実際の写真撮影の知見をCG制作に活かすことで多種多様な3DCGビジュアルを創り出すLIT designに、インテリアのCGに求められるフォトリアルな画づくりのポイントをモデリングからライティングまで幅広く解説してもらった。

※本記事は月刊「CGWORLD + digital video」vol. 265(2020年9月号)からの転載となります。

TEXT_ LIT design
EDIT_沼倉有人 / Arihito Numakura(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada
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▲左から、坂本翔吾氏、日下小椰伽氏、松上明弘氏(CEO / Designer / Director)、植村明斗氏(Creative Director / COO)、辻 直樹氏。以上、LIT design

LIT designは、株式会社ABILITIST CG事業部のブランドネーム。インテリアメーカーのカタログ、プロダクトの広告など、様々なフォトリアルCGをメインに担当し、映像やVR制作も行なっている。
litdesign.jp

<1>カメラと構図

インテリアに限らない話ですがフォトリアルなCGをつくる上では写真を研究することが必要不可欠。常日頃から写真を撮ったり、良いと思った写真がなぜ良いのかを分析したり、構図やライティングについて深く知ることが重要です。

カメラアングル

リアリティを高めるために要素を増やすというのはひとつの方法として有効ですが、情報が多くなってしまうとどれが重要なのかがわかりにくくなります。伝えたいことがしっかりと受け手側に伝わるように、盛り込みたい要素を整理しながら"伝わるスタイリング"を意識しましょう。

特に昨今のインテリアのトレンドとしてミニマルが好まれる傾向にあるので、少ない要素でもリアルで洗練されたビジュアル制作ができることが重要です。日本人が立ったときの平均的な目線の高さは150~160cmほどですが、インテリアのCGにおいては"見せたいもの"を基準にカメラの高さを設定します。例えば、本頁のメインカット(上図)の場合は、90~120cmあたりの低めの目線にすることで、ソファやコーヒーテーブルなどリビング空間を構成する主役にフォーカスすることができます。

▲空間全体を見せるカメラアングルは説明的になりがちです。見せたい要素にフォーカスしたアングルを設定することにより、訴求したいこと、ビジュアルで見せたいものを明確化でき、説得力のあるビジュアルになります。欲張って色んなものを枠内に収めようとすると何を見せたいのかがブレてしまいます。画の中に全体を収めるのではなく、写真を撮るような感覚で空間の中から見せたいポイントを切り取ることが重要です

ボケ(被写界深度)の活用

現実のカメラで写真を撮影する際に、ピントが合っていない部分にはボケが生じます。CGがCGぽっく見えてしまうひとつの原因として、全てにピントが合っていて全体がシャープすぎることが考えられます。カメラには「絞り(F値)」というものが存在し、これがボケを生み出します。最近のレンダラはこのF値やシャッタースピード、ISOといった現実のカメラと同じ設定を行えるものが多くあります。この絞りのことを理解することで、現実世界に基づいた数値でボケをコントロールすることができます。

カメラはレンズに開いている穴から光を取り込みますが、その取り込む光の量をコントロールするのが「絞り(fstop)」です。F値が大きくなればなるほピントの合う範囲が広くなり、小さくなるとピントの合う範囲が狭くなります。ピントから外れたところはボケが生じますが、このボケこそがリアルに見せるポイントです。ピントが合った部分とボケをコントロールすることで、目立たせたい部分をより明確にすることができます。



  • ▲F2.8


  • ▲F5.6

▲F11

▲部屋全体を見せるような引きのアングルでも、空間の中で最も見せたい部分にピントを合わせて、被写界深度をわずかに入れることにより、写真で撮影したようなリアリティのある画づくりが可能です

<2>ライティング

フォトリアル表現においてライティングは特に大切な要素のひとつでしょう。実際の写真撮影でもライティングの技術・知識が必要不可欠です。現実世界以上にライティングを自由にできるのが3DCGの良いところでもあり、難しいところです。照明の種類、光量、色温度など現実世界の光を理解し、3DCG上で再現するというアプローチが効果的です。

