<2>お互いの熱意と信頼が生んだ円滑なプロジェクト進行
中山氏からの「お題」を受け、小森氏はまず「キャラクターをじっくり見せる」、「格闘表現」、「ショーアップ感」というキーワードを掘り下げていった。「まず、34キャラ全員を見せるのではなくメインキャラクターに加えてこれまでのOPで登場してこなかったキャラクターや新登場のキャラクターにフォーカスして、カプコンさんと相談させていただきながら、 登場人物の数を18キャラまで絞りました。そしてファッションショーのランウェイ、試合前のボクシングのリングの雰囲気やTVショー、舞台表現『フエルサ・ブルータ』などのショーアップされた舞台演出に関する資料を徹底的に収集して参考にし、今までにないキャラクター紹介の表現を追求したかったので、敢えて映像内でも実際の舞台演出とまったく同じ手法を使った表現しか使わないという方針を固め、完成イメージの食いちがいが生じないようイメージボードをつくり込んで中山さんに提案しました」(小森氏)。
大阪―東京と地理的な距離があったものの、資料や企画書をただ送りつけるのではなく小森氏を含め直接顔を合わせてイメージのすり合わせをしたことが、リテイクがほぼゼロというスムーズな制作進行のために重要だったと中山氏を含め全員が口を揃えて語る。「早い段階で全体のイメージをしっかりと共有し、ブレが生じる前に随時顔を合わせてコンセンサスを取ることで、演出にこだわりつつも無駄なく効率的な作業を実現できたと思います」(井上氏)。
そうして「リュウの精神修行」をストーリーの中心に据え、モノクロで描かれるリュウにとっての現実世界(ゲームの世界)と、カラーで描かれるリュウの精神修行の世界(我々にとっての現実世界)という設定の下つくり上げられた本OP。見どころのひとつとして、ゲーム内では見られない各キャラクターの日常的な一面やキャラクター同士の関係性が垣間見える演出が挙げられる。さらにリュウVSサガットのバトルシーンでは、筋肉の表現にこだわりたかったと話す小森氏が、OPのクライマックスとして演出・CG両方の面で力を注いだという(詳しいメイキングは後日紹介予定)。
完成映像の一部
中山氏が演出・ディレクションも込みで白組にOP制作を依頼した背景には、人間が無意識に感じ取る非常に人間的な要素が作用していた。「一番初めのオリエンテーションで白組の皆さんに実際にお会いしたときの感触を大切にしました。当初から、つくってもらう人の温度感や人柄を考慮した上で自分がディレクションに関わる度合いを決めようと考えていましたが、白組の皆さんはタイトルへの理解度が高くどんどんアイデアを提案して下さり熱意を感じたので、ここは映像のプロに任せて良好な信頼関係の上で作品を磨き上げていくのがベストだろうと判断して全面的にお願いすることにしました」(中山氏)。
今回の制作を通して「きっちりとしたイメージボードを用意して提案してもらったおかげで現場の様子が想像しやすかったですね。白組さんはイメージを伝えるテクニックに非常に長けていると実感しました」と中山氏は続けた。白組の「意図を掴んでしっかりとイメージを伝える」という熱意と中山氏の「映像のプロに任せよう」という信頼が全体的なコミュニケーションを円滑にし、結果的にファンの心を強く掴む映像表現へと昇華されていったようだ。
次回更新ではキャラクター制作とワークフロー構築について掘り下げていく。
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開発・販売:カプコン
リリース:発売中
価格:4,990円+税(パッケージ版)、4,620円+税(ダウンロード版)
プラットフォーム:PS4、PC(ダウンロード版のみ)
ジャンル:対戦格闘アクション
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