3DCG 主導のカット制作
3DCG によるアニメーションが多いアクションパートの制作では、前述した通り、絵コンテを元にオレンジが 3DCG 上でレイアウトを作り、カッティング用のアニメーション(アニマティクス)を作成、そこからブラッシュアップしていくことで 3DCG チームが中心となって進められていった。これは、オレンジの 3DCG 制作スキルの高さがあってこそ可能なワークフローといえるだろう。
「アナログのワークフローを導入して 3DCG へデータを渡す際にワンクッション置くよりも、井野元氏の発想をそのまま採用し、それを増幅する形で僕が 2D と馴染ませていったほうがうまくいくだろうと」と森氏。オレンジが、このようにアニメの制作現場で信頼を得ている理由は、3DCG チームだけでもある程度、作画の領域にまで踏み込んだ画作りができるスタッフが揃っているからと言える。
実際にオレンジでは、基本的に各カットの担当デザイナーがアニメーションからコンポジットまでを受け持つ体制を敷いており、3DCG をレンダリングした後の 2D レタッチも各担当者が処理するため、作画技術を持ったスタッフが多いのだとか。
同社ではこのような技術を身につけるためスタッフ教育が徹底されており、アニメーターが作成したレイアウトを使い、2年程、訓練を行う場合もあるのだという。クオリティの高さは日々の努力のたまものなのだ。












本編冒頭の空中戦シークエンスの絵コンテ(※クリックで拡大)。これらの絵コンテ(森 賢氏が作成)を元に、まず、カッティング用のアニメーション(アニマティクス)を作成していく。演出的な要素以外はラフに描かれているので、オレンジでレイアウトを具体化していくことになる
絵コンテを元に作成された、冒頭シーンのアニマティクス(前半)。アニマティクスではあるものの、非常にクオリティの高いアニメーションになっている。被弾などのタイミングを決めるため、エフェクトも入っている。このレベルのアニマティクスを10日間強ぐらいのスケジュールで作成したそうだ
同じく、冒頭シーンのアニマティクス(後半)

背景は当初、全て 2D 美術で作成する予定だったが、ダイナミック感やスピード感を考慮して、工場を舞台にしたシーンでは 3DCG 背景に変更された。そのため大胆なカメラワークが可能になり、迫力あるカット展開が実現できたという。工場のモデルデータは、オレンジが過去に作成したストックを利用するなどして効率化が計られている

キャラクターのフォルムが複雑であるため、アクションのポーズ、シルエットが認識しやなるよう、部分的なパーツの変形など、見た目重視のレイアウト作成がされている。CAT によるスケール調整の他に、FFD モディファイアを使ったパーツのパース変形も多様されている

アニメ作品の CG キャラクターは、頭部(特に表情)を 2D 作画にした方が違和感がなく、制作も効率的だ。そのためカットによって、頭部を外してレンダリングしたり、作画した素材をコンポジットしやすいように素材を分けている
撮影処理を施した冒頭シークエンスの完成形(前半)。高速にカットが展開していく中、キャラクターやカメラがダイナミックに動いていく。「パースの誇張」や「動きのため」など、アニメの文法に沿って表現されているため、CG 特有のどこを見ていいのかわからない感じがなく、見ていて気持ちの良いアニメーションになっている
同じく、本編冒頭シークエンス完成形(後半)