>   >  『スカイラインー征服ー』の続編はまさかの特撮巨編! 『スカイラインー奪還ー』リアム・オドネル監督インタビュー
『スカイラインー征服ー』の続編はまさかの特撮巨編! 『スカイラインー奪還ー』リアム・オドネル監督インタビュー

『スカイラインー征服ー』の続編はまさかの特撮巨編! 『スカイラインー奪還ー』リアム・オドネル監督インタビュー

<2>『スカイラインー奪還ー』リアム・オドネル監督インタビュー

「いいTシャツだねー!」

リアム・オドネル監督は、開口一番筆者の着ているTシャツに喜んだ。

イラストのリンカーン大統領が「Be Excellent to each oter」と言っているプリント。普通の人には訳がわからないが、知る人ぞ知るキアヌ・リーブス主演映画『ビルとテッドの大冒険(原題:Bill & Ted's Excellent Adventure)』の有名なセリフだ。

「この映画知ってますか?」

「もちろんだよ!大好きだ」

「パート3が製作されるニュースは?」

「知ってるさ、とても楽しみだよ」

......いきなりSF映画マニアであることが判明したイケメン監督は握手しながら笑顔で応えた。

SF映画マニアのイケメン、リアム・オドネル監督

ーー『スカイラインー奪還ー』楽しく拝見しました。エキサイティングな「特撮アクション」映画でしたね。「特撮アクション」とは、スーツアクションを多用する日本映画のいちジャンルで、アメリカでは『パワーレンジャー』が有名ですよね。

リアム・オドネル監督(以下、オドネル監督):『パワーレンジャー』は子供の頃から好きで観ていたよ。今回『スカイラインー奪還ー』をつくるときもKAIJYU(怪獣)バトルを想定していたんだ。そんな中、イコとヤヤンがキャスティングされてマーシャルアーツの要素が加わり、怪獣に加えてマーシャルアーツを繰り広げるシーンも撮影した。その現場で、「ああボクは今、『パワーレンジャー』をつくっているんだ!」と感動したよ。

格闘術シラット対エイリアンの血湧き肉躍るシーン。(左)スアを演じたイコ・ウワイス/(右)チーフを演じたヤヤン・ルヒアン。ふたりが『ザ・レイド』(2011)における見事な格闘アクションで一躍時の人になったのは周知の通り
© 2016 DON'T LOOK UP SINGAPORE, PTE. LTD


  • リアム・オドネル/Liam O'donnell
    1982年生まれ。2005年からゲータレード、コカコーラ等のCM、アッシャーや50セントのミュージック・ビデオの脚本でストラウス兄弟と仕事を始め、『AVP2 エイリアンvs.プレデター』(2007)では、クリエイティブ・コンサルタントとして参加した。『スカイラインー征服ー』(2010)には製作・脚本として参加をしており、本作が監督デビューとなる。

    @LiamODin


ーーエイリアンの登場するシーンで、エイリアンをスーツにするか全てCGにするかの使い分けはどのように決めたんですか?

オドネル監督:クライマックスの寺院のシーンを最初に撮影したんだけど、その時点ではプラクティカル・スーツが完成していなかったんだ。だから、あのシーンに登場するエイリアンは全てCG。一方、スタジオで撮影したエイリアンはプラクティカル・スーツを使っている。

ーースーツで演じたエイリアンは、最終的にどの部分をCGに置き換えたんですか?

オドネル監督:(逆関節の)足の部分をCGに置き換えて、目にライトを足したくらいだよ。エイリアン「パイロット」は、スーツで演技するために前回とデザインを変えているんだ。目も大きくなって、プラクティカル・スーツの目にはLEDライトが仕込んである。それをトラッキングしたので、特別なトラッキングマーカーは必要なかった。足の部分はグリーンのパンツを履いて演技をしてもらった。その部分をマーカーにして消していったんだけど、グリーンを完全に消すのが難しかったので、次回は黒いパンツにしようと思っている。

