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まったくのCG初心者が1年でここまで成長!? 講師と生徒がふり返る、Blender習得の道のり

まったくのCG初心者が1年でここまで成長!? 講師と生徒がふり返る、Blender習得の道のり

「反復練習」で自信と根気を養おう!

CGW:第40回からは「背景モデリング」として、建物の外観と駐車場などを制作されたんですね。

西原:ここまでつくれるようになると、「CGをやっているぜ」みたいな気分になってきました(笑)。写実的なものをつくると「つくった感」がありますよね。「新築できた!」みたいな。

「第47回:背景モデリング初級編(8)~道路や駐車場をモデリングする~」

CGW:そして、第48回からは難関の「クルマモデリング」ですね。

西原:ここから一気にハードルが上がりましたね。それまでは、円柱や四角の変形からつくっていくものが多かったのですが、クルマのモデリングでは写真から頂点やポリゴンを生成してつくっていくという手法に変わりました。今、改めてデータを見直すと、自分と實方さんのモデリングは全然ちがいますね。正直、苦戦していました。

實方:建物は三面図があれば形は作れるんですよね。でも、車のモデリングではもうワンステップ歩みを進め、「三面図だけではわからない部分」を推測して作ってもらいました。ここでは「自分で主体的にモデリングしていく」という力を養ってもらおうと。

CGW:なるほど。「推測」と「想像」を必要とするクリエイティブな作業が増えていますね。

「第50回:クルマモデリング(3)~ボディのモデリング(2)~」

實方:でも、クルマのモデリングをする前に部屋のモデリングをしたことで、だいぶ力がついていたんじゃないですか? あの物量をこなしてきたので、クルマの制作に付いてこれたと思っています。

西原:なかなか終わりが見えず大変でしたが、部屋のモデリングを通して、「部屋を乗り越えたんだからクルマもできるはず!」という自信と根気強さが養われたように思います。

實方:ちゃんと完成させた自信と経験があるからこそ、「クルマのモデリングにもゴールがある」と信じることができたんじゃないですかね。実際、部屋のモデリングが完成したあたりで、ひとつ突き抜けた感じがしました。「超初心者」だったのが「CGモデラー」になったような気がしたような。何十時間ものカロリーを費やしてつくった室内モデルをライティングして、すごく良い雰囲気になったし。レンダリングしたときは「作品感」がありましたよね。

西原:ただただ筋トレで、細かいものをたくさんつくり続けました。トドメとなったのは、先ほどもお話しした穴がたくさんあるシャワーヘッドですね。こういう細かい作業を妥協せずにやりきって、最後に部屋の中にキャラクターを置いたときは「ここまでできるようになったんだ」と感慨深かったです。

「第39回:キャラクターモデリング(4)~アーマチュア(ボーン)を入れてポーズをつけよう~」

CGW:Blenderは毎日触っているんですか?

西原:毎月、数本分をまとめ撮りしているのですが、収録の日しか触っていません。ですので、配信されているものが僕の全てです。隠れて練習しているということはないですね(笑)。

CGW:チュートリアルの収録時間だけで、かなり上達しましたね! 實方さんの教え方も上手ですもんね!

西原:本当にそのとおりです。部屋のモデリングでは、操作に慣れることと實方さんのスピードに付いていくのが大変でした。後半ではだいぶ付いていけるようになっていますよね。筋トレで筋肉が付いてきた感じです。

實方:まったくの初心者をどのように導いていくか、かなり考えてカリキュラムを組んだのですが、部屋のモデリングではやることが多くてちょっと急いじゃいましたね。でも、かえって筋トレになったようで良かったです。「筋肉」が付けば誰でもモデリングはできるようになるんですよね。

西原:こうやってコツコツと続けていくうちに応用力が付いて、うっかり聞き逃したことでも自分で考えてつくれるようになっていました。それまでは、實方さんがやっていることとまったく同じ手順でなければつくれなかったんですけど、「自分なりのつくり方」ができるようになってきたんです。CGモデルのつくり方って方法がたくさんあるので、最終的に一緒になれば良いんだと思っています。

實方:西原さんが応用を利かせて、自主的に「ちょっとちがったつくり方」をしたときに発生するエラーがあって。そのエラーを解決することが、モデラーとしての「対応力」を底上げしていくんですよね。エラーをどのように解決するかが重要です。

CGW:伝えるのが難しいところはありましたか?