窓外のつくり込み

インテリアのCGをつくる際に、ついついやってしまいがちなのが"部屋の内側だけつくる"ということ。実際に窓の外に何も障害物がないロケーションも存在するとは思いますが、多くの場合は樹木や近隣の建物など障害物が存在するはずです。また、建物自体にも軒(のき)や庇(ひさし)など、窓の外には室内の光に影響を及ぼすものが多くあります。

こういった窓の外側の環境を簡易的にでもつくることにより、樹木や軒、近隣の建物などの障害物が環境光や太陽光を遮り、地面に反射した光が室内に入り込みます。そうすることで現実に近いライティングとなり、写真のような3DCGに近づけることができます。また、光が回り込みすぎてしまうときは、カーテンやブラインドなどで光の量を調節するのも有効です。



  • ▲窓の外を構成する障害物を作成していない状態のライティング


  • ▲窓の外に樹木などの障害物を置いた状態のライティング

室内照明の種類

室内の照明も現実世界に基づいて制作することがフォトリアルへの近道です。空間に対してどのような照明が必要なのか、現実世界における照明事情を知ることが必要不可欠です。室内照明の種類を大きく分けると「意匠的な効果を得る照明」と「明るさを得るための照明」に大別できます。目的を理解して室内照明の配置や配光を意識します。CGの観点から分けると「造作で取り付ける照明(動かせない)」「コンセントや充電式の照明(自由に動かせる)」に分類できます。CG上でもこれらが原理原則に基づいて配置されていることがリアルな空間づくりの基礎になります。

色温度

フォトリアルを追求する上で照明の色温度はとても重要です。外光、室内の照明、カメラのホワイトバランスなど、現実世界の数値を把握し、3DCG上で再現しましょう。色温度により、空間の雰囲気はガラッと変わります。イメージの雰囲気、時間帯、ロケーションなどを考慮して色温度をコントロールしましょう。



  • ▲色温度:2,700K
    電球色


  • ▲色温度:3,500K
    電球色

▲色温度:5,000K
昼白色

※画像はイメージです

次ページ:
<3>空間を構成する壁・床などの表現

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<3>空間を構成する壁・床などの表現

インテリアのCGにおいて空間を構成する床・壁・天井・窓などが画の中で占める割合は多く、これらの出来映えが最終的な仕上がりに直結すると言っても過言ではありません。形状や質感などもシンプルであるがゆえに手を抜いてしまいがちですが、ここをしっかりとつくり込むことによって、インテリアのCGはグッとリアルになります。

床・壁・天井

白い壁や天井の使用頻度は最も多いのではないでしょうか。この「壁」をついつい白のベタ塗りにしてしまいがちですが、手を抜かずしっかりとマテリアルの設定をしていきましょう。

【ディフューズマップの活用】
現実世界に質感のない壁は存在しません。凹凸や反射が必ず存在します。まずはディフューズに「壁紙クロス」「塗装」などのテクスチャを入れましょう。

▲ディフューズマップ

【リフレクションマップの活用】
自宅の壁紙クロスなどをよく観察してください。必ず反射をしているはずです。スペキュラマップで反射感を表現します。

▲スペキュラマップ

【バンプマップの活用】
凹凸がほとんどない白壁も存在するかもしれませんが、多くはありません。バンプマップやノーマルマップで凹凸感を表現します。

▲バンプマップ

【面取りの表現】
壁の角を観察してみると面取りが施されているはずです。モデリングの時点で面取りをするのも良いですが、LIT designが使用しているCorona Rendere(rcorona-renderer.com)には、「CoronaRoundEdge」という機能があります。これはマテリアル設定の部分で丸みを帯びたエッジを表現できる機能です。これを使えば壁の面取りを簡単に表現することができます。

▲Corona Render「CoronaRoundEdge」による面取りの表現。Materialの「Bump Map」に「CoronaRoudEdges」を入れれば適用されます。RoundEdgesと通常のバンプマップを併用したい場合は、「Additional bumpmapping」にバンプマップを当てます

【巾木の表現】
壁と床の境目を仕切る見切り材のことを"巾木(はばき)"と言います。巾木のない部屋もありますが、ほとんどの部屋には巾木があります。人間というのは本来あるはずのものがないと、本能的に違和感を感じ、それが(悪い意味での)"CGっぽさ"を増幅させます。基本的には、巾木を入れることでリアリティのある仕上がりになります。



