>   >  沖縄発:ベテランCGアニメーター知念 賢が教える技術向上のために大事な「観察力」と「聞く力」、そして「向上心」
沖縄発:ベテランCGアニメーター知念 賢が教える技術向上のために大事な「観察力」と「聞く力」、そして「向上心」

沖縄発:ベテランCGアニメーター知念 賢が教える技術向上のために大事な「観察力」と「聞く力」、そして「向上心」

どんな趣味でも役立てられる アニメーターは多趣味であれ

CGW:アニメーションの研究という点においてはどのようなことを意識されていますか?

知念:自分がやってきた中で役に立ったと思うものは、映画やTVドラマを見て観察することです。今は「ディズニーの12の原則」や「ジェスチャードローイング」といったものがありますが、自分は昔からこれらの映像を通じて人間の動きを観察し、そこからインスピレーションを受けていました。映画を見て、意識せずとも「このポーズは格好良いな」いう部分が自分の記憶の中に蓄積されていく。

描かないにしてもそれをストックしておくことが大事で、思い返すと自分はずっとそういうことを考えていたなと思います。それって今のジェスチャードローイングとそんなに変わらないんじゃないかなと。周りの人もそうでしたので、良いと思われる作品を教え合ったりしていました。根本的には良い作品を見続けることに尽きますね。

CGW:参考までにそういったときによく挙がるタイトルは?

知念:定番すぎるかもしれませんが、ディズニー作品全般です。僕は『白雪姫』や『アラジン』、『美女と野獣』をよく参考にしていました。日本にも良いアニメはありますが、当時は海外のアニメーションを見てCGの参考にすることが多かったように思います。 現在ではその考え方も変わり、日本のアニメも非常に参考にしています。

CGW:リフレッシュはどのように行なっていますか。

知念:会社の就業時間は一応8時間なのですが、やるべきことが早く終われば定時まで勉強して良いことになっているので、そういったときや休みのときは自分で課題を見つけてアニメーションの自主制作をしたり、映画を見たりしています。海外の作品や個人のデモリールなどを見ているとモチベーションが上がりますし、自分としてもリフレッシュになります。

あと、趣味で柔術をやっていて東京の大会に出たりもしています。練習のときは仕事とちがう頭を使うのでリフレッシュになります。でもアニメーションに応用できる部分もありますね。格闘技は、テコの原理とか、結構アニメーションに理屈が応用できるんです。腰を落とせば重くなるとか重心の上下とかも先生が教えてくれるので、これはオススメです(笑)。

CGW:アニメーションを作る上でのヒントはいろんなところに眠っているんですね。

知念:アニメーションだけではなく、違うことをやった方が表現の幅が広がるとはよく言われます。自分も最初はどうなんだろうと思ったのですが、柔術でもサッカーでも自分の体を動かすことでアニメーションと関係することがいくつも見つかったので、いろいろなことにチャレンジしたほうが良いと思います。

以前、TV番組に1年間に必ず10個新しいことを始めるという人が出ていました。その人は後にとあるボードゲームの王者になったそうです。僕もその人ほどではないにせよ、5個くらいは新しく始めようとしています。目下、取り組んでいるのはウクレレです。『リメンバー・ミー』(2017)にも演奏シーンがありましたし、演奏の技術は様々な場面で表現に落とし込むことができます。その意味でも多彩な趣味はアニメーターに必須かもしれません。

CGW:今回、知念さんが担当されたオンラインチュートリアル「ゲーム制作にフォーカスしたキャラクターコンボアニメーション」ではどんなことを心がけて収録をされましたか?

知念「わかりやすさ」「何を押さえればこれができるか」の2点を心がけています。アニメーションって、昔は抽象的な表現しかできず、どうやって作っているのかが見てもわかりづらい部分があったので、それをどうやって言葉に置き換えて伝えられるかが大事だと思います。

この講義は初心者から2~3年目のプロの方を対象としており、初心者の方が見てもわかりやすいよう、経験者にとって自明のことでも丁寧に説明するよう心がけています。若杉さんとか小池洋平さんとか、海外で経験を積まれた方は教え方も論理的で上手いですよね。僕も彼らのチュートリアルを生徒として受けたことがあって、海外の先人の知恵を得ることができました。そこから改めて自分でまた研究を重ねていきました。

CGW:知念さんが運営されている「Animation Resources」というサイトはその成果報告の一環ということでしょうか?

知念:そうですね。東京の人たちや海外の人たちは活発に自ら発信を行なっていますが、沖縄にはCGアニメーターは少ないので発信をやめたら情報が閉鎖的になってしまいます。昔から、自分がアウトプットすればいろんな情報が入ってくると言われますから、それもあって自分の集めた情報を発信しつつ、その置き場にしています。毎日更新するようないわゆるニュースサイトではなく、迷ったとき、必要だと思ったときに訪れられる図書館みたいな感じで運営しています。


知念氏が運営する「Animation Resources.jp」

CGW:このチュートリアルを受講される方やクリエイターを目指す若い世代に向けてのメッセージをいただけますか?

知念「向上心をもって謙虚に」ということに尽きるかなと思います。これは自戒を込めて(笑)。良い意味でプライドを捨てて謙虚にいろんな方に話を聞こうとすれば思っている以上に周りは支えてくれると思います。

モチベーションを保つ方法のひとつとして、向上心をもつことが重要です。それを生み出すのは簡単ではないのですが、やっぱり「自分が好きなものを見つけて、それに向かって進んでいくこと」が大事なんだと思います。これはアニメーターという仕事やこの業界に限ったことではありませんが。向上心がなくなってしまったら、それはモノづくりをする人間として死んだも同然です。上手く自分の好きなものを見つけるところから始めてほしいですね。

ゲーム制作にフォーカスした
キャラクターコンボアニメーション
(CGWORLD Online Tutorials)
詳細・ご購入はこちら

Profileプロフィール

知念 賢/Satoru Chinen(DOKUTOKU460)

知念 賢/Satoru Chinen(DOKUTOKU460)

高校卒業後、東京へ渡り、笹原組にてアニメーションのキャリアをスタートする。その後主にゲーム会社に入りキャリアを積み、フリーランスとしての活動を経て、城間代表が現在の株式会社DOKUTOKU460を起ち上げたのを機に、その片腕として入社。キャラクターコンテンツを中心に世界へオリジナルキャラクターを発信。また、3Dアニメーションに特化した情報サイト「AnimationResources.jp」を個人で運営中
dokutoku460.com
animationresources.jp

スペシャルインタビュー