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プロシージャルコンテンツ生成の可能性に沸くゲーム業界~Tokyo Houdini Meetup Vol.1レポート

プロシージャルコンテンツ生成の可能性に沸くゲーム業界~Tokyo Houdini Meetup Vol.1レポート

<6>Houdini座談会~Houdiniマスターにいろいろ聞いてみよう!

最後に、これからHoudiniを学習したいという参加者向けに、第1部のショートセッションで講演した3名が再び登壇。長舩氏の司会で座談会が行われた。

はじめに長舩氏は「Houdiniを開発プロジェクトに導入した際の経験談」について聞いた。これに対してポリフォニーデジタルの齋藤氏は「Houdiniを使用するのであれば、プロシージャルモデリングの活用によって生産効率が高まることが前提になる。その上で、手でつくるものよりもクオリティが高いことが求められる」とコメント。スタジオの社風によるかもしれないが、品質と生産性の高さを両立させることが、成功・失敗の分水嶺になるという考えを示した。

ちなみに齋藤氏がHoudiniの検証を始めたのは2015年の中ごろで、ちょうどHoudini Digital Assetが登場し始めたころだったという。「当時、ちょっとした機能をMayaのアーティスト向けに作成するだけで、かなり喜ばれました」(齋藤氏)。このようにアセット制作の現場で役立つ機能をHoudiniでつくりつつ、研究開発も進められたので、タイミングが良かったとふりかえった。


座談会ではHoudiniの学習方法をはじめ、現場ならではの知見に基づく議論が行われた(左から鳥居氏・伊地知氏・齋藤氏)

また、Houdiniのモバイルゲームへの活用について、伊地知氏は「VATはメモリを大量に消費するが、使いどころがハッキリしていれば導入できる」と語った。「3Dのエフェクトが重要になるなど、キーとなるビジュアルでVATを使用しても良いのであれば、十分に活用できます」(伊地知氏)。これに対して長舩氏も、モントリオールで開催されたゲーム開発者会議MIGS 2017でもモバイルゲームでのVATの活用事例について議論されたことを挙げ、海外で先行している分野だと補足した。

続いてトピックはプロシージャルモデリングに移った。ここで長舩氏が紹介したのが、GDC 2017でSideFXが公開した、Unreal Engine 4上でHoudiniプラグインを活用し、パイプの配管やレベルデザインをプロシージャルで行うデモだ。パイプを配置してマウスでドラッグするだけで、自動的に天井にヒットして配置されていく。齋藤氏も「ステージのカーブポイントを増やすだけで、部屋そのものを拡張していくなど、プロシージャルモデリングとレベルデザインが高度に融合している」と評価した。

「GDC 2017 Procedural Assets for UE4」。マウスをドラッグするだけでフロアを拡張したり、大量のパイプをはわせたりすることができる

こうしたプロシージャルモデリングのクオリティを高めていくには、数多くのリファレンスを観察し、その構成要素を分割して、ルール化していく作業が求められる。一度ルール化ができれば、それを基に量産化が可能になる。長舩氏は「そのために、どのようなやり方が有効か」と質問を投げかけた。ちなみに現状では、このルール化を人間が行なっているが、前述の通り、これをAIで代用させる研究も進められている。

もっとも齋藤氏は、「単にアセットをプロシージャルでつくるだけでなく、アーティストの癖そのものをプロシージャルに再現することを目標に掲げている」と明かした。趣味で行っているロボット生成では、「有名なメカデザイナーの癖を解釈しながら、それをプロシージャルに落とし込んでいくようなアプローチ」を採っているというわけだ。

業務においても、エース級と初心者のモデラーでつくり方の差分を抽出し、ルール化することを目標にしているという。「エース級のモデラーがリファレンスとなる素材をどのように解釈し、抽象化していくか、その方法論をサンプリングして抽象化することが、社内で求められています」(齋藤氏)。そのため、エース級のモデラーの仕事ぶりが一番