>   >  アルマジロの変形を嘘や誇張なくリアルに再現~ディズニー・ジャパン&白組が贈る、オリジナル短篇アニメ『ドラマヂロ』(1)【データ配布有】
アルマジロの変形を嘘や誇張なくリアルに再現~ディズニー・ジャパン&白組が贈る、オリジナル短篇アニメ『ドラマヂロ』(1)【データ配布有】

アルマジロの変形を嘘や誇張なくリアルに再現~ディズニー・ジャパン&白組が贈る、オリジナル短篇アニメ『ドラマヂロ』(1)【データ配布有】

<2> 物語の主役となるドラマヂロのキャラクターデザイン

企画と制作フローがおおよそ固まってきた段階で、さっそく主役となるドラマヂロのモデル制作に取りかかった。制作にあたっては写真・動画や骨格、解剖図など様々な資料を収集し、実物のアルマジロの取材も敢行。これらの情報を基にデザイン画を起こし、甲羅の部分と体の部分に手分けをして作業を進めていった。「キャラクターもののモデリングでは、通常あまり見えない部分はディテールを省略したりします。ところが、ドラマヂロに関しては、最も多く登場するのが丸まってドラムを叩くポーズなんですが、足の裏やスティックをもつ前足、お腹まで全部見えちゃっているんです。しかもそういう箇所に限ってディテールが密集しているので、その部分はかなり時間を割いてモデリングしました」と、モデリングを担当した向澤一輝氏は語る。

  • 向澤一輝/Kazuki Mukaizawa

モデリングはZBrushSubstance Painterで行い、それを3ds Maxにもち込んでV-Rayでレンダリングするというフローで進められた。このアルマジロというのがなかなか難しいモチーフで、丸く変形するのだが、実際のアルマジロは球体ではなく、ラグビーボールに近い形になる。しかし、リクエストとしては丸まった状態で転がれるよう球体に変形でき、かつキャラクターとしての可愛さも表現する必要があるとのことで、モデル~リグ~アニメーションの担当者間で相互にデータを往き来しつつ、各ポジションで調整を加えていったという。

また、アルマジロは観察すればするほど複雑な造形で、毛が生えていたりシワが多かったりするとのこと。「実際のアルマジロをみるとけっこうシワが深いんですけど、忠実に表現するほど老けて見えてしまう。ドラマヂロは少年の設定なので、見た目の印象と実際のディテールの入れ方のバランスにはなかなか苦労しました」(向澤氏)。

さらに、リグやアニメーションの項でも触れるが、作中ではサッカーボール程度の大きさのアルマジロが地面を歩いたり転がったりするためローアングルが多く、接地がわかりやすく目立つ。ディスプレイスメントマップを使うとアニメーターが作業時に接地を確認できないということもあり、実際のジオメトリでディテールを直接表現している部分が多い。

ルックに関しても当初は白組のオフィス近くで撮影されたHDRIを基につくっていたそうだが、その後、実際の現場で撮影したHDRIを作成したことにより、そこで詰められている。またロケハンなどでアングルチェックをする際に、第1話ではサッカーボールをドラマヂロに見立てていたが、制作途中からCGモデルを基に同社のミニチュア班が3Dプリンタを使ってドラマヂロのモックアップを作成、活用された。

  • ◀3Dプリンタで作成されたドラマヂロのモックアップ

アルマジロに関する考察

▲実写合成作品ということもあり、キャラクターがデフォルメされすぎないよう、リアリティとキャラクター性が両立されるようにデザインが進められている。そのためにまずはアルマジロとはどんなものなのか、実物の観察も含め様々な資料を基に各部署で研究された。アルマジロは哺乳類で、骨格的にはネズミに近いのだそうだ。同じアルマジロでもかなりの種類が存在するが、実際に丸くなることができるのはミツオビアルマジロと呼ばれる背中の蛇腹が3つの種類だけらしく、ドラマヂロはいくつかの種類のアルマジロから要素を取り出してデザインされている。また、写真をみると、お腹は毛がふさふさだ。当初石井監督は「このふさふさに色々しまえて便利」と思ったそうだが、体が球状に変形する上に毛がふさふさではコスト的に大変......ということで、丸まったときに干渉しない程度の長さに抑えられた。さらに、実際には全然丸くはならないこともわかる。ドラマヂロは転がって移動することもあるため、いかに球状にするかというのもポイントだったという

キャラクターのベースとなるデザイン画

▲リアリティをもたせつつも丸く、可愛くとのことでデザインされたドラマヂロと、その父親パパマヂロ。サイズ的にはサッカーボール程度を想定したそうだ。というのも今回撮影するにあたって、あまりに小さいとカメラの最低高が足りなくなってしまう。実際のアルマジロはサイズも様々だが、あまり大きすぎても怖くなってしまうので、このサイズに決定したとのこと。また、設定がストリートドラマーということもあり、パパマヂロにはミュージシャンらしさも加えられている。よく見るともみあげがあったりハンチング帽をかぶったりしているが、これは某有名ギタリストをモチーフにアレンジが加えられたという

▲4話から登場するドロボヂロ(右)は、ドラマヂロよりひとまわり大きく、甲羅を叩くと金属っぽい音がする設定で、ミツオビアルマジロとココノオビアルマジロをミックスした架空の動物としてデザインされている

ドラマヂロモデルの制作

▲モデルはZBrushでつくり込まれている。その後Substance Painterでペイントされ、3ds Maxにもち込みV-Rayでレンダリングされる。つくり始めた頃は甲羅の模様もかなり整然と並んでいたそうだが、実際のアルマジロを見るとかなり複雑な模様だったため、アルファマスクをいくつも組み合わせて再現している。また、鼻も特徴的で、実物は常にひくひく動いているそうなのだが、あまりリアルにすると生々しくなりすぎてしまうので、やや抑えめにディテールアップされている

▲Substance Painterでの作業画面。左が体、右が甲羅。足も特徴的で、後ろ足側は肉球(のちにバスドラムとなる)、手(前足)側は鋭い鉤爪になっている。このツメの質感は足の先に生えている部分だけではなく皮膚の様々な部分に存在し、このあたりはSubstance Painterを駆使して再現したそうだ

▲3ds Maxに読み込んだモデル。ディスプレイスメントマップを使用せず全てメッシュで制作しているため、ワイヤフレーム表示にするとその密度の高さがよくわかる

▲V-Rayでレンダリングし、質感チェック

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<3> 実際の骨格に合わせたリグ構造とキャラクター性の両立
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