ra*bits Party‼』Ra*bits
第九話の『Ra*bits』のライブは小さくてかわいいユニットのテーマ性が全面に押し出された。『紅月』や『UNDEAD』よりも舞台セットが大がかりなことや、ステージ上のスポットライトが取り外されていることもあり、セットが画面映えする演出となっている
イメージボード
完成画。カメラワークはCGの強みである。男性アイドルであっても、『Ra*bits』のようなキャラクターであれば、女性アイドルのようなかわいらしい演出も可能だ。イメージボードをつくっている渥美氏がステージの構成も行なっているため、イメージボードとの差異がなく、リッチにブラッシュアップされている。ユニットのテーマカラーの水色も随所で採り入れられた
『HEART→BEATER‼‼』Trickstar
第十二話の『Trickstar』のライブは、舞台のセットが簡素なことや、カットごとのカメラワークがライティング映えすることもあり、モニタワークと合わせて他のユニットより派手になるように意識して構成された
光る衣装
ユニットカラーの赤と青を基調としたライティング
-
モニタ演出によって会場全体で演出する
-
シルエットが印象的な逆光カット。撮影処理が乗ることで全体が調整される。「ライブでは毎回変わった演出をしているので、みなさんに楽しんでいただけたら良いですね」(白鳥氏)
■関連記事
TVアニメ『あんさんぶるスターズ!』ライブシーンの舞台裏〜前篇〜