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匠たちによる阿吽の呼吸〜OVA『武装神姫 Moon Angel』

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巨大神姫アテナのモデル変形

日本のアニメ作品では、ダイナミックな動きを表現するため、カメラに近い部分のパーツを大きく描いて表現するという独特なレイアウト手法が採用される場合がある。3DCG を使ったアニメーションでは、設定と同じ等身にモデリングしたキャラクターモデルを動かしアニメーションを作っていくため、単純にカメラのレンズを広角にしてパースを強調するだけでは、アニメ作品で使われるような外連味のあるレイアウトにはならない。

そこで、3DCG キャラクターのモデルは足や腕、頭部などの末端にあるパーツのスケールを自由に変形できるようセットアップすることが多い。本作でも多数のカットでこのパーツ変形によるダイナミックな映像が見受けられる。このようなパース表現は、ゲームや他の映像ではモデルの作り方がまったく異なるので、CG デザイナーに "アニメならではの絵心 " がないと、なかなか難しい表現なのだと井野元氏は語る。
「たとえ絵が描けなくても、どういうものが良くて、どういうものが悪いのかを判断できないと仕事をしていく上ではなかなか厳しいですね。アニメ的な絵心だったり、アニメ的な気持ちよさを感じるラインなど。うちのデザイナーたちにはそうした感性を養っていってもらいたいと考えています」。

3ds Maxカメラビュー 3ds Maxサイドビュー 3ds Maxトップビュー


クライマックスに登場する巨大神姫「アテナ」が後ろに倒れるカットの作業画面(上)とショットブレイク(下)。カメラビューを見ると、非常にダイナミックで格好良いレイアウトになっているが、トップビューやライト(サイド)ビューからみると、デフォーマで足を何倍にも伸ばしていることが判る。このような場合はカメラのレンズを広角にするのではなく、望遠に設定し、一部拡大したパーツにカメラを近づけることで、パース感を強調している

巨大神姫 巨大神姫 巨大神姫

巨大神姫の場合、スケールが大きいのでアップになることが多く、モデリングしただけでは、ディテールが足りない場合が多い。そのような場合は、別パーツとして、傷やしわをモデリングして配置している。手のシワなどは Sculptris でスカルプトした形状を、元のモデルに乗せている

線のレタッチ 線のレタッチ 線のレタッチ

オレンジではラインをレンダリングするために 3ds Max 上で Pencil+ を用いているが、線の太さが作画部分と 3DCG 部分で差が出てしまう場合があるとのこと。そのような場合は、作画のペイントデータを After Effects 上に配置し、比較しながら 3DCG 側の線の太さをレタッチで調整するそうだ


巨大神姫「アテナ」のディテール追加&ライン調整例(ショットブレイク)


同カットの完成形

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