>   >  「広さや存在感、質感を出すためにさりげなく使うのが、今回のCGの使い方」>>おジャ魔女どれみ20周年記念作品『魔女見習いをさがして』公開記念
「広さや存在感、質感を出すためにさりげなく使うのが、今回のCGの使い方」>>おジャ魔女どれみ20周年記念作品『魔女見習いをさがして』公開記念

「広さや存在感、質感を出すためにさりげなく使うのが、今回のCGの使い方」>>おジャ魔女どれみ20周年記念作品『魔女見習いをさがして』公開記念

監督の愛車から観光バスまで、多彩なクルマを用意

本作ではモブ同様にクルマも数多く描かれており、ここでもCGと作画が併用された。社内のライブラリから流用したモデルもあるが、本作の仕様に沿った改良が行われている。「(CGを)さりげなく使う」という監督の希望に応え、CGのクルマを本作の世界に溶け込ませるため、色に対しては格段の気配りがなされている。前述のCGモブの作成と同様、効率的な作業を心がける一方で、色彩設計の辻田邦夫氏に色域や組み合わせを確認し、最終的にはカット内でのバランスを人の目でチェックした上で、細やかな調整が施された。いくつもの観光地を巡るという本作の特性を踏まえ、軽自動車から観光バスまで多彩なクルマが用意されている点もこだわりのひとつだ。その中には監督の愛車と同じ車種もあり、東映アニメーションらしい楽屋オチ的な遊び心が入っている。

▲CGのクルマを管理するSHOTGUNの作業画面。本作用に作成されたクルマを総覧でき、各モデルのターンテーブルもSHOTGUN上から確認できるようになっている


▲クルマのレンダリングした素材を読み込んだAEの作業画面


▲撮影処理を経て完成した作中カット

行き交うCGモブとクルマが旅のリアリティを高める渡月橋のシーン

京都観光の渡月橋のシーンでは、ソラ・ミレ・レイカの周囲でCGモブとクルマが頻繁に行き交う。「カットが切り替わっても整合性が取れているか、CGモブとクルマの種類や動きが単調になっていないか、慎重に見極めながら配置しました」(福長氏)。

▲渡月橋の歩道部分にCGモブを配置しているMayaの作業画面


▲同じく、渡月橋の車道部分にCGのクルマも配置している


▲先のデータを使って制作された渡月橋のカット。渡月橋の美術を手前と奥の2枚のレイヤーに分け、行き交うCGモブとクルマを挟み込んでいる


▲カットの背景原図に合わせ、渡月橋以外の場所にもCGモブを配置している


▲渡月橋の上で語り合うソラ・ミレ・レイカのカット。遠景の土手の上をCGモブが行き交っている


▲ソラと大宮竜一が会話する逆光表現が印象的な本カットは、約720コマ(約30秒)もある長尺だ。初期のテイクでは対岸の土手にCGモブも配置されていたが、途中のテイクで不要と判断され、画面右側の渡月橋の上を行き交うモブとクルマだけが残された。ここぞという見せ場では、あえて要素を減らし、観客の視線をメインキャラクターに集中させる演出が採用された格好だ


本作にはアートとテクニカルのスタッフが数多く参加し、Maya、Golaem、Arnold、インハウスツールを連動させたモブ表現の新たなシステムが開発された。本システムは今後の作品制作での活用も予定されており、長期的な視野で開発を継続するという。「さらに使いやすく、汎用性のあるCGモブを扱えるシステムを確立することが当面の目標です。ひとくちにモブと言っても、求められる表現は作品ごとにちがいます。各作品を最大限に活かすモブを制作できるよう、課題解決に努めていきたいです」(福長氏)。

CGアニメーターのこだわりが詰まった入魂の綿毛カット

本記事の締めくくりに、佐藤・鎌谷両監督がこだわった最初の綿毛が飛んでいくシーンのCG制作を紹介する。どれみの「みんなは大人になったら何になりたいの?」というセリフの直後、風に吹かれたタンポポの綿毛が画面いっぱいに舞い飛び、その中のひとつがミレの勤める会社のビルに飛来する。

近景の上昇する綿毛と遠景の窓越しのビル内を映しながらカメラが上昇するカットは、シーン全体がCGで組まれている。窓越しにうっすらと見えるビル内のオフィスには数多くのCGモブ・机・PC・椅子などが配置されており、CGモブにはちゃんとアニメーションも付けられた。短い尺にも関わらず、CGアニメーターのこだわりが詰まった入魂のカットに仕上がっている。「ビル内で大勢の人が働いていることを伝えつつ、ミレのいる会議室のカットへシームレスにつなげたいという演出意図があったので、鎌谷監督もCGアニメーターも、モブの配置や動き、カメラワークなどにかなりこだわっていました」(福長氏)。

一連のカットを通して、佐藤・鎌谷両監督の演出術の一端が垣間見えるので、ぜひ注目してほしい。

▲ビル内のオフィスのCGモデル。一瞬しか見えないカットだが、CGアニメーターのこだわりが詰まった配置になっている


▲近景の上昇する綿毛と、遠景の窓越しのビル内を映しながらカメラが上昇するカット。全てCGで組まれており、ビル内のCGモブにはアニメーションが付けられている


▲先のカットに続く、ミレのいる会議室のカット。本カットのモブは全て作画で、右から2番目にミレが座っている



本記事は以上です。関連記事は以下よりご覧いただけます。
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