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全11話のTVシリーズを短期間・高品質で制作するためにデジタル技法を駆使! TVアニメ『セスタス -The Roman Fighter-』

全11話のTVシリーズを短期間・高品質で制作するためにデジタル技法を駆使! TVアニメ『セスタス -The Roman Fighter-』

MotionBuilder主軸のワークフローでさらなる効率化を図る

キャラクターリグはIK、コントロールリグの両方で動かせるよう設定されている。表情もブレンドシェイプとリグで細かい調整が可能。脇や胸筋用にマッスルの補助ボーンを仕込んでいる。

ハチマキや髪の毛、さらにほぼ全てのキャラが身についているスカートについては、自動追従して動くようになっていたものの最終的なモーション調整が多かったそうだ。手甲のビスも浮いてしまうなど、制御が大変だったという。

モーション制作はMBで行なっている。動作の軽さやモーションキャプチャとの親和性により、効率が良かったそうだ。ちなみにMayaはレンダラとして活用するようなイメージで使用された。

ただし、制作協力会社にMBに慣れたスタッフが少なかったため、約50ページの作業マニュアルを作成し、誰でも使用できるようにする必要があった。とは言え、基本的なアニメーションカーブやコマを打つ作業に変わりはないので、マニュアルさえあればMBを主軸にしたワークフローもそこまで高いハードルとはならなかったようだ。

リップシンクについては仮の声を使い作業を進め、CGアニメーションをベースにアフレコ、最終的にリップの微調整を行なっている。カットによっては3DCGのリップにテンポやセリフ内容を合わせることもあったそうだ。

ボディリグ&セットアップ

▲ 格闘シーンで用いられたセスタスのジョイント配置。MBにはデフォーマ等の機能がないため、基本的には補助骨のみでリグの構築を行なっており、サブディビジョンサーフェス等の処理はレンダラとして機能しているMayaで行うかたちをとっている。本作の他キャラクターもこのジョイントの形式を流用しており、短期間で30体以上にのぼるセットアップを行うことができた

▲ 補助骨運用の一例。肘のローカル回転数値をMBのRelationConstraint機能で受け取り、補助骨の位置や角度を簡易的な四則演算で調整している。画像では肘先の張りや、上腕二頭筋や上腕三頭筋が調整されている

▲ 上記補助骨運用のリレーションの一例。ノードベースで数値をそれぞれ調整し、肘の数値を4つの補助骨に渡している

フェイシャルリグ&セットアップ

▲ セスタスのフェイシャル。主要キャラクターは、ジョイントとブレンドシェイプの両方が実装されており、それ以外のキャラはブレンドシェイプのみを用意。アニメではテンプレートな表情を超えて大袈裟な顔を用意する、というよりは決まった表情を決まったタイミングで行えることが重視されるため、基本的にはブレンドシェイプで運用、カメラから見て補正が必要な場合はジョイントでの微調整が行われた

▲ ジョイント制御は顔にコントローラーを付けるとアニメーション作業時に見辛いこともあり、フェイス操作用ボードの上にマーカーを置き、コントローラーとジョイントが連動するかたちで運用された。MB上でのフェイスコントローラーの生成と連動は指定したジョイントの名前が一致していれば自動で生成されるようになっている

▲ ブレンドシェイプ制御では顔の各部位ごとに細かく表情差分が用意されており、これらの組み合わせで様々な表現をすることができた

ゆれもののセットアップ

▲ 髪とハチマキは綺麗な揺れ感を出す必要があるため、従来のFK制御、またはMBのDamping(3D)という自動制御、2つの機能を活用した。FK制御では根本、中央、先端でコントロールできる部位を分け、揺れもの特有の動きをアニメーター側で大まかに制御することができる

▲ スカートの場合も髪などと基本は同じだが脚の稼働に合わせてスカートの骨も動く仕組みを追加している。屈伸等急な角度では対応できないことが多いため、そういった場合は手動での調整を行う運用をしている

ポンペイの街並みを再現した背景美術

背景のポンペイの街並みの制作にはCityEngineを使用。学術的に再現されたポンペイの街並みをプロジェクトに活用している。寄りのカットなどでは調整を行なっているが、俯瞰など遠景に関しては組んだプリセットのまま使用している。データがかなり重いため、広さなどをUnityで検証した上でMayaへ移行させているそうだ。

最終的にはイメージボードに合わせて色などをつくり込んでるが、ショットによってはPaint風処理などを撮影時にFlameで足している。スケジュールに合わせた臨機応変な対応をしつつ、制作を進行していったようだ。

CityEngineで生成されたポンペイ

▲CityEngineで作成されたポンペイ市街地全景モデルは、モデルデータが膨大すぎるのでUnityに読み込み、作品に必要な大通り周辺以外の不要な部分を削除してFBX形式で出力した

背景モデルの調整

▲【上】Flame、【下】Maya。Unityから出力したFBXデータをMayaで読み込みデータの最適化を行なったあと、イメージボードに合わせてマテリアル設定・ライティングを行った。アップ用にディテールが足らない部分はジオメトリー、テクスチャの改修を行う。CityEngineのモデルは自動生成のためは独特の構造をもっており建物ごとに分割されていないため、部分的な修正をするためのデータ整理に予想外の手間が必要となった

背景の質感設定

▲背景モデルにマテリアル設定とライト設定を済ませた状態のレンダリング画像。【左】ポンペイの有力者ファブリウス家のテラス、【右】ポンペイ闘技場全景と貴賓席

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3,000人が登場する群衆の表現

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