實方:第48回からの「クルマのモデリング」では、複雑なプロセスを踏んでつくっていくんですね。タイヤなんてすごく複雑で、構築するためのプロセスをいかにわかりやすい手順に落とし込むかを考えました。頭で理解できないような難しいところは、「おまじないだと思って、そのまま覚えてください」と説明しました。本当は理解してほしいのですが、あまり急いで詰め込みすぎるのも良くないので。今はわからなくても、いずれ作業を通してすんなりと理解できるときがくるものですからね。

「第64回:クルマモデリング(17)~タイヤのモデリング(7)~」

西原:實方さんの教え方は寛容ですよね。だから實方さんとはちがうアプローチでつくっても良いだろうと、自分なりにいろいろと試していました。「どうしてそうなるのか」というロジックをちゃんと教えてくれるので、本筋さえ理解すれば自分なりの方法でつくれるようになるんですよ。

實方:それはとても大切なところなので意識していますね。でなければ、私と同じ手順でなければいつまでたっても自分ではつくれない、ということになってしまいますから。ちゃんと理解していないと1人でつくれるようにはならないですよね。


絵心は後から付いてくる。とにかくCGをはじめてみよう!

西原:絵が描けない僕が、こうやってCGモデリングができてしまっていることに驚いています。CGは絵が描けないとできないと思い込んでいたし、心のシャッターを完全に閉めてしまっていましたから。

CGW:絵が描けないからと、はじめからあきらめてしまっていたんですね。

西原:そうなんですよ。だから本チュートリアルを企画した当初、ボーンデジタル社内のCG経験者が生徒役をする予定だったんです。でも、實方さんに相談したら「本当の初心者が挑戦した方が良い」ということになり、「絵心ないけど平気ですか?」と聞いたら「大丈夫です!」と力強く答えてくれて。そこで、僕の心のシャッターをガーッっと開けてくれたんです。

CGW:真っ暗な部屋で体育座りをしている西原さんの前に、シャッターを開けた實方さんが逆光で現れたわけですね!

西原:そうそう! 本当にそんな感じ(笑)! 思い切って飛び込んでみたら想像以上につくることができて、その成功体験がとにかく嬉しいです。

CGW:「自分にはムリだ」という思い込みで、心のシャッターを閉じてしまっている人は多いかもしれませんね。

西原:たくさんいると思いますよ。だからみんな、僕の第1回の成果を見て、勇気を出してもらえたら! もう一度見てみましょうか。

CGW:玉ねぎ......、失礼、オレンジでしたね! 構図はこれで良かったんですか?

西原:オレンジですからね(怒)! 当時はカメラすら動かせないものだから、構図も変えられなかったんですよ。

實方:初心者にカメラの操作なんてさせると、挫折しちゃいますから(笑)。

西原:実は、初めてオレンジをつくったときは、絵心のなさを思い知ってちょっと嫌でした。

CGW:確かに、スカルプトは絵心が出るところですよね。

西原:でも、チュートリアルを進めているうちに、「デザインはできないけど、CGってそれだけじゃない」と知りました。プロとして仕事をするのであれば、絵心がないと厳しいのかもしれませんが、趣味や初心者のレベルであれば絵心なんて必要ないんですよ。つくっていくうちに、少しずつデザインができるようになっていくんですよね。だから、「とにかくつくってみること」なんですよね。

▲「オレンジ」から1年半後。ここまでつくれるように!

CGW:次第に絵心が身につくというのは勇気をもらえます。しかし、なんだかんだで絵心を隠しもっていたということはないですか?

西原:いやー、そうだと良いのですが、残念ながら子供の頃から美術は苦手でした。でもCGモデリングは、写真やリファレンスなどの「ゴール」があれば自分でデザインしなくても良いのでわかりやすかったです。キャラクターモデリングは實方さんにデザインを描いてもらいましたし。

實方:一度やってみると、似たようなことは真似してできるようになりますからね。そうやってスキルはどんどん上がっていくんですよ。経験が本当に大切ですよね。

西原:最近は何を見てもポリゴンに見えてきたりしています(笑)。このビルはどうやってつくろうかなとかブーリアンを使うかなとか。そんな話をしながら實方さんとランチを食べています。

