<3>UE4とAfter Effectsの連携によるアニメーション制作
独特な手法を駆使したUE4でのアニメーション制作
モデリングからコンポジットまでの本制作をみていこう。まず、キャラクターやエフェクトは2Dアニメーションで作成し、背景の建物や雲は3Dでモデリングした。それらの素材をUE4にインポートしてカメラやライティングを設定し、連番で書き出している。次に、レンダリングした連番ファイルをAfter Effects(以下、AE)で読み込み、コンポジットして動画として書き出した。3DモデリングにはBlenderを使用。EDとゲームの連携を考慮して、ポリゴン数の削減が必要なゲーム用モデルはED用のモデリング後にローポリ化した。3Dモデラーで2Dエフェクトアーティストのヨエル・パルメナス氏は、「建物は基本的には硬い形でも良いのですが、ハート型のアイテムは滑らかに表現したいのでローポリでも綺麗な形を保つのが難しかったです」と語る。
本作において最も特徴的なUE4でのアニメーション制作では、素材をインポートしてまとめているが、映像制作向けソフトのようにキャラクターアニメーションの連番画像をインポートして使うのは非常にレアなケースだろう。「連番のキャラクターアニメーションの表示/非表示をタイミングよく切り替える手法にかなり苦労しました。こういった使い方は私の経験では少なかったので、最適な表示方法を見つけるためにかなり調べて制作しました」とUE4アーティストの小倉理生氏は苦労を語る。また、仮に全てを3Dで作成した場合、工数的にもリソース的にも完成は難しかったが、ジョシュア氏が連番アニメーションを描いてくれたおかげで世界観を崩さずに納品できたと小倉氏は話す。最終的にはUE4から書き出した連番をAEに読み込み、コンポジットした後にムービーデータとして書き出している。コンポジットでは、コンセプトアートの世界観を極力壊さないよう、AE上では色味を変えず、隊員服の青く光るラインを加えるなど味付け程度の調整に留めた。そのほか、カメラワークはUE4で付けているのだが画ブレのような細かい画面の動きを足したり、走るキャラクターの疾走感を出すために画面全体に気流のようなエフェクトをAE上で加えている。AEとUE4の連携に関しては、「AEでは道路とキャラクターが前景で、背景が後景といった感じでレイヤー分けしました。そのときはマスクも一緒に出してもらったのですが、どんどん素材の数が増えてしまって......。その度にUE4でレンダリングを出してもらい大変な思いをさせてしまいました」とコンポジットを担当した千田 岳氏はふり返る。これまでアニメの撮影を担当して1カット単位の制作を手がけてきた同氏にとって、1分半ワンカットの制作は素材が多く意外と大変だったとのことだ。
Blenderでの3Dモデリング
▲雲のグレーモデル
UE4によるアニメーション制作
▲UE4ではAEのようなレイヤー構造で管理。キャラクターやエフェクト、背景などの200個程度の素材をキーフレームアニメーションさせている
▲キャラクターアニメ-ションは、連番画像素材をUE4に読み込んで表示
▲EDでは右移動のみとなるため、画的に単調にならないよう背景の3Dモデルはキャラクターの移動とは逆の左方向に回転させている
UE4とAEの連携によるコンポジット
▲最終画像のほか、AEでのコンポジット作業用のマスク素材として2種類の深度画像をレンダリングした。疾走感を表現する白いモヤなどのエフェクトや焔人の消滅エフェクト、鉄梟の軌跡エフェクトなどをコンポジットの工程で追加した