>   >  全11話のTVシリーズを短期間・高品質で制作するためにデジタル技法を駆使! TVアニメ『セスタス -The Roman Fighter-』
全11話のTVシリーズを短期間・高品質で制作するためにデジタル技法を駆使! TVアニメ『セスタス -The Roman Fighter-』

全11話のTVシリーズを短期間・高品質で制作するためにデジタル技法を駆使! TVアニメ『セスタス -The Roman Fighter-』

絶賛放映中のTVアニメ『セスタス -The Roman Fighter-』(以下、セスタス)。3DCGで制作された、拳闘(ボクシング)をメインテーマとした格闘アニメだ。制作プロダクションは「モーションキャプチャを中心に、日本一生産性に優れた3DCGアニメーションスタジオを作る」を理念に掲げる、LOGIC&MAGIC。同社はこれまでに元請け作品こそないものの、ベテランスタッフを多く抱え制作体制が充実している。実際、本作にかかった制作も約1年という短い期間であった。本稿ではその制作内容やTVアニメシリーズのための効率的なワークフローに迫っていく。

TEXT_坂本剛一(亡霊工房) / Gouichi Sakamo(Boureikoubou)
EDIT_沼倉有人(CGWORLD)/ Arihito Numakura、山田桃子 / Momoko Yamada

©技来静也, 白泉社/セスタス製作委員会

info.

『セスタス -The Roman Fighter-』
【放送情報】フジテレビ「+Ultra」ほかにて毎週水曜日24:55から放送中
【配信情報】FODにて最新話まで全話配信中(毎週水曜日24:55更新)、TVer/GYAOにて最新話 無料配信中(毎週水曜日25:25更新)※放送・配信日時は予告なく変更になる可能性がございます。

cestvs-anime.com/
©技来静也, 白泉社/セスタス製作委員会

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キャプチャデータを用いた格闘シーン

『セスタス』の制作が決定した後に、同社がまず着手したのはモーションキャプチャの検証だったという。キャプチャはLOGIC&MAGIC内のTUNEDiDスタジオで行われた。

はじめに制作スタッフによるキャプチャのテストが行われた。このテストでは、拳闘シーンの収録で実際よりも相手と距離を開けて、お互いに拳を当てないままリアクションをとっていくという形で行われた。この方法の場合、安全に行えるが、打撃位置やタイミングなどを後で修正する作業コストが高くなるため、本編の収録では実際の距離感で行うことになった。ただ、一部のテスト用モーションはティザームービー内で採用されており、検証の中で一定の成果を出せていたようだ。

▲ 社内スタッフでモーションキャプチャをしたデータを活用したティザーPV

本編のキャプチャでは、JAPAN ACTION ENTERPRISEが全面協力、アクションコーディネーターに六本木康弘氏、監修には元プロボクサーの亀海喜寛氏が参加した。テストとは異なり、キャプチャスーツの下にプロテクターを装着し、実際に打撃をヒットさせている。これによりアニメーション制作の負担も減った。

キャプチャはVICONで行われており、MotionBuilder(以下、MB)にてリアルタイムプレビューを実施。収録後のプレイバック再生では、コンテのレイアウトやパースペクティブビューなど、様々な角度で確認を行うことができた。

監修の亀海氏にもスーツを着てもらい、拳の避け方や動きの参考にキャプチャを行なったことで、モーションに説得力をもたせることができた。ただし、プロの動きは、予備動作などが少なく洗練され過ぎていたため、あくまで亀海氏のモーションは参考ということで、実際には絵映えするようアクターが誇張して演じた動きをキャプチャしていった。現実のボクシングとは異なるアニメ的な見映えについては、初期のころはスタッフ間で認識に差があったというが、制作を続けるうちに詰めていくことができたという。そのためアニメーター自身もスーツでキャプチャを行なったり、亀海氏の寸止めパンチをうけるなどして、イメージを膨らませていったそうだ。

キャプチャの現場には監督や演出、アニメーターなどが参加したため、その場で全ての要素を踏まえた収録を行うことができた。これにより、クオリティアップのためコンテから動きを変えたりと、柔軟性のある状況をつくり出すことができた。

カット制作においては、インハウスのツールが役に立ったようだ。インハウスツール「LM_ShotCreater」は、エピソードとカット番号を入力するとネーミングコンベンションに沿ったフォルダやファイル名が設定され、必要な背景やプロップ、キャラクターなどアセットが読み込まれる。その後LM_AnimLoaderを走らせると、MotionBuilderから出力されたカメラやキャラクターのアニメーションが自動でロードされる。データ保存時のテイクも管理され、カット番号やレンダーレイヤー名を継承した連番が所定の場所へ出力されるよう、最終レンダリング工程も自動化。このようなツールにより、各ショットのセッティングが効率化された。

