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グラフィックスエンジニア・もんしょが語る、素材から世界を構築するSubstance Designerのススメ

グラフィックスエンジニア・もんしょが語る、素材から世界を構築するSubstance Designerのススメ

センスがなくとも、理屈で作っていけるのがSubstance

CGW:地面や崖の他にSubstance Designerでは何が作れるのでしょうか?

もんしょ:いろいろ作れますよ。ワンオフのモノはもちろんとして、基本的には素材単位で作ることが多いと思います。木とか布とか岩の肌とかを素材単位で作り、後から何らかのかたちでブレンドします。

テクスチャのままブレンドすることもあれば、ゲームエンジン上で2つのマテリアルをそれぞれ別個のものとしてブレンドするやり方もあります。

Substance Painterはどちらかといえばワンオフで作るものなので、汚れから何から全部作ります。それをSubstance Designerでやるとタイリングしたときに汚れの加工が連続して、違和感の原因となるのです。

CGW:まるで世界を創造しているかのような感じですね。

もんしょ:そのとおりですね。ある程度法則があるのでそれを見出しつつ、ゲームであれば使いやすいようなかたちで作っていくのです。そのあたりのルールを考えるという点では確かに世界を創リ出す感じはあります(笑)。

CGW:非常に可能性を感じます。

もんしょ:特に海外はプロシージャルが当たり前になっていて、オープンワールドのゲームは大抵プロシージャルです。ビルを建てるにしても1つずつちまちまと作るわけにはいかないし、同じビルが連続しても不自然になります。

ある程度のルールに基づき、似ているけれど違うものを作り上げるというのはエンジニア的な発想なのですが、やっていて楽しいものです。

CGW:この4年間で大きな変化や進歩は何か感じられますか?

もんしょ:仕事ではまだ自分以外にSubstance Designerを使いこなす人はあまりいないのですが、外に目を向けると格段に使える人が増えています。4年前だとSubstance Painterでチュートリアルを出してくれる人がやっとという感じでした。

それが今や、Substance Designerでチュートリアルを出す人が結構います。Twitter でもいろんな人が発信しており、Substanceの公式アカウントがリツイートして紹介してくれます。その中には日本の人も普通にいて、裾野が広がっているのをとても感じています。

CGW:その中で期待することは?

もんしょ:Substance に限った話ではありませんが、今後はやはりプロシージャルな部分が増えていくと思います。海外ですとオープンワールド系も、SubstanceとHoudiniでこんな風に作った、などとという話がたくさん出てきますが、日本ではまだそういう事例が少ないですね。

昨年4月のUNREAL FEST WEST 2019では、スクウェア・エニックス大阪さんの検証プロジェクトである「Houdini×UE4で作るプロシージャル背景制作!1000の和室」が、非常に良くできていました。日本もこの方向で進めば、ゲームもプロシージャルに作られようになり、オープンワールドのしっかりした作品がどんどん出てくることが期待できます。

CGW:もんしょさんご自身の今の研究課題は?

もんしょ:最近やっているのはリアルタイム・レイトレーシングです。やっとDirectX Raytracingが出てきて現実味を帯びてきたとはいえ、まだまだ全然足りませんが、間違いなく主流になっていくでしょう。

シャドウマップなどはどうしても範囲が狭かったり不安定だったり、ボヤけすぎるといった問題が出ますが、DirectX Raytracingでやれば、レイを飛ばすだけで綺麗に出ます。

実際やってみるととても簡単で、普通にポリゴンを描画するようなしくみの中でできるのはすごく大きいことです。これが現実的になってきたので、間違いなく5年後にはデフォルトのような状態になっていると思います。そのときまでにDirectX Raytracingを使ったシステムをいかに構築するかが、現在の自分のテーマです。

CGW:2018年に「Substance Designerによるフルプロシージャルマテリアル作成」の講座で登壇されたり、CGWORLD Online Tutorials「コンクリートタイルの作成から習得するSubstance Designerの基礎」のチュートリアル動画を作られましたが、ご自身ではどのような気付きがありましたか?

もんしょ:他の人に伝えるときに、自分の知っている部分だけを教えても面白くありません。何より、自分が理解していると思っていたことが、実は感覚でやっているにすぎなかったりします。

それを他人に伝えるときに、「そう考えるならこっちの方が効率的じゃないか?」といったことがどんどん出てきたりします。

動画チュートリアルを作る際も、話している最中にもっと良い方法があると気がついて変えてみることもありました。話すにしろ書くにしろ、プロセスの中で理解は深まるものだと思います。誰しも、人前で喋ったり他の人に教えることで、気がつくことがあるでしょう?


CGW:Substance Painterはほぼ業界標準になっていますので、これから使う方も多いでしょうし、導入のメリットがわかりやすい。Substance Designerにも興味を持って始めてくれる人が増えると良いですね。

もんしょ:そうだとありがたいですね。海外では普通にYouTubeなどでチュートリアルを出している人が多く、間違いなく需要はあると思います。

一方で日本のゲーム開発の現場は独学でやってしまうところがあるようですが、仕事で使うとなると新たに学ぶ必要が出てきます。そんなときに効率良く学ぶために、チュートリアルを手にしてもらえるとありがたいですね。

物を作るって楽しいことだと思うのです。自分はセンスがないとか絵的なことがわからないからできないと思っている人も多いと思います。自分もそうでしたから。でも、SubstanceやHoudiniは、最終的には理屈がものを言うのです。

調べれば見つかるし、見ていれば気づく部分もあります。センスがなくたってやっていけるチュートリアルにはなっているかなと思います。

自分が興味をもったことについて頭を働かせるというのはやっぱり楽しいことです。Substance DesignerやHoudiniなどのプロシージャルの方向で自分の頭を使ってみると、思わぬ面白いことが起きるのではないでしょうか。

CGW:ありがとうございました。

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Profileプロフィール

もんしょ/Monsho(グラフィックスエンジニア)

もんしょ/Monsho(グラフィックスエンジニア)

1977年生まれ。専門学校卒業後、グラフィックスプログラミングの研究・開発を個人で行い、DirectXによるグラフィックスプログラミング手法を掲載するサイト「もんしょの巣穴」を起ち上げる。現在は都内のゲーム開発会社にてグラフィックス周りのR&Dを行うエンジニア。 ハードウェアに近い低レベル層での研究・開発を主に行う。Substance Designerは3年ほど前から個人の研究・検証用に使用開始。都内某所でSubstance勉強会、ゆるゆる会を開催することもある
Twitter:@monsho1977
もんしょの巣穴:
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もんしょの巣穴ブログ:
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