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独創的な世界観の風景画で人気のイラストレーター・みっちぇが伝える、

独創的な世界観の風景画で人気のイラストレーター・みっちぇが伝える、"挫折"から自分らしさを武器にしたきっかけとその構築法

<2>自分の世界観を構築するためには、迷わず、数をこなし、それを継続すること

――絵によってもちろん様々かとは思いますが、構想からフィニッシュまではどのくらいのスピードでしょうか?

みっちぇ:長くかかるものだと1週間くらい。中には1ヶ月以上かけたものもありますが、皆さんに公開しているものですと、半日から1日くらいで描いたものがほとんどですね。

――それはすごく速いと思うのですが、それが可能なのはなぜでしょうか?

みっちぇ:迷わないからだと思います。以前、キャラクターと合わせて描いていたときをふり返ると、キャラクターはすごく迷っていたんです。線画から塗りまで2~3週間かけ、上手く描けたと思ってもやっぱりダメだと思って直すことのくり返しでした。ただ、そこから背景を描く段階に入ると色も構図も迷うことなく、半日くらいで描いていました。背景ではダメだと思ったらあっさり切り捨てることができたし、描き直しも躊躇なくできました。そのときの名残なのかもしれないですね。今も風景を描くときはOKかNGかの選択はハッキリしています。

――迷わずにいけるというのは、描き出す前に頭の中で構築しているものがあるからでしょうか?

みっちぇ:好き嫌いはハッキリしていると思います。この構図はピンとこないなと感じたらすぐに変えます。それはキャラクターを描いていたときよりも速いですね。

――自分の直感で好き嫌いを判断すると、パターン化することもあるかと思いますが、そうした中でこの多様性はどのように出していきましたか?

みっちぇ:数を描くことですね。仕事の場合は3~5案くらい描くことになります。その際は手の速さを活かして、1から描く気持ちで3回5回とくり返します。登山でたとえると、Aコースに入ってから分岐させるのではなく、入口から異なるルートを3~5本つくるような感覚ですね。ルートごとに自分を上手く切り替え、別の好きなものを見つけて描いていく。


――先ほど、商業的な意味での転換期は伺いましたが、アーティストとしての個性が固まった感覚を得たのはどんなタイミングでしたか?

みっちぇ:毎日描いていて、ペースも他の方と比べて速い方だとは思いますが、「ここだ」というタイミングは自分ではわかりません。たとえるならば、家族に小さい子どもがいて、自分としては日々の成長を見ているけれども、久々に親戚のおじさんが来ると「大きくなったねぇ」と言われるような感覚というか(笑)。自分としては、くり返し描きたいものや使いたい色で描いているだけなのに、ある日、SNSで急に評価されたりするんです。で、以前の絵を見てもらっても、同じように「いいね」と言ってもらえるので、何がきっかけかはわかりません(笑)。

――過去の絵でいいますと、コミティア125で自薦画集「循環」を発売されましたが、自薦として収録の基準は何でしたか?

みっちぇ:自分が好きな絵を選びました。他人からの評価ではなく、純粋に自分が好きで人に見てほしい絵です。


自薦画集「循環」の表紙を飾った作品「循環の行方」

――その中にはまだ経験の浅い頃の絵も含まれていますか。

みっちぇ:もちろんです。一番古いのは2014年の作品で、そこには先ほどのキャラクターから風景画にシフトした最初の1枚も入っています。

――現在と比べて技術が追いついていないかもしれないけれども見せたかった絵。

みっちぇ:はい。自分としては良い絵だと思っているので(笑)。今も毎回、自信をもって公開しています。そこで見た方の評価はそれぞれだとは思いますが、そのときの世間と自分のズレも含めて楽しんでいます。画集を出したときは自分で想像していたよりも良い反響をいただきました。イベントに出てものを売るのが初めてだったので不安はあったのですが、多くの方に来ていただいて通販でも注文いただき、さらに感想までいただけてとても嬉しい経験ができました。


――現在、お仕事として依頼される絵にはどんなものがありますか?

みっちぇ:MVのコンセプトアートや、CDのカバーアートを請けています。また、数は少ないですが、絵コンテのお仕事やアニメの背景の絵を描かせていただくこともあります。決め打ちで「こういう絵を」というよりも、「こういうイメージで良いかたちにしてください」と言われることが多いですね。絵コンテだけできているとか、テキストからビジュアルを膨らませてとか。自分としてもその方が楽しいですし、それを得意としています。

――仕事として請けてみたいことは何かありますか?

みっちぇ:現在はいただいている仕事が多いのですが、自分から発信することをしてみたいと思います。簡単なことではありませんが、最近はこの個性を認めていただけているので、そこから仕事に繋げていけたらと思っています。


――そして「CGWORLD Online Tutorials」では、みっちぇさんのイラストレーション講座がスタートします。どのような内容になりますか?

みっちぇ:チュートリアルでは白紙の前の段階、頭の中の整理や準備運動からスタートし、ラフを描くときに考えることから完成までのフローチャートをつくっていきます。どの段階でどの素材をピックアップし、各フェーズでどうつくり、ひとつの絵としてどう構築していくかという内容です。見ていて楽しいチュートリアルになるよう解説しました。

――自分のやり方を人に説明するという経験はいかがでしたか?

みっちぇ:普段いかに何も考えずに描いているかがわかりました(笑)。説明するにも言葉がなかなか出てこなくて。いつもならそこを飛ばして手が動き出すので(笑)。他にもチュートリアルやハウツー動画をつくられている方はすごいなと思いました。


――改めて説明することでご自分の思考プロセスを見つめ直すきっかけにもなったのでは?

みっちぇ:そうですね。自分が絵を描く際にどこに頭を使っているのかは普段意識しないのですが、自分がどこでどう考えて悩んでいるのか、文章や言葉にすると改めて気づかされましたね。光と影に実はけっこうこだわっていたんだとか、自分自身も勉強になりました。

――ではチュートリアルを観たいと考えている方へメッセージをいただけますか?

みっちぇ:これをお読みになっていて、これからイラストレーターを目指している方へはまず、作品をつくる時間をたっぷり取ってほしいと伝えたいです。やはり数や量をこなさないと前には進まないので、時間をかけてその中で目一杯、がむしゃらにつくってほしいと思います。自分は1日、8時間10時間かけることができたので、それを今まで継続することができました。全員が全員、その時間が取れるとは限りませんが、1日1時間でも30分でも生活の中で自然に作品をつくることを継続してほしいなと思います。そのとき、このチュートリアルでのノウハウや作品づくりの姿勢が何かヒントになってくれれば幸いです。



イラスト制作の着想から構想までの思考法と具体的なアプローチ方法
(CGWORLD Online Tutorials)の
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Profileプロフィール

みっちぇ(亡霊工房)

みっちぇ(亡霊工房)

2007年から独学で絵を描き始める。2010年よりフリーランスで絵の仕事を始め、欧米でのコンペディションや有償案件を経て2KGamesやNickelodeonより会社推薦状を獲得。2013年より風景画に専念、2017年に東京都にて個展開催。2018年より合同会社亡霊工房に所属
miche-illustrator.jimdo.com/
twitter.com/mittye97

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