モーションキャプチャ検証時の収録模様

▲ コンビネーションの検証映像

▲ 決めの一撃の収録検証映像

▲ アクション監修・亀海喜寛氏のディフェンス参考収録映像

モーション収録とリアルタイムプレビュー

▲ アクション収録の様子。非接触のまま収録したデータを後で修正する方法はコストがかかるとわかったため、収録時は元プロボクサー亀海喜寛氏監修のもと、JAEスタッフがスーツ内にプロテクターを入れ、実際に殴っている

▲ モーションキャプチャスタジオでは、ShougunとMotionBuilderをつなぎ、リアルタイムプレビューできるようになっている。監督や演者は、身体を動かしながら実際のキャラクターの体格での見映えを確認し、演技を決めていった

▲ 収録後、モーションを再生しながらの確認が行われる。収録中のリアルタイムプレビューでは、演者の全身が映る引きのカメラにしているが、モーション再生のプレビューの際は、実際のカメラをイメージした角度から確認したり、片方の演者を非表示にして主観的な絵で確認したりと様々な角度からプレビューが可能。長尺で段取りの多いアクションの場合、再生スピードを変えてプレビューもできるため、後の工程で「早回し」や「スロー」の可変処理を予定しているカットのイメージもつかみやすく、収録現場でモーションを決め込むことができる

富永竜二(モーションキャプチャースーパーバイザー)

  • 仲里奈穂(モーションキャプチャーアーティスト)



補助ツール「LM_ShotCreater」

  • <1>Maya作業はLM_ShotCreaterから始まる。エピソードとショットナンバーを選択するとネーミングコンベンションに沿ったフォルダやファイル名が設定されデータベースの情報を元にショットに必要な背景、プロップス、キャラクター、シェーダがシーンにリファレンスされる


<2>LM_ShotCreaterによって自動構築されたファーストシーン。カット担当者はカット番号を指定するだけで、必要なアセットが全て準備される

<3>次にLM_AnimLoaderを走らせることで、MBから出力されたカメラや各キャラクターのアニメーションが自動ロードされるので、ライティングレンダリングの作業へとスムーズに入ることができる

  • <4>ツール群は映像制作部 映像ユニットのテクニカルアーティストが作成したものと、技術開発部 テクニカルユニットが開発したものが共存している。ワークフローの根幹に関わるものや効率化のためのツールを技術開発部が担当し、素材分けやエフェクトの追加など絵に関わるものを映像制作部が担当した


フェイシャルアニメーション

▲ MB上で、「ブレンドシェイプ」と「フェイシャルリグ」の併用によって表情を細かく調整。試合中は常にキャラクターが動き続けるため、鋭い眼光や食いしばった表情などを一瞬でもしっかり印象に残るように制作した

アクションシーンのアニメーション

▲ プロのアクターによるモーションキャプチャの動きを壊さない程度にレイアウトに合わせてポーズを修正し、2コマ打ちでもアクションか省かれないようにタイミングを調整。キャプチャによる実際の人間の動きとアニメ的なタメツメが両立したかっこよさを追求した

原作のテイストを活かしたキャラクターづくり

キャラクターは、最初に主人公のセスタスから制作された。アニメのキャラデザインでは通常の2Dによるデザイン案をあえて起こさずに、原作のコマから全身、表情、腕などのパーツを抜き出すことから始められた。ある程度でき上がった段階で2Dでレタッチを行い、イメージを固めた上でモデリングの仕上げが行われた。

カラーリングに関しては、原作のイメージを参考にしつつも、原作ではカラー表現のないキャラクターもおり、検討を重ねつつ、アニメシリーズとしての色彩を決定していく方針が採られた。

チェックでは作画のキャラデザインのように静止画を用いていくつかの角度を確認。ターンテーブルは実際には使わない角度もあるので、静止画でチェックすることでよりイメージしやすいようにした。

作中に登場するキャラは、おおよそ30体。ダメージや包帯などのバリエーションを含めると90体以上になる。上半身が裸のキャラが多いため、素体をある程度共有できるようにした。また、トゥーンシェーダにより筋肉の鋭さを強調し、角ばった形状が意識されている。

スムーズを行なっても筋肉の隆起を損なわないように意識されており、キャプチャ時のプレビューでもイメージを共有しながらキャラクター制作を進めることができたそう。実線の表現には、Pencil+ 4 for Mayaが使用されている。

キャラクターモデルの変遷

▲ 頭部は初期ラフ案から主人公の少年感やあどけなさを意識し、丸みのある方向に修正調整が行われた

▲ 身体は引き締まった軽量級な印象に調整を行なっている

色設定

▲ セスタスの色設定資料

素体モデルの作成

▲ 左側が今作用に作成した素体、右側がスカルプトモデルをリトポしただけの状態。上から「ワイヤーフレーム表示」、「デフォルトシェーディング」、「トゥーンシェーディング(本番用は固定影などのTEX要素も含む)」。トゥーンシェーディングでライティングした際に筋肉の立体情報がなるべく明確にシャープに反映されるよう、隆起に沿った分割にしつつ立体を強調する形で調整が行われている。また、首から下の素体部分は形状UV含め全キャラ統一されている

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MotionBuilder主軸のワークフローでさらなる効率化を図る

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