  • ▲巾木なし


  • ▲巾木あり

【床の表現】
すでに並べられたフローリングのテクスチャを使うのが簡単な方法ですが、立体感に乏しく張り付いた感じになってしまいがちです。そこでフローリングを1枚1枚モデリングすることにより、目地の立体感や板1枚単位の面取りまで表現することが可能です。

▲テクスチャのリピート感が目立つと、CGっぽく見えるひとつの要因になってしまいます。板のテクスチャ数パターンをランダムに貼ることにより、引きで見たときにもリピート感が目立たなくなります

窓の構造

インテリアCGでつい手を抜きがちなのが窓です。フレームごとにガラスをはめ込むだけで済ますのが簡単ではあるのですが、ここをしっかりとつくり込むことでインテリアCGのリアルさはグっと高まります。まずは窓の構造について理解することが必要です。一般的な引きちがい窓の断面図は下図のとおりです。

いかがでしょうか? かなり複雑なことがわかりますね。これをそのままモデリングすればリアルになるのですが、重要なポイントはガラスが2枚あることです。図の断面はガラスが2枚ある「ペアガラス」と呼ばれる窓のものです。近年の日本の住宅の窓ガラスは、大半がこのペアガラスです。また、断熱効果をさらに高めた3枚構造の「トリプルガラス」なども存在します。

▲ペアガラスの窓では、反射が二重になります。CG上でもガラスを2枚入れることによって反射が少しずれて二重になり、効果的にリアリティを高められます。また、こうした複層ガラス窓にはスペーサーというパーツが付いています。このスペーサーとシーリング材を形状としてつくることにより、窓にディテールと立体感が表れ、フォトリアルに仕上がります

タイル

外壁、内壁、床など ・インテリアにおいてあらゆる場所にタイルは使用されています。このタイルの表現において、テクスチャを貼り付けてバンプやディスプレイスメントマップで立体感を出すことは簡単ですが、ここもしっかり形状としてつくり込むことによってリアリティを確実に高めることができます。

▲現実のタイルの角あたりをよく観察すると、角で綺麗にタイルが収まっているのではなく、少しずれた場所に目地があることがわかります

通常見かける板状のタイルは「平物」と呼ばれるのに対し、タイルのコーナー部分には「曲がりタイル」と呼ばれる役物タイルがよく使われます。役物タイルとは、出隅やタイルの側面を隠して綺麗に納めるための特殊な形状のタイルのことです。この役物タイルも含めてタイル形状を疑似的な凹凸ではなく、モデリングで現実世界を忠実に再現し、つくり込むことによって、角の収まり、目地の立体感などが出てリアルになります。もちろん建物の外観の表現においても、同様の効果が得られます。

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<4>ディテール表現

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<4>ディテール表現

ここまではカメラの設定やライティング、壁の表現などインテリアCGにおける基本的な部分に触れてきましたが、ここからは家具、小物などのインテリアを構成する細かい要素にフォーカスしたTIPSを紹介していきます。つい手を抜きがちなところを、ほんの少し時間をかけて工夫することでリアルに仕上がるので、ぜひ試してみてください。

鏡の表現

鏡は洗面所、LDK、店舗などの空間の意匠などいたる所で目にします。CGおける鏡の表現で反射100%の板を置くことは簡単ですが、前項までと同様にしっかりとつくり込むことでCGのリアルさがグッと高まります。まずは鏡の構造について理解することが必要です。一般的な鏡の断面を見てみましょう。

ご存じでしたか? 一般的な鏡は、透明なガラス板の裏面に銀などの金属をメッキする「銀引き製法」で作られています。洗面所の鏡を見てください。鏡の端のフレーム部分を見ると、少し奥まったところで反射していることがわかります。つまり鏡というものは"鏡面反射するただの板"ではないのです。この特性を忠実に再現することにより、鏡の端にガラスの厚みによる立体感が出てきてフォトリアルな表現に仕上げることができます。



  • ▲反射100%に設定した"ただの板"CG


  • ▲実際の鏡の形状・質感を再現したCG

アートフレーム

インテリアの壁などに小物として多用されるアートフレームですが、単にフレームに入ったアートを壁に引っ付けただけでは壁にフラットな画像を貼り付けただけのような見た目になってしまいます。そこで壁から数ミリ浮かせる、もしくは0.5~1度ほど下向きに傾けることで、影が斜めになってリアリティがグッと高まります。また、額物には表面保護としてガラスやアクリルなどが入っていることが多いです。前述の鏡と同様に形状としてガラスを入れることにより、奥行き感や反射感が出てフォトリアルな見た目に仕上げることができます。

▲フレームのコーナー部分も45度で斜めにカットして繋ぎ合わせる「留め加工」と呼ばれる処理を加えることで、ディテールのリアリティが高まります

照明器具

【電球の構造】
照明器具をCGで表現する場合、電球のガラス自体を発光させてしまいがちです。ですが、実際の照明器具はガラス自体が発光することはありません。一般的な電球やLEDでも発光する光源が必ず存在します。ガラスの厚みやフィラメント部分までしっかりとつくり込み、発光させることによってリアルな照明器具を表現することができます。

▲電球にも様々なガラスの形状、フィラメントの種類が存在します。どんなものがあり、どんな光り方をするのか、深く知ることが欠かせません

【乳白の表現】
乳白のガラスシェードやアクリル乳半のシーリングライトなどの白い半透明の照明器具も多く見かけます。このような、透過はしないが光は通すような半透明のマテリアルは「Translucency」で表現可能です。電球と同じくガラスの形状をつくって中に光源を入れることにより、シェード全体が発光するのではなく光源からの距離で明るさのグラデーションがしっかりと出てきます。

▲ガラス自体を発光させたCG

▲Translucencyを使い、実際の電球を再現したCG

起毛素材の表現

インテリアCGの質感において起毛生地の表現は難易度の高い表現のひとつではないでしょうか。起毛のあるファブリックは「カーテン」「ラグマット」「椅子の張り地」「クッション」「ファー」などがあります。これらの起毛と呼ばれる毛の部分は本来、1本1本独立しているもので、同一方向に揃って向いていることはありえません。ベルベット素材の張り地を使用したチェアで例えると、使用箇所は座面と背もたれです。人が座ることを想定した汎発性のある素材の上にベルベット生地がピンと張られており、シワのない状態になっていることがわかります。誰かが座ったのか、椅子を空間に人の手でセットし終わってすぐに撮影したのか。いろいろな想像をしながらベルベットに残るであろうリアルな跡を形づくります。均一性をやみくもに崩すのではなく、しっかりと現実世界に倣い、どのような過程でこうなっ たのかを説明できるように制作を心がけるのがフォトリアルヘの近道です。

▲図のようなラフ感のあるテクスチャをリフレクションマップとして用いることで、起毛感のあるベルベットを表現可能です

フォトリアルなCGをつくるための近道は、現実のインテリア、建築、それらをとりまく要素をじっくり観察し、深く知ることです。全てのフォトリアルCGを制作する上で、主役となるものだけに注力するのではなく、それらをとりまく環境にこそ着眼し、奥深くまで逆算で考え、世界観を込めて制作していくことが、なんとなくでつくった、単純に素材がリアルであるだけのCGにはない、高い説得力と魅力をもたせると思っています。

スタイリングに使うさりげない小物から、時間帯や天候といったスケールの異なる様々な要素を、「こんなシチュエーションに、ここからのアングルで、ここは見せて、ここは鈍く光って......」と、伝えたい対象に届けるために、根拠と具体性をもってビジュアル化する必要があります。

思考停止で撮った写真がフォトリアルで魅力的なのか? ということと同義で、質感や素材感がリアルだということはあくまでツール(表現技法)でしかありません。表面上の質感だけではなく、なぜそのようになっているのか、どうやってつくられたものなのか、そういったコアな部分に興味を持って目を向け、深く知ることによって、より魅力にあふれたフォトリアルなCG表現が可能だと考えています。



  • 月刊CGWORLD + digital video vol.265(2020年9月号)
    第1特集:どこまで使える? Blender
    第2特集:ワンランク上の建築ビジュアライゼーション
    定価:1,540円(税込)
    判型:A4ワイド
    総ページ数:128
    発売日:2020年8月7日