映画やアニメ、ゲームに至るまで、近年の3DCGコンテンツ制作においてモーションキャプチャと、その収録スタジオは欠かせない存在となっている。今回紹介するD1-Labも、そうしたスタジオを提供するCGプロダクションの1つだ。
同社の設立は2001年。モーションキャプチャスタジオの運営は2011年からで、モーションキャプチャスタジオの中でも歴史は長い。そんなD1-Labのスタジオはどのような設備・運用を行っているのか。そして、技術黎明期からモーションキャプチャに携わってきた同社ならではの強みとは何か。
同社取締役の古賀祐次氏に話を聞いた。
株式会社D1-Lab
ゲームでのモーションキャプチャに黎明期から携わり、20年以上の経験をキャプチャ業務に生かす。
――会社紹介と自己紹介をお願いできますか?
古賀祐次氏(以下、古賀):D1-Labの古賀です。弊社は2001年設立、2011年からはモーションキャプチャスタジオの運営も手掛けるCG制作スタジオです。私自身は元々フリーランスの立場でゲーム制作に携わっておりまして、現在弊社の顧問をつとめる半澤 剛とはそこで案件を共にした関係です。その半澤 剛が会社を立ち上げたということで合流、という経緯になります。
――以前はフリーランスでゲーム制作に関わられていたとのことですが、当時からモーションキャプチャを手掛けられていたのですか?
古賀:そうですね。ゲーム制作にモーションキャプチャが使われ始める初期の頃から携わらせて頂いています。半澤と一緒に制作にあたった『バイオハザード』(2002)から数えても、もう20年以上になります。
当時はFBXのような標準フォーマットがまだ一般的ではなく、モーキャプデータを制作ツールからゲームへ安定して受け渡すのが難しかった。結果として、モーキャプを使っても最終調整は手付けで行うケースが多く、手付けモーションの比率も現在より高かったですね。
――そこから2011年にモーションキャプチャスタジオを設立されたきっかけは何だったのでしょう?
古賀:長らくモーションキャプチャや制作を手掛ける中で知見が溜まり、「もっとプロダクションに寄り添ったスタジオ運用ができるのでは」と思ったんです。当時のスタジオは、言い方を選ばずに言えば「ただモーションを収録するだけ」のところも多かった。
でも僕らは、プロダクションとして、収録後のリターゲット(別キャラクター/別リグへの適用)や、最終的な画づくり、制作工程全体まで理解している。だからこそ、違う価値を出せるんじゃないかと。それがスタートのきっかけですね。
――そうした経緯や背景は実際にどのような形で強みとして現れるのでしょうか?
古賀:キャプチャ精度の高さもありますが、やはり現場での“判断の速さ”と“提案のしやすさ”だと思います。例えば空中アクションを撮るときに、アクターを宙づりにした方がいいのか、接地したまま撮って後工程でアニメーターが調整すれば十分なのか。次の工程を想定したうえで提案できます。
ほかにも、アクションの一部で失敗があった場合に、全部を撮り直さず「どこからどこまで撮り直せばつながるか」を判断できる。
やりたいことから予算感まで、狙いに合わせた提案ができるのが強みだと思います。加えて、XR/MRの開発も行っているので、「撮影」だけでなく、施策設計そのものの相談に乗れる点も特徴ですね。
"一気通貫”から変わったキャプチャにまで対応
――スタジオの設備や機材はどのようなものでしょう?
古賀:VICONのT160を24台です。元がフォトスタジオの居抜きなのでL字型の少し変わったキャプチャスペースになっているのですが、センサーの数で死角を潰して最大6人まで同時に収録できるようになっています。収録したモーションでキャラクターがどのように動くのかもViconのソフトウェア「Shogun」(収録・プレビュー用)でリアルタイムに確認できるので、ディレクションしやすい環境は用意できているかなと思います。
――収録現場にはモーションキャプチャスタッフの他にもD1-Labのスタッフの方は同席されるのですか?
古賀:案件によりますね。他のスタッフも同席して演出の意見や相談をさせていただく場合もありますし、お客様がモーションキャプチャに慣れていてプランニングもしっかりされている場合はそのままそれに沿っていくということもあります。弊社はモデリングやリギングからモーション収録、リターゲット、編集、アクターの手配に至るまで一気通貫で対応できるスタジオなので、ご相談に合わせて対応させて頂いていますね。
――スタジオの利用者は主にどういった層なのでしょうか?
古賀:新規とリピーターが半々くらいです。最近は自前のモーションキャプチャスタジオを持たれるゲーム会社が増えたのでゲーム用途の利用が減り、代わりにPVやCMなどの映像用途の利用が増えたかな、という印象ですね。あとは、遊技機の案件もあります。
――媒体やジャンル問わず幅広いキャプチャーを手掛けてらっしゃると思うのですが、得意ジャンルや分野は何かありますか?
古賀:歌やダンスも含めて様々な案件をやらせていただいていますが、強いて言うなら、モーションのフィックス(最終調整して確定)まで担当する“一気通貫”案件でしょうか。アクターのニュアンスまで含めて仕上げられるのが、我々の特技だと思います。
――実はこういったこともできる、といったことはありますか?
古賀:それでいうと、弊社の公式サイトで実績として掲載しているK社の案件になるでしょうか。この作品で弊社が担当したのは犬のモーションなのですが、このときはスタジオにゴールデンレトリバーを連れてきて3日かけてキャプチャを行いました。収録からリターゲットに至るまで難しいことは多かったですが、なんとかやらせていただきました。
――かなりチャレンジングなキャプチャも手掛けてこられたのですね。
古賀:犬のキャプチャは白組さんからご相談を受けたのがきっかけだったのですが、そもそも我々は会社としてシステム開発まで手掛けているのもあって、技術課題に取り組むことはむしろ得意なんです。R&Dとしても、こうしたトライは積極的にしていきたいと思いますね。
――他にスタジオの特徴があれば教えてください。
古賀:強いて挙げるなら、プロップ(演技用の小道具)を豊富に用意していることと、収録後に汗を流せるシャワールームがあることですね。どちらもアクターのコンディションや集中力に直結しますし、結果として演技の再現性や収録のスムーズさにもつながり、仕上がりにも影響すると考えています。
さらに3Dプリンタもあるので、事前にご相談いただければ、作品に合わせたカスタムプロップを用意することも可能です。
――恵比寿という立地もモーションキャプチャスタジオとしては珍しい立地の良さです。
古賀:たしかに、同業他社では都心から外れた場所のスタジオも多いので、弊社のような立地は珍しいかもしれませんね。基本的に弊社は山手線さえ動いていれば大丈夫なので、アクセスの利便性には恵まれていると思います。
――最後に、利用者へのアピールがあればよろしくお願いします。
古賀:見学だけも受け付けていますので、気になる方はホームページからお問い合わせください。これまでお話しした通り、弊社は一気通貫で対応できるスタジオですので、どのような方でもお気軽にご相談くださいますとありがたいです。
TEXT_稲庭 淳
PHOTO_弘田 充
EDIT_池田大樹(CGWORLD)