實方:お店の壁の錆を見たりすると、「このマテリアルは面倒くさいな」とか(笑)。

西原:そうそう、2Dの仕事をしている人にもこのチュートリアルはオススメなんですよ。レンダリングして上から描くなど、Blenderを使うイラストレーターさんも増えてきましたし。

實方:私はもともとマンガ業界にいたのですが、CGとの親和性は極めて高いですね。興味がある人であれば、基礎編だけでも挑戦してみると良いかもしれません。それに、意外と実生活でも役に立つんですよね。例えば、家具を買うときに自分の部屋をモデリングして確認ができるし、引っ越しや家を建てるときに役に立つと思います。

CGW:つくるのが難しければ、既存の「家具アセット」がありますからね。

西原:そう。何もかもイチからつくることはないんですよね。そういった家具の配置をするときにも、基礎編で習った「原点」の考え方が役に立ちますよ。ぜひ、この講義でCGを始めるきっかけになってもらえれば嬉しいです。

▲収録の様子

實方:細かい操作の内容も全て言葉で説明しているので、忙しいときや仕事中に動画を流し聞すだけでも頭に入ってきやすいと思います。そして、流し聞きした後、時間があるときに手を動かしてもらえたらすんなりと習得できると思いますよ。

西原:それに、このチュートリアルは失敗も含めて超初心者の僕のペースで収録しています。『3分クッキング』みたいに準備万端に整えていたり、裏で進めたりしていません。撮影の休憩中にわからないところを質問して進めようとしたら、實方さんが「間違えているところもちゃんと撮影しよう」と止めるほどでした。

CGW:實方さん流の「生徒のモチベーションアップ法」はありますか?

實方:褒めるというより「一緒に喜ぶ」ことですね。そういえば、西原さんをあまり褒めてないかもしれない......(笑)。

西原:もっと褒めてください(笑)!

CGW:逆に、教わる立場のモチベーション維持の秘訣はありますか?

西原:「出来上がる楽しさ」ですね。部屋モデリングをやりきったときの達成感があるから、今も次に進むことができています。CGモデラーさんの気持ちがわかるようです。本当に大変なんだなぁと。

CGW:今後、アニメーションは付ける予定ですか?

實方:僕がアニメーターではないので本格的にアニメーションを付けることはしませんが、基本的なものだけはやってみようと思っています。やっぱりクルマをつくったのであれば走らせたいじゃないですか(笑)。キャラクターもつくったことですし、クルマに乗せて駐車場からどこかへ運転させるのも良いかも。

西原:そうなんですよ。建物の横にはちゃんと駐車場もつくっているので車を止められるんですよ。そういえば、部屋のモデリングでも『実寸モデリング編』で作成したソファを置いて、キャラクターを座らせましたよね。つくったものが全部繋がって、ひとつの世界になっているんですよね。

CGW:そうやって自分でつくってきたCGの世界で、ストーリーができていくのは感動的ですね!

實方:CGの良いところは使い回しができるところです。つくったものは全て自分の資産になりますからね。

CGW:さて、現在は第64回まで収録が終了していますが、この旅はどこまで続くのでしょうか?

西原:どこまででしょうかね。終わりなき旅みたいな......。

實方:全て自分のオリジナルで考えたものをつくれるようになったら、マスターなんじゃないでしょうか。

西原:うわー、先が長いな! おじいちゃんになるまでやりますか(笑)。

CGW:ライフワークになりそうですね。Blenderは楽しいですか?

西原:楽しいですよ!

實方:これからも、もっと楽しみましょう!

CGW:今後の成長を楽しみにしています。今日はありがとうございました!



實方氏とCGWORLD・西原による動画チュートリアル

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Profileプロフィール

實方佑介/Yusuke Sanekata

實方佑介/Yusuke Sanekata

株式会社ブルームスキーム CTO(Chief Technology Officer)。漫画の3Dディレクションに従事した後、現職。プロダクト開発のほぼ全てのパートを担当。フロント:Javascript、React。サーバサイド:Python、Django REST framework。モデリング:Blender、ZBrush、Marvelous Designer、Substance Designer。ツール開発:Python、JavaScript、C#。分野を問わず必要に応じて何でもやります。

西原紀雅/Norimasa Nishihara

西原紀雅/Norimasa Nishihara

株式会社ボーンデジタル CGWORLD編集部

スペシャルインタビュー