3Dスキャンデータから、2層構造の3Dモデルを作成
▲ファーをもつ動物を3DCGで再現する場合、3Dスキャンによって取得したポリゴンデータをそのまま使用するわけにはいかない。ファーはほかの機能(本プロジェクトの場合はOrnatrix)で再現するため、ファーが生えていない状態の3Dモデルを作成する必要があった。ファーの先端から皮膚までの深さは3Dスキャンデータから割り出せないため、3Dスキャンの際、実際に「柴犬まる」の体に触れさせてもらい、ファーの深さを測ったという。さらに、シャワーを浴びてファーが体に貼り付いた状態の「柴犬まる」の写真も参考にしたそうだ
▲なお、先の3Dモデルは2層構造になっており、内側にはインナーモデルが入っている。アニメーション用のリグはインナーモデルに設定されていて、外側とインナーモデルの間の脂肪層の揺れはZiva VFXを用いてシミュレーションしている
▲外側のみワイヤーフレーム表示にした状態。シミュレーション時の計算に用いる脂肪層モデルは、外側とインナーモデルをブーリアン演算することで作成している。シミュレーションの詳細については後述する
「柴犬まる」の喉元の揺れや歩き方まで再現
- 「デジまる」のリグは、mGearを使って設定されている。「たくさんの選択肢の中から必要なコンポーネントを選んで組み合わせ、簡単にカスタムメイドのリグを作成できるので助かっています。プラグインのアップデートが早く、頻繁に新機能が追加される点もいいですね」とアニメーションディレクターの橋本真作氏は解説した。
前述したように、脂肪層の揺れはZiva VFXでシミュレーションしている。骨格から筋肉を作成し、脂肪層はもちろん表皮のシミュレーションまで可能なソフトウェアだが、柴犬は全身がファーに覆われているため、今回は脂肪層のみをシミュレーションした。「柴犬まる」のタプタプとした喉元の揺れまでしっかり再現されている点が目を引く。
本プロジェクトのアニメーションは全て手付けされており、「柴犬まる」の散歩の様子を撮影した映像がリファレンスとして用いられた。LiNDA ZOOのアーティストは動物のアニメーション作成に慣れていることもあり、「柴犬まる」の歩き方がそっくり再現されている。
mGearによるリグと、Ziva VFXによる脂肪のシミュレーション
▲mGearのビルド後に行う追加のセットアップはスクリプトによって自動化されており、1クリックで【上】のガイドから【下】のリグを作成できる。この自動化を怠ると、メンテナンスの難しいアセットになってしまうため注意が必要だという
▲青色部分がシミュレーション時の計算に用いる脂肪層。厚みによって結果が大きく変わるため、何度かシミュレーションをくり返し、最適な厚みを模索している
▲Ziva VFXのシミュレーション解像度を表示している。この格子を細かくするほど精度は上がるが、計算時間も増加する
© Shibainu maru