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『スカイラインー征服ー』の続編はまさかの特撮巨編! 『スカイラインー奪還ー』リアム・オドネル監督インタビュー

『スカイラインー征服ー』の続編はまさかの特撮巨編! 『スカイラインー奪還ー』リアム・オドネル監督インタビュー

日本では2011年に公開された『スカイラインー征服ー』は、突如飛来したエイリアンに人類が征服されるまでの3日間を描いた衝撃作だ。今回公開される『スカイラインー奪還ー』はその続編であるが、物語は前作と同じ時刻からスタートし、別の場所での出来事を追いながら1作目のエンディングと合流して大バトルへと展開していく。まずはこの両作について解説し、続いて来日したリアム・オドネル監督へのインタビューを紹介する。

TEXT_石坂アツシ / Atsushi Ishizaka
EDIT_沼倉有人 / Arihito Numakura(CGWORLD)
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota



映画『スカイライン−奪還−』予告編
新宿バルト9他にて好評上映中!
skyline-dakkan.jp
© 2016 DON'T LOOK UP SINGAPORE, PTE. LTD


<1>『スカイラインー奪還ー』はここを観ろ!

『スカイラインー奪還ー』は、前作『スカイラインー征服ー』を観ていなくても十分楽しめる内容になっている。しかし、両作とも同じつくり手によるインディペンデント映画であり、どちらもSF映画への情熱と、少ない予算でいかに観客を楽しませるかのアイデアが詰め込まれている。
つまり、新しいSF映画を追い求めるクリエイターストーリーとしての側面もあり、そういった情報もおさえておくと『スカイラインー奪還ー』をよりいっそう楽しめるだろう。そこで、まずはこの2作の魅力をストーリーとプロダクションの両面から紹介しよう。

VFXスタジオHydraulxが製作した意欲作『スカイラインー征服ー』

2010年に公開された『スカイラインー征服ー』は、突如現れたエイリアンによる地球侵略の様子をロサンゼルスのマンションにいる若者たちを通して見せた作品で、監督はグレッグとコリンのストラウス兄弟(Greg Strause, Colin Strause<BROTHER STRAUSE>)。
彼らはVFXアーティストでもあり、ふたりが設立したVFXスタジオ「ハイドラックス/Hydraulx」は、『アバター』『2012』『カリフォルニア・ダウン』『ランペイジ』といった多数のVFX大作に参加している。

映画『スカイライン-奪還-』製作のハイドラックス:デモリール

『スカイラインー征服ー』では、エイリアンの巨大な「マザーシップ」、空を飛ぶイカのような「ハイドラ」、複数の触手を持った「ドローン」、巨大なゴリラ型のバイオロボット「タンカー」、それを操縦する人型の「パイロット」、といった様々なクリーチャーがハイドラックスによってつくり出され、いずれも強烈な青い光を放って独特の雰囲気を醸し出している。その光を見た人間は、瞳が白濁して回りの血管が黒く浮き出、フラフラと光に導かれてその中に吸い込まれていく。

ショッキングなシーンだが、中でも大量の人間が空に舞い上がってマザーシップに吸い込まれていくのは終末の様相だ。これらのVFXももちろんハイドラックスによるもので、これほど大量のVFXを1,000万米ドルというハリウッド映画としてはかなりの低予算でつくり上げるためには多くのアイデアが必要となった(※1)。

※1:製作費1,000万米ドルに対して、全世界興収は約6,700万米ドルに達した(Box Office Mojo調べ)

Skyline - Theatrical Trailer

まずはロケーション。この作品のほとんどのシーンがひとつのマンションで繰り広げられるが、その場所は監督であるグレッグ・ストラウスの自宅なので、ロケーションの費用を抑えることができたという。マンションで繰り広げられるストーリーはコストダウンから生まれたのではなく、この作品の着想時からあったものであり、共同脚本を務め、最新作『スカイラインー奪還ー』では監督を務めたリアム・オドネルは、グレッグのコンドミニアムの窓から外を眺めたときに「ここは世界の終わりを見守るのに最高の場所だ」と思ったという。