(左)敵のエイリアン「シェパード」のプラクティカルスーツ・ヘッド/(右)腕に装着するエイリアンの武器

ーーあなたの経歴を見ると、『AVP2』と『アイアンマン2』にVFX制作で参加していますね。

オドネル監督:『AVP2』では実際にVFXを担当したわけじゃなく、プリビズ・アーティストと組んでストーリーデザインを担当したんだ。『アイアンマン2』でも同じ。マーベルからアイアンマンの失敗作のアイデアが求められたので、ハイドラックスが自分たちで撮影してシーンをつくり上げた。それをマーベルに送ったところ、完成度に驚いてそのまま映画に使われたよ(※2

※2:エンドロールにもシーケンス・バイでクレジットされている

ーー今回はハイドラックス以外のVFXスタジオも参加していますね

オドネル監督:マザーシップ内部のシーンはグリーンスクリーンを多用しているので、とてもコンポジット作業に時間がかかる。そこで、ハイドラックスで指針となるマスターショットを作成し、それを参考にしてもらってコンポジットワークを振り分けたんだ。

ーー巨大なバイオロボット「タンカー」と「アルファ」の戦闘シーンは日本の特撮ファンにはとてもエキサイティングでした。あのシーンはフルCGですか?

オドネル監督:うん、全てCGで作っている。ただ、CGの動きの参考のためにマーシャルアーティストを呼んでアクションをしてもらったんだ。バックドロップをしているマーシャルアーティストを巨大化して寺院の風景に合成し、それを基にCGアニメーションを作成したんだけど、あれはちょっと笑える映像だった(笑)。協力してくれたのは、グイ・ダシルバ/Gui DaSilvaという『シビルウォー/キャプテンアメリカ』(2016)でブラックパンサーのスタントをやったスタントマンだよ。

今回は、特撮ファン必見の巨大バイオロボット同士の戦闘シーンも描かれる
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ーー本作のVFX的な見所を教えていただけますか?

オドネル監督:ボクらのつくるVFXは常に進化しているんだけど、今作ではまず最初に、前作とはちがって侵略される様を地上側から見せている。次に第二幕では前作でヒントだけを見せたマザーシップの内部を全て見せているし、新たなエイリアンや、タンカーのような巨大クリーチャーも登場する。そして最後のシーンでは続きを匂わせるような別の世界観を描き出しているんだ。

ーー『スカイラインー奪還ー』のストーリーテーマは「戦い」だと思っています。登場人物がそれぞれの目的のために戦いを繰り広げますよね。最初の方のシーンで盲目の浮浪者サージの持つ紙に書かれた「Who Fight for us (われわれのために誰が戦う?)」の文字がそのことを示唆しています。

オドネル監督:ワオ! それに気づいてくれたのはキミが初めてだよ。そうなんだ。まさに「戦う」ということがテーマになっていて、(主人公の)マーク・コーリーが「Old Grory Corley」(※3)と呼ばれているのも、アメリカの失われつつある栄光を取り戻すために戦う、アメリカが過去に犯した罪をつぐなうために戦う、といった意味も込められているんだ。もちろん家族のため、愛のために戦う、というテーマもある。ドンピシャに理解してくれて嬉しいよ。

※3:直訳すると「過去の栄光のコーリー」。字幕では「勇ましいマーク(コーリー)」

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ーーベトナム帰還兵であるサージもアメリカのために「戦った人」ですよね。

オドネル監督:彼の頭の傷も失った視力もベトナム戦争でのものなんだ。彼が現地の言葉をしゃべれるという設定も考えたんだけど不自然だったのでカットした。それと、反政府組織に追われたときにマークたちを逃がすために自分が犠牲になるという行為にも、彼の過去がつながっているんだ。

ーーエイリアンの侵略により、サージは再び「戦う人」になりますよね。

オドネル監督:サージが赤ちゃんを守るために、エイリアンに「かかってこい クズ」と言うシーンがあるんだけど、あのセリフはサージを演じたアントニオ・ファーガス(『刑事スタスキー&ハッチ』『炎の少女チャーリー』)の即興なんだ。そして、向かい合っているエイリアンの中にはボクが入っていた(笑)。面と向かってそういうセリフを言われるのは実に面白い体験だったよ。彼はボクに「もっと強く殴れよ、もっとだ」とダメ出ししていた。

ーー日本ではそうでもないんですけど、アメリカでは、人が宙に吸い上げられていく描写はプロテスタントの「携挙(けいきょ)/Rapture」を連想する人が多いと思います。そのことについて制作時に気をつけたことや公開後のエピソードはありますか?

