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"感情を動かす"フォトリアルを導き出すLIT design〜ワンランク上の建築ビジュアライゼーション

"感情を動かす"フォトリアルを導き出すLIT design〜ワンランク上の建築ビジュアライゼーション

<3>空間を構成する壁・床などの表現

インテリアのCGにおいて空間を構成する床・壁・天井・窓などが画の中で占める割合は多く、これらの出来映えが最終的な仕上がりに直結すると言っても過言ではありません。形状や質感などもシンプルであるがゆえに手を抜いてしまいがちですが、ここをしっかりとつくり込むことによって、インテリアのCGはグッとリアルになります。

床・壁・天井

白い壁や天井の使用頻度は最も多いのではないでしょうか。この「壁」をついつい白のベタ塗りにしてしまいがちですが、手を抜かずしっかりとマテリアルの設定をしていきましょう。

【ディフューズマップの活用】
現実世界に質感のない壁は存在しません。凹凸や反射が必ず存在します。まずはディフューズに「壁紙クロス」「塗装」などのテクスチャを入れましょう。

▲ディフューズマップ

【リフレクションマップの活用】
自宅の壁紙クロスなどをよく観察してください。必ず反射をしているはずです。スペキュラマップで反射感を表現します。

▲スペキュラマップ

【バンプマップの活用】
凹凸がほとんどない白壁も存在するかもしれませんが、多くはありません。バンプマップやノーマルマップで凹凸感を表現します。

▲バンプマップ

【面取りの表現】
壁の角を観察してみると面取りが施されているはずです。モデリングの時点で面取りをするのも良いですが、LIT designが使用しているCorona Rendere(rcorona-renderer.com)には、「CoronaRoundEdge」という機能があります。これはマテリアル設定の部分で丸みを帯びたエッジを表現できる機能です。これを使えば壁の面取りを簡単に表現することができます。

▲Corona Render「CoronaRoundEdge」による面取りの表現。Materialの「Bump Map」に「CoronaRoudEdges」を入れれば適用されます。RoundEdgesと通常のバンプマップを併用したい場合は、「Additional bumpmapping」にバンプマップを当てます

【巾木の表現】
壁と床の境目を仕切る見切り材のことを"巾木(はばき)"と言います。巾木のない部屋もありますが、ほとんどの部屋には巾木があります。人間というのは本来あるはずのものがないと、本能的に違和感を感じ、それが(悪い意味での)"CGっぽさ"を増幅させます。基本的には、巾木を入れることでリアリティのある仕上がりになります。



  • ▲巾木なし


  • ▲巾木あり

【床の表現】
すでに並べられたフローリングのテクスチャを使うのが簡単な方法ですが、立体感に乏しく張り付いた感じになってしまいがちです。そこでフローリングを1枚1枚モデリングすることにより、目地の立体感や板1枚単位の面取りまで表現することが可能です。

▲テクスチャのリピート感が目立つと、CGっぽく見えるひとつの要因になってしまいます。板のテクスチャ数パターンをランダムに貼ることにより、引きで見たときにもリピート感が目立たなくなります

窓の構造

インテリアCGでつい手を抜きがちなのが窓です。フレームごとにガラスをはめ込むだけで済ますのが簡単ではあるのですが、ここをしっかりとつくり込むことでインテリアCGのリアルさはグっと高まります。まずは窓の構造について理解することが必要です。一般的な引きちがい窓の断面図は下図のとおりです。

いかがでしょうか? かなり複雑なことがわかりますね。これをそのままモデリングすればリアルになるのですが、重要なポイントはガラスが2枚あることです。図の断面はガラスが2枚ある「ペアガラス」と呼ばれる窓のものです。近年の日本の住宅の窓ガラスは、大半がこのペアガラスです。また、断熱効果をさらに高めた3枚構造の「トリプルガラス」なども存在します。

▲ペアガラスの窓では、反射が二重になります。CG上でもガラスを2枚入れることによって反射が少しずれて二重になり、効果的にリアリティを高められます。また、こうした複層ガラス窓にはスペーサーというパーツが付いています。このスペーサーとシーリング材を形状としてつくることにより、窓にディテールと立体感が表れ、フォトリアルに仕上がります

タイル

外壁、内壁、床など ・インテリアにおいてあらゆる場所にタイルは使用されています。このタイルの表現において、テクスチャを貼り付けてバンプやディスプレイスメントマップで立体感を出すことは簡単ですが、ここもしっかり形状としてつくり込むことによってリアリティを確実に高めることができます。

▲現実のタイルの角あたりをよく観察すると、角で綺麗にタイルが収まっているのではなく、少しずれた場所に目地があることがわかります

通常見かける板状のタイルは「平物」と呼ばれるのに対し、タイルのコーナー部分には「曲がりタイル」と呼ばれる役物タイルがよく使われます。役物タイルとは、出隅やタイルの側面を隠して綺麗に納めるための特殊な形状のタイルのことです。この役物タイルも含めてタイル形状を疑似的な凹凸ではなく、モデリングで現実世界を忠実に再現し、つくり込むことによって、角の収まり、目地の立体感などが出てリアルになります。もちろん建物の外観の表現においても、同様の効果が得られます。

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<4>ディテール表現

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