Substance Painterの沿革とライセンス形態
Substance Painterは、Allegorithmicが今までにない非破壊のペイントツールとして売り出し、2014年10月に製品版がリリースされたレイヤーベースの3Dペイントソフトです。すでに世に出ていた姉妹製品であるノードベースのテクスチャコンポジットソフト、Substance Designerなどとの連携によって、すでにPBRの時代に入っていたゲーム業界向けにフォトリアルなテクスチャ制作を後押しすることが主な目的とされていました。事実、海外のAAAタイトル『アンチャーテッド』シリーズでおなじみのNaughty Dogは、2012年頃からAllegorithmicと提携してSubstance製品を用いたテクスチャ制作のパイプラインをブラッシュアップし、その過程で起きた問題点をフィードバックしていたといいます。その後、ゲーム開発向けの機能の充実を図りながらユーザー数を着実に伸ばし、早期にUIの日本語化に対応したこともあって国内でも3Dペイントツールとしては盤石の地位を築いています。
Substance Painterのライセンス形態は主に2つで、通常版のProのほかに、会社または個人の年間売上が10万ドル未満のユーザーが利用できるIndieがあります。両者は利用できる機能に差はなく、Proは約8万円、Indieは約2万円と非常にコストパフォーマンスに優れており、そのこともユーザーの裾野を広げた要因のひとつです。ほかにも、Substance Designer、Substance Painter、Bitmap2Materialの商用版がセットになったAllegorithmic Substance Pack Pro/Indie でもSubstance Painterを利用できます。
Substance Painterの特徴的な機能
3DペイントにSubstance Painterが重宝される理由は、何と言っても手軽にハイディテールなデータを作成できることです。特に作業工程を自動化し、必要な部分だけをハンドペイントでまかなうのがSubstance Painterの根本的な設計思想とも言えます。ウェザリングする場合は、単にマスクジェネレータを使って自動でエッジを検出して生成したマスクにマテリアルを適用すればそれなりに見えてしまいます。
マスクジェネレータの活用
マスクジェネレータを用いて洋服のエッジ部分を埃っぽく汚していく
マスクに対して埃のマテリアルを適用した状態
自動化によって作業を効率化するという観点からは、マテリアルペイントも非常に有用な機能です。
マテリアルペイント
Substance PainterはPBRシェーダであるため、基本的には次の3つのマテリアルを同時にペイントできる
Substance PainterではPBR用のベースカラー、メタリック、ラフネスなどの全てのマテリアルを1つにまとめて1回のストロークで同時にペイントできます。これによって、マテリアルごとに作成していたテクスチャを直感的に効率良く作成することが可能です。
初期から搭載されているパーティクルブラシも、Substance Painterならではの他のソフトにはない機能のひとつと言えるでしょう。
パーティクルブラシ
色を変更してレベル補正したもの
ブラシではペイントしにくいガラスや地面のヒビ割れ、雨や油の垂れなどは、重力などの物理パラメータを設定したパーティクルによってリアルに表現できます。そして、Irayを搭載したことで、パストレーシングによって物理的に正しく計算されたレンダリング結果をビューポートで表示できるようになりました。
Irayレンダリングビューポート
Irayで直接レンダリングしてYEBISのポストエフェクトをかけた結果を表示できるビューポートがバージョン2から搭載された。これによって最終的なルックにより近いかたちで確認できる
YEBISのポストエフェクトと組み合わさることで、非常に美しく高品質な画像を生成できます。なお、バージョン2.1でLinuxやUDIM(後述)をサポートしたり、8Kに対応したりと、完全にVFX寄りのユーザーを取り込む戦略を取り始めた感があります。今後の動きに要注目です。