人類が征服されていく様を描いた映画は多々あるが、マンションの中だけで完結させたのは、この作品が初めてではないだろうか。そして、他のマンションの住人や軍による攻撃の様子を窓や屋上から見るというのが妙にリアルで、おそらくほとんどの人々がこうして征服されていくのだろうな、と納得してしまう。つまりマンションが世界の縮図になっていて、実際のロケーション以上の広がりを感じるのだ。

『スカイラインー奪還ー』より。突如現れたエイリアンシップの放つ青い光に人類はなすすべもなく吸い込まれていく
© 2016 DON'T LOOK UP SINGAPORE, PTE. LTD


脚本とコストパフォーマンスを両立させた好例と言えるが、実はマンション以外でのロケーションも検討したそうだ。そのひとつが登場人物たちのセリフにも登場するマリーナで、マンションのあるマリナ・デル・レイは世界最大のマリーナでもあるので、できればそこで撮影をしたかったが予算が合わなくて断念したという。それがよほど残念だったのか、『スカイラインー奪還ー』では晴れてマリーナが登場する。この逸話を知っていると思わず微笑んでしまうシーンだ。ほかにも、軍のヘリコプターはCGで、降りてくる兵士はグリーンバック撮影。登場するフェラーリやベンツなどの高級車は全て私物。撮影に使用したデジタルシネマカメラRED ONEはハイドラックス所有のもの、といった具合にレンタルコストの大幅なダウンを図り、その分VFXシーンをふんだんに見せている。

この作品の見所もそのものずばりVFXシーンで、1,000を超えるVFXカットの中には当時としては珍しかった晴天下ではっきり見せる巨大宇宙船やクリーチャーの表現に挑戦して、ハイドラックスの技術力を遺憾なく発揮している。これはVFXスタジオであるハイドラックス製作の映画なので当然と言えば当然だが、決して技術誇示に終わらず、興行的成功を収められるクオリティの映画に仕上げたのは見事である。

作品全体にストーリーらしいストーリーはなく、人類が征服されていくディテールにほぼ終始している。が、クライマックスでそれが急転。衝撃の展開となり、それはエンドロールまで続く。この展開は賛否を呼んだそうだが、個人的にはつくり手の遊び心とSFアクションへの愛情を感じて楽しむことができた。そしてその愛情と遊び心はより強烈になって続編の『スカイラインー奪還ー』へと受け継がれることになる。

7年の時を経て、満を持して公開された『スカイラインー奪還ー』

前作を監督したストラウス兄弟は今回製作に回り、共同脚本を担当したリアム・オドネルが今回は脚本と監督を担当している。ストラウス兄弟と同様、オドネル監督もVFXに精通しており、『AVP2 エイリアンvs.プレデター』(2007)『アイアンマン2』(2010)といった作品に携わっている。

物語は、前作とほぼ同じ時刻、同じロサンゼルスで始まる。主人公は刑事のマーク。演じているのは『パージ』シリーズのフランク・グリロ。脚本と監督のリアム・オドネルは以前から彼に注目しており、本作の脚本の執筆時も彼を想定して書いていたそうである。
マークは地下鉄でエイリアンの襲撃に遭い、息子のトレント(ジョニー・ウエストン)、地下鉄の女性運転手オードリー(ボヤナ・ノヴァコヴィッチ)、盲目の浮浪者サージ(アントニオ・ファーガス)らと共にエイリアンから逃げ回るが、マリーナでマザーシップに囚われる。
ここまでで、警察署、地下鉄、マリーナ、と前回とは比べものにならない豊富なロケーションで撮影されており、2つの作品で同じ物語の時間を共有していながら、それを体験する場所が全く異なる、という対比が楽しい。例えば前作でマザーシップが軍の攻撃を受けて墜落するシーンがあるが、2つの作品で墜落の瞬間を見るシチュエーションがまったく異なる。前作では高層マンションの一室からマザーシップが墜落していく光景を見るが、今作では地上から見上げていたマザーシップがこちらに墜落してくる光景になる。2つの作品を通して人類が征服される1シーンを多角的に見ることができるのだ。

© 2016 DON'T LOOK UP SINGAPORE, PTE. LTD

ストーリーに関しても、マークとトレントのギクシャクした親子関係、サージの持つ過去などキャラクターに肉付けがされており、物語の時間軸が前作のクライマックスと同じ部分に差し掛かったところで2つの物語が合流し、前作で残された疑問が解消していく。なすすべもなくマザーシップに吸い込まれた前作の主人公たちと違い、刑事のマークは愛する息子のために必死に立ち向かう。そう。前作が「征服」だったのに対し、今作は「奪還」であり「バトル」なのだ。そして、そのバトルは思いもよらない方向へと加速していく。

マークらの抵抗により墜落するマザーシップ。墜ちた場所は内戦の続くラオス。そこでマークらは反政府組織のメンバーたちと出会う。登場するのは、インドネシア映画『ザ・レイド』(2011)で格闘術シラットによる壮絶なアクションシーンを見せたイコ・ウワイスとヤヤン・ルヒアンのコンビ。アクション映画ファンなら飛び上がって喜ぶふたりだ。
彼らはマークと共にマザーシップから出てくる人型エイリアン「パイロット」に立ち向かう。予想だにしなかったエイリアンとの格闘戦。さらに、巨大バイオロボットの「タンカー」も登場し、さながら巨大ロボットの戦闘シーンが繰り広げられる。

ここで日本人なら思わず叫んでしまうだろう。

「こ、これは! 特撮映画じゃないか!!」

そうなのだ。CGによるVFXを駆使した前作の続編は、VFXと格闘をミックスしたガチンコ勝負の特撮映画だったのだ。何という遊び心。これぞインディペンデント映画。劇中ずっと気になっていた「パイロット」のデザイン変更もこれで納得。

前作では手足が長く目が小さい『ザ・フライ』に登場するハエ男のような姿だったのに対して、今回は筋骨隆々の格闘体型。クリーチャー・エフェクトを担当したアラン・ホルト率いるチームが創り上げたのは、日本特撮の「怪人」さながらのエイリアンだ。そして、なんとこれらはCGだけでなくスーツも多用して撮影されている。特撮ファンには何とも嬉しい話である。

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「プラクティカル・エフェクト」という言葉は似合わない。これは「着ぐるみ」による「特撮アクション」なのだ。ちなみに「パイロット」の足は逆関節なので、この部分と目の光だけはCGとの合成である。シーンによってはスーツの制作が間に合わず、レオタードを着たスタントマンとのアクションを撮影し、スタントマンをそっくりCGのエイリアンに置き換えている。
面白いのはマザーシップ内部のシーンで、巨大なマザーシップ内部のほとんどがCGで表現され、その中で動き、時にはアクションを行う「パイロット」と敵のエイリアン「シェパード」は、スーツを着てグリーンバックで撮影している。

(左)エイリアン「パイロット」のプラクティカルスーツ・ヘッド/(右)エイリアンのスーツ・ヘッドには、トラッキング作業のガイドにもなるLEDライトが仕込まれている(筆者撮影)

「スーツをカメラに収めるのが好きなんだ」というオドネル監督だけあって、VFXスタジオの製作でありながらCGだけに頼らずに新たなSFアクションに挑戦している。さらに、「異星人の身体とテクノロジーの境界線は曖昧だ」と語り、エイリアンがテクノロジーを自らの身体に採り入れながら進化しているというコンセプトで、腕に装着する武器も用意している。
主人公・LA市警の刑事マークは、その武器を逆に利用して「パイロット」との格闘戦に挑む。ヒーローがアタッチメントを身に付けてバージョンアップ! ああ、どこまでも特撮の世界だ。
さらなる特撮の話は、後述するインタビューでうかがっており、そこでは登場人物やクリーチャー名が多く出てくるので、ここまでの内容に登場する固有名詞を覚えるか参照していただきたい。

エイリアンに立ち向かうヒーローたちの勇姿は、某アメコミヒーローのクロスオーバー作品へのオマージュか!?
© 2016 DON'T LOOK UP SINGAPORE, PTE. LTD


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<2>『スカイラインー奪還ー』リアム・オドネル監督インタビュー

Profileプロフィール

リアム・オドネル/Liam O'donnell

リアム・オドネル/Liam O'donnell

1982年生まれ。2005年からゲータレード、コカコーラ等のCM、アッシャーや50セントのミュージック・ビデオの脚本でストラウス兄弟と仕事を始め、『AVP2 エイリアンvs.プレデター』(2007)では、クリエイティブ・コンサルタントとして参加した。『スカイライン -征服-』(2010)には製作・脚本として参加をしており、本作が監督デビューとなる。

@LiamODin

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