>   >  3年の時を経て、あの怪作が再びスクリーンへ! さらに進化した『HK/変態仮面 アブノーマル・クライシス』のVFXにせまる(レスパスビジョン)
3年の時を経て、あの怪作が再びスクリーンへ! さらに進化した『HK/変態仮面 アブノーマル・クライシス』のVFXにせまる(レスパスビジョン)

3年の時を経て、あの怪作が再びスクリーンへ! さらに進化した『HK/変態仮面 アブノーマル・クライシス』のVFXにせまる(レスパスビジョン)

<2>実写素材と3DCGの絶妙な統一感

モダンとオーソドックスの巧みな使い分け

前作からひき続き、キャラクター表現のVFXにも果敢に挑んだ本作。その最たるものが、大金玉男(ムロツヨシ)のカニ型メカ姿と、新しい強大な敵として登場するダイナソンだ。どちらもボディに該当する部分は3DCG主体で表現されているのだが、実写とCGの見事な一体感(自然な馴染み)は要必見だ。「高精度のIBLを用意することができたのが大きいですね。そのほかにも、今回は須賀と呉に専任のコンポジターとして参加してもらえたことにも助けられました。CG側としては、追い込み(ルックのつくり込み)は、2人のコンポジターに安心して委ねることができるというのは非常にありがたかったです」(石澤氏)。逆に言えば、デジタルアーティスト側では、3Dエフェクトやキャラクターアニメーションなど、3DCGツールでしか成し得ない作業に専念できたということだろう。

大金のカニ型メカ形態では、大金を演じたムロツヨシの芝居に合わせて6本の脚がかなり細かく素早く動くのだが、それがまた絶妙なコミカルな表現に仕上がっている。「頭部はほとんど動かさないことを想定してテストを行なっていたのですが、本番では役者さんが激しく動かれていたのでリグを再構築する 必要がありました。実写撮影の際は、台車の上に寝そべった状態で演じていただき、その動きをオブジェクトトラッキングしています。そのデータを3ds Maxで構築したリグに流し込むことでほぼ自動でアニメーションを生成しています。ルックも動きもほぼ完璧にマッチさせることができました」(石澤氏。余談だが、なんと鈴木社長もトラッキング作業に参加していたそうだ。「正直、自分で作業した方が早かったりするんですが(笑)、その間に本来のクリエイティブワークに時間を費やせたので助かりました」(須賀氏)。

CGと実写の合成などシーンリニアならではの正確な画づくりが求められる表現はNUKEで、逆に2D処理が主体のセンスありきでフットワークの良さが優先の表現についてはAfter Effectsを用いるといった具合に、ツールを上手く使い分けることも心がけたという。同様にエフェクトについても、ベースとなる汎用素材はHoudiniでシミュレーションしたり、炎や破壊表現は定評あるFumeFXならびにthinkingParticlesも用いているが、変態仮面が敵の顔を自身の股間に押しつける際の衝撃波などは自前の撮影スタジオ(B-2 STUDIO)で撮影した実写素材も活用された。「CGにこだわらずに実写で撮れるものはいつも自分たちで撮ってしまうんです。昔ながらの特撮感が作風にも合っていたので、『HK2』独自のビジュアルに仕上がったと思います」(須賀氏)。

2−1.地道なトラッキングとロトスコープ

  • 映画『HK/変態仮面 アブノーマル・クライシス』VFXメイキング(レスパスビジョン)
  • 映画『HK/変態仮面 アブノーマル・クライシス』VFXメイキング(レスパスビジョン)

首から下がカニ型メカ状態の大金玉男の作業例。(左)boujouによる実写プレートのオブジェクトトラッキング。余談だが、台車の上に乗った状態で演技していたことがわかる/(右)トラッキングしたデータを3ds Max上のメカモデルに流し込む

  • 映画『HK/変態仮面 アブノーマル・クライシス』VFXメイキング(レスパスビジョン)
  • 映画『HK/変態仮面 アブノーマル・クライシス』VFXメイキング(レスパスビジョン)

ロトスコープの作業例。襟の部分は、CGのボディとの接地面であるのと同時に、色調整にも利用するため、最も丁寧にロトが作成された

  • 映画『HK/変態仮面 アブノーマル・クライシス』VFXメイキング(レスパスビジョン)

    空舞台。コンポジット作業時に調整できるように少し広めの画角で撮影してある

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    ロトスコープした頭部と影素材を合成

  • 映画『HK/変態仮面 アブノーマル・クライシス』VFXメイキング(レスパスビジョン)

    CGで作成したボディ(カニ型メカ)を合成

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    動きの中で、頭と足とそれぞれのパーツの見え方(どのパーツが前で、どれが後ろになるか)を調整

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    カメラ側にあるネオンの影響を受け過ぎている部分の色味を調整

  • 映画『HK/変態仮面 アブノーマル・クライシス』VFXメイキング(レスパスビジョン)

    襟をCGに合わせてカラコレ

  • 映画『HK/変態仮面 アブノーマル・クライシス』VFXメイキング(レスパスビジョン)

    足から顔への反射を加えたコンポジットしての最終形

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    Pablo Rioによるグレーディングとフィニッシング処理を施した完成形

映画『HK/変態仮面 アブノーマル・クライシス』VFXメイキング(レスパスビジョン)

NUKEXのCameraTrackerによるプロジェクションマッピングで空舞台を合成している。また、上述した頭部のロトスコープに際しては、間にPrecomノードを挟み、NUKEスクリプトを関連付けたまま2つのコンプに分けておくことで、ざっくりとしたロトの状態で動きの確認と微調整。その間に別のスタッフがロトを仕上げつつ、リードコンポジターは同時並行でCG素材のコンポジット作業を進めるといった具合に、極力時間のロスが生じないよう配慮された

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<3>格好良さと、あえて外した画づくりの絶妙なバランス

Profileプロフィール

レスパスビジョン/L’espace Vision

レスパスビジョン/L’espace Vision

左から、中口岳樹VFXディレクター、久保江陽介VFXパイプラインマネージャー、石澤智郁VFXプロデューサー、酒井伸太郎ポストプロダクションSV、中村滋利ポストプロダクションマネージャー、呉 岳リードコンポジター、須賀 努リードコンポジター。以上、レスパスビジョン

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