オドネル監督:公開後にホームページで「まるでRaptureのようだ」「ハリウッドがRaptureに備えるように暗示している」というような意見も出たし、実際、映画の中でもマンションの住人のウォルトが「Raptureのようじゃないか」と言ったんだけど、聖書と関連づけようとはまったく考えていない。宇宙人にアブダクトされる(連れ去られる)シーンというのはほかの映画でもそうなんだけど、どれも神話に基づいているし、現実にも基づいている。そのコンビネーションだと思うんだ。なので特に気をつけたことはないよ。

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ーー今作ではどうしてもマリーナ(※4)を出したかったんですね。

オドネル監督:その通り(笑)。前作で見せられなかった場所だからね。実はマークたちはマリーナにクルマで行って、そこに巨大バイオロボット「アルファ」が飛来してくるというシーンにしたかったんだけど、予算の関係でカットしたんだ。それと、周りに木があるという風に書いていたんだけど、グレッグとコリン(ストラウス兄弟)から「この木は消さないか」と言われてあきらめたよ。予算の関係でね(笑)。でも前作で悔いの残った部分は全て本作に入れることができたよ。

※4:マリーナのロケーション撮影に関しては、前頁の『スカイラインー征服ー』解説を参照

ーーところで、エンドクレッジットの音楽にもあなたの名前を見つけましたよ。

オドネル監督:冒頭に流れるロックに合わせて最後の音楽もつくりたかったんだけど、予算が少なかったので音楽を担当したラム・カタバクシュ/Ram Khatabakhshと一緒に曲をつくることになって、ボクが作詞して仮に歌った。その後、知り合いのミュージシャンを集めて録音したとき、コーラスの女性シンガーにメインボーカルもお願いしようと思ってたんだけど、彼女はボクがメインに歌うべきだ、と言ったんだ。それで仕方なく歌ったよ。でも出来上がりを聞いてもらばわかるけどボクの声はミックスで思い切り下げてある。とは言え、脚本もできたし、監督もできたし、エイリアンのスーツに入ることもできたし、最後はロックスターにもなれて本当に良い体験だったよ(笑)

ーーすごいですね!

オドネル監督:歌を歌ったことなんてすっかり忘れてたよ、恥ずかしいな(笑)



ーー最後に、特撮王国の日本で公開されることに関してコメントをお願いします。

オドネル監督:日本のジャンル映画やアニメーションに影響を受けたので、本作はそういった作品に対するラブレターでもあるんだ。いろんなジャンルがミックスされているのを楽しんでもらいたいし、劇場の大画面で観ることを想定してつくっているので、ぜひ劇場に足を運んでほしい。日本で公開できるのを本当に嬉しく思っているよ。

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info.

  • 『スカイラインー奪還ー』
    新宿バルト9他にて好評上映中
    skyline-dakkan.jp

    製作:グレッグ・ストラウス&コリン・ストラウス
    監督・脚本:リアム・オドネル
    出演:フランク・グリロ、ボヤナ・ノヴァコヴィッチ、ジョニー・ウエストン、イコ・ウワイス ヤヤン・ルヒアン
    リードVFXスタジオ:ハイドラックス
    配給:REGENTS/ハピネット
    原題:Beyond Skyline/2017年/シネスコ/ドルビーデジタル 5.1ch/106分
    © 2016 DON'T LOOK UP SINGAPORE, PTE. LTD

Profileプロフィール

リアム・オドネル/Liam O'donnell

リアム・オドネル/Liam O'donnell

1982年生まれ。2005年からゲータレード、コカコーラ等のCM、アッシャーや50セントのミュージック・ビデオの脚本でストラウス兄弟と仕事を始め、『AVP2 エイリアンvs.プレデター』(2007)では、クリエイティブ・コンサルタントとして参加した。『スカイライン -征服-』(2010)には製作・脚本として参加をしており、本作が監督デビューとなる。

@LiamODin

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