<5>スペシャル対談~「AI×Houdiniの可能性」
セミナー後半はゲームAI開発者の三宅陽一郎氏と長舩氏による対談「AI×Houdiniの可能性」でスタートした。はじめに長舩氏は「Houdiniと最新AI技術を絡めることで、プロシージャルを活用した、これまでにないアセットジェネレータが開発できるのではないか」と問題を提起。『SPORE』『No Man's Sky』といった既存タイトルや、『FAR CRY 2』『HORIZON ZERO DOWN』における内製ゲームエンジンでの実装例を挙げつつ、プロシージャル技術とゲームの関係について、これまでの事例をふりかえった。
FAR CRY2 DUNIA ENGUNE
HORIZON ZERO DOWN GPU Based Procedural Placement
続いてトピックは論文ベースの最新技術に関する解説に移った。ここで紹介されたのが、3DCGの形状を抽出して自動生成するMITの研究「Learning a Probabilistic Latent Space of Object Shapes via 3D Generative-Adversarial Modeling」だ。ディープラーニングによる画像生成の3D版といえるもので、三宅氏は「没ネタでいいから、たくさんのアイデアをAIが自動生成してくれれば、人間がそれを参考にして新しいアイデアを生み出せる」とコメントし、この分野での可能性に期待を寄せた。
AIとプロシージャルが融合する可能性についてディスカッションする、ゲームAI開発者の三宅陽一郎氏(左)と長舩氏(右)
これらの議論を巻き取り、三宅氏は「AI研究では従来の関数アプローチを、ニューラルネットワークに置き換えることで、イノベーションが起きた」と解説。「囲碁AIの強化とは、これまでより強い評価関数をつくることだった。この評価関数がニューラルネットワークの発展系であるディープラーニングに置き換わったことで、囲碁AIが飛躍的に強化された」(三宅氏)。その上で、ニューラルネットワークを用いて画像の自動生成を行う研究、GAN(Generative Adversarial Network)についても解説を行なった。
Houdiniが可能にするプロシージャルも、現在は評価関数ベースのように見えると分析する三宅氏。これが囲碁AIと同じように、近い将来ニューラルネットワークに置き換わることで、さらなる進化が予測される。中でも画像の自動生成で最先端の研究がGANであり、応用が可能なのでは......というわけだ。もっともGANで自動生成されるコンテンツは2Dベースに留まっており、3DCGモデルの自動生成を可能にするためには、さらなるイノベーションが必要になる。
GAN(Generative Adversarial Network)の概念について解説する三宅氏
考え方のひとつとして三宅氏が紹介したのが、Googleの機械学習向けソフトウェアライブラリ「TensorFlow」だ。ディープラーニングに対応しており、Googleの各種サービスなどで広く活用されているもので、オープンソースで公開されている。そこでHoudiniのノードにTensorFlowを上手く組み込めば、Houdiniが関数ベースからニューラルネットワークベースに移行することもあり得る。「というより、すでにそういったことを考えている人がいるのではないでしょうか?」(三宅氏)。
ここで長舩氏がブログ「Houdiniで機械学習 with TensorFlow」を紹介すると、執筆者であるtakavfx氏が飛び入りで登壇し、会場はさらに盛り上がった。takavfx氏は映像業界のテクニカルディレクターとしてHoudiniを活用しており、「まさに今、HoudiniでTensorFlowを活用しつつ、GANをベースにしたノードをつくろうとしています」とも明かされた。長舩氏の「今後もぜひ、知見を共有してほしい」という依頼に対して、takavfx氏も快諾。このように予想外のサプライズを見せつつ、対談は終了した。