<2>新たな仲間、新たなテクノロジー、そこから生まれる新たな表現
CGW:卒業制作の「『夢が覚めるまで』予告編」が話題になりましたが、あれがアニメーションの初作品だったのでしょうか。
【自主制作】「劇場版アニメ『夢が覚めるまで』予告編」
loundraw:はい、大学の卒業制作としてつくりました。2017年2月に発表する必要があったのですが、前年の10月中旬からまずはアニメのつくり方を調べることからのスタートでした。
CGW:これまた驚きです! それ以前はアニメーションの勉強などはされていなかったのですか?
loundraw:小学生のときメモ帳にパラパラ漫画を描いたりはしていましたが、実際のアニメの仕組みなどはまったくわからない状態でした。「この調子では卒業できないぞ」と、さすがに思いましたけどね(苦笑)。なんとか期日に間に合わせることができましたが......。
CGW:どうしてアニメをつくろうと?
loundraw:語弊があるかもしれませんが、イラストに対して、表現的にも活動の範囲としても、自分に限界を感じていたんです。一般的にイラストレーションは、広告、書籍、CDなどの中心となるコンテンツに紐づくものであり、それ自体を主役として活動できるようになるためには、数多くのキャリアを重ねる必要があるだろうなと。描くこと自体は好きですが、ひとつの人生として、何十年もそれだけを続けていくことに納得できるのかと考えるようになりました。そこで、自分でIPをもち、かつイラストに関連する表現と考えていくなかでアニメーションに行き当たりました。
CGW:そうだったのですね。
loundraw:アニメーション作品をつくるなら、キャラクターデザインや美術だけでなく、もちろん監督もやりたいと思っています。そのためにもアニメ制作のプロセスを経験するために挑戦しました。
CGW:今年1月に「FLAT STUDIO」を起ち上げられましたよね。いつ頃から構想があったのですか?
loundraw:今年4月で上京してからまる2年になるのですが、一昨年に『夢が覚めるまで』を公開してからアニメーション制作のお話をいただくことも増えてきて、実際に映像作品に携わるようにもなりました。ですが、基本的にひとつのプロジェクトが終わると、せっかくわかり合えるようになってきたクリエイターさんや制作会社さんとも、いったん関係がリセットになってしまいます。お互いの作風や制作工程を理解しながらものづくりができる人たちの集団をつくりたいという思いが昨年の活動を通じて具現化しました。
FLAT STUDIO 始動!
loundrawさんが中心となり、今年1月に設立されたばかりの本スタジオ。「作品づくりにおける新しい価値観や視点を追求・提案すること」をコンセプトに、アニメーション表現を軸にしながらも、制作領域を問わず幅広く創作に向き合い、より良い表現を追求していくとのこと。期待大! flatstudio.jp
CGW:どのようなスタジオを目指しているのですか?
loundraw:アニメーションスタジオと銘打っていますが、アニメに関わる人だけに固執しているわけではありません。例えば実写映像系のクリエイターさんがいてくれたら、実写の映像演出やカラコレなどのアイデアをアニメ制作に採り入れることができると思いますし、逆も然りですね。そのように個々に突出した才能をもっている様々なクリエイターたちが集まり、普段は個々人の活動をしながらも、具体的なプロジェクトがスタートするとコラボレーションをする場所にできればと思っています
CGW:そうした意味ではメンバーが重要になってくるかと。どのようなかたちで集めていく予定でしょうか?
loundraw:今年3月には、装画を描かせていただいたり、僕の画集『夜明けより前の君へ featuring 君は月夜に光り輝く』(KADOKAWA)でコラボレーションをするなど、深い縁のある小説家の佐野徹夜さんがスタジオのメンバーとして加入してくださいました。そのほかにも、現在(※2019年5月上旬時点)は、自分たちのSNSや公式サイトを通じて、「映像ディレクター」「作画」「制作進行」「制作プロデューサー」「3DCG」「美術」のメンバーを募集中です。スタジオ運営については、僕もクリエイターの代表なので、ビジネス面とものづくりのどちらもわかる立場として「良いものをつくるためにはこうすべき」ということをしっかりと提案していきたいと思っています。正直「これは大変だ」と感じることもありますけど(苦笑)、それ以上に自分自身がやりたいことを成すためには組織づくりが重要だと思っています。
CGW:イラストレーターを原点とするloundrawさんだからこそ追求したいアニメーションとは、どのような表現になるのでしょう?
loundraw:例えば、もっと細かく色味をつくり込めないかと思っています。カット単位でキャラ色を描き分けるといったことは非現実的かもしれませんが、シーン単位で色味を調整できないかと。一般的なアニメーション制作工程では、朝、昼、夕方、夜の4バリエーション程度にとどまりますが、本当は細かく画づくりをしたい。絵コンテから撮影まで高品質を実現するためのワークフローから新しく考えていきたいですね。現在のアニメーション制作は人の手に依存する部分が多すぎるとも感じています。例えば3DCGやIT分野の知識を活用することでより効率的なワークフローをつくり出せたら良いですよね。
CGW:最後に、loundrawさんが作品としてつくりたいアニメーションについて教えてください。
loundraw:自分は「人とは?」や「世界とは?」といったことを突き詰めて考える性分だと思っています。人の根本に問いかけるテーマ、例えば「不確かな価値観とどう生きるのか」ということは自分の中でずっとコンセプトとしてあるので、そうした芯のある作品をつくれたらと思っています。
FLAT STUDIOの記念すべき第1作!
LINEノベル イメージムービー『未来想像記』フルバージョン
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