雷の魔法陣エフェクトをつくる
自然現象「雷」を応用した雷属性エフェクト
炎属性のポイントとなるエフェクト制作に続き、全体のながれはそのままに属性だけを変更して新 たなエフェクトを制作しました。下図を見てわかるように自然現象「雷」を応用したエフェクトとなります。[1]~[4]では雷による魔法陣の出現。[5]でエネルギーを溜め、[6]~[9]でエネルギー弾の発射から消失までを表現しています。炎属性とベースは変わりませんが、色合いやポイントとなるエフェクトを変えるだけで大きく印象が変化したことがわかるかと思います。雷を連載で取り上げるのは今回が初となりますので、次項では雷のしくみから考え、最終項でポイントとなる雷エフェクトの制作を紹介していきたいと思います。
雷のしくみからエフェクト制作へ
雷エフェクトを制作するにあたって、実際の雷の発生メカニズムを調べてみました。通常、雷は積乱雲が成長した「雷雲」内で発生します。この雷雲の内部では大小様々な氷の粒が上昇気流によって高速に飛び交い、粒同士が衝突や摩擦をくり返すことでプラスとマイナスに帯電した粒に分かれ、雲内部に磁場が発生します。身近な例では静電気の発生がこれにあたります。学生時代、下敷きを擦って髪を逆立てるような遊びをした読者もいるのではないでしょうか。さて、雲内部でこの状態が続くと際限なく電気が溜まっていくので、空気中ほど抵抗力の高くない雲の中では放電が始まります。この放電状態があるとき地上の異なる性質をもつ極性と結びつき、空気中に一気に放電が行われることを「落雷」と言います。このしくみを踏まえてエフェクトを制作していきたいと思います。
雷のしくみ
雲放電と落雷の特徴による表現手法のちがいと制作
雷属性エフェクトでは、主に2つのポイントで実際の雷の現象を応用したエフェクトを制作しています。[1]取り巻く雲の中で発生している雷は「雲放電」。魔法陣発生時に起きる雷は「落雷」を参考にしています。[2]雲放電エフェクトでは雲の内部や付近での放電を表現するために手描きの雷アニメーションを数種類用意しました。雲放電特有の雷の推移や激しい点滅等のアニメーションをAfter Effects上でコントロールし、連番を貼り付けた平面を雲内部に丁寧にひとつずつ仕込んでいます。[3]では魔法陣を描くための雷を制作しています。上空から伸びる雷とは別に、ストリーマと呼ばれる地上で発生するお迎え放電を応用したエフェクト素材を配置します。
1.雲放電と落雷をベースに制作したエフェクト
完成動画
2.雲放電の制作
手描きの雷パターン
シルエットの異なる雷を数種類用意。各素材で2f~6fの動画を描いた
After Effectsでの編集
描いた雷の連番素材を基に不透明度やチョークを使い、点滅アニメーションや消え際の振る舞いをコントロール。下図は編集した雷素材を出力し、3ds Maxのアニメーションテクスチャとして用意したもの
雷素材の配置
周りを取り囲む雲エフェクトの場所に合わせて雷素材を配置した図。出現するタイミングは全てOpacityアニメーションでコントロールし、画に偏りがないよう気をつけている
3.お迎え放電(ストリーマ)の雷素材の配置
お迎え放電と先駆放電
落雷は上空から地上に落ちているものと思われがちだが、実際はお迎え放電(ストリーマ)と言われる地上からの雷も同時に発生している。雲部から発生する先駆放電(ステップリーダ)とが上空約60m~200mの場所で互いに結びつき、大きな雷が発生する
あとがき
普段の連載では実写の模写をコンセプトに制作しているため、創作エフェクト1本で制作&記事を書くことは新鮮であり大変でもあり、筆者にとっても良い勉強になりました。あとがきではページの都合上、本記事内で説明できなかったエフェクトを紹介してみたいと思います。1つめは「魔法陣と言えば周囲に漂う雲的な何かがあると格好良いよね」という思いつきで作り始めた周囲の雲。ビジュアルは気に入っているのですが、特に実写の某を応用したエフェクトではないので記事では触れず。2つめは雷属性のエネルギー弾。落雷エフェクトの紹介と内容が被りそうだったのでこちらも不採用に。見せたいものも見せられたということでこれにておしまい。
周りを取り囲む雲
3種類の異なる煙で構成
エネルギー弾(雷属性)完成図
主な素材の内訳