>   >  スマホ&PC用ゲーム『N.E.O』の動物メカ表現。解剖学的に正確だとしても意図した印象になるとは限らない
スマホ&PC用ゲーム『N.E.O』の動物メカ表現。解剖学的に正確だとしても意図した印象になるとは限らない

スマホ&PC用ゲーム『N.E.O』の動物メカ表現。解剖学的に正確だとしても意図した印象になるとは限らない

モジュラーリグの簡易版で多彩な関節構造に対応

▲本作に登場する動物メカの多くは、ユニークな形状や大きさをしています。その中には、虫系のようなイレギュラーなものもありますが、メインは人型系、鳥系、獣足系の3つです。いずれにせよ、既存リグの使い回しは難しく、かといって手作業で組んでいると時間がかかるため、脊柱・上肢(前肢)・下肢(後肢)などの部位ごとにスクリプトでリグを生成した後、各々の関節構造に合わせて調整することで、再現性や再利用性を高めています。モジュラーリグシステムの簡易版といったイメージです。系統が同じ動物は類似の関節構造をしている場合が多いので、このシステムが効果を発揮しました

スマホのプレイ画面で見たときの印象やわかりやすさを大切に

本作のプレイ中の視点(カメラ)は常に俯瞰で、スマホの小さな画面でも認知できるようにする必要があったので、ポーズやアニメーションを付けるときにはスマホのプレイ画面で見たときの印象やわかりやすさを一番大切にしました。Maya上でアニメーションのクオリティをチェックする際には、プレイ画面と同じ視点にしたビューを見て判断しました。そのため、別の視点から見ると、ものすごく違和感のあるアニメーションがいくつもあります。ある意味、2Dゲームにおけるアニメーション制作と同じ考え方と言えます。

俯瞰で見たときに「一番それらしく見える」ことを重視

▲プレイ中の視点から見た、獣足系の動物メカとチョビ


▲先のデータを別視点からを見たもの。いずれも俯瞰で見たときに「一番それらしく見える」シルエットやアニメーションを意識しています。例えばチョビは、爪先のシルエットが俯瞰で認知できることを重視した結果、真横から見ると少しだけカカトが地面から浮いています。このように、自然なポーズをとらせると俯瞰で見た場合に「そう見えない」ため、あえて不自然なポーズにするというケースが多々ありました

「何をどうつくるか」ではなく、「何を伝えたいか」が大事

本記事を通して一番伝えたかったことは、「何をどうつくるか」ではなく、「何を伝えたいか」が大事だということです。もちろん、何かを伝えるためには、その方法を吟味する必要があるので、実在する動物の外形や内部構造を調べたり、取り入れられる技術を取り入れたりするよう努めました。しかし、本作は特に制限の多いプロジェクトだったので、その中で「伝えたいことを、どう伝えるか」を考え、どこまで再現するかを取捨選択してきました。また、制限を悪ととらえず、活かす方向で試行錯誤することを心がけました。本記事でご紹介した内容は、地味ではありますが、ものづくりの考え方やとらえ方の参考にしてもらえると幸いです。

BBDSはゲームグラフィックス制作の受託をメインの業務にしていますが、本作のようなオリジナルタイトルの開発も行なっています。また、いずれの場合も、コンセプトアートやデザインから考えながら制作できるプロジェクトを数多く手がけています。当社では、同じ思想を共有でき、良いものをつくりたいと強く思えるスタッフを随時募集しています。共感してくださる方は、ぜひ当社Webサイトよりご応募ください! お待ちしています!

<Black Beard Design Studio Inc.の求人情報>

ゲームグラフィックスで日本一を目指す "海賊船"
cgworld.jp/interview/202010-bbds.html

▲左より、角谷圭之氏(エンターテイメントディビジョン・リードプランナー)、石橋 崇氏(クリエイティブディビジョン・ゼネラルマネージャー)、岸 孝侍氏(代表取締役/アートディレクター)、根本まふゆ氏(プロデュースディビジョン・ゼネラルマネージャー)、安藤なつき氏(クリエイティブディビジョン・2Dリードデザイナー)、丸田康平氏(クリエイティブディビジョン・背景リードデザイナー)



  • 月刊CGWORLD + digital video vol.266(2020年10月号)
    第1特集:バーチャルイベント最前線
    第2特集:動物CGから紐解く美術解剖学との付き合い方
    定価:1,540円(税込)
    判型:A4ワイド
    総ページ数:128
    発売日:2020年9月10日
    cgworld.jp/magazine/cgw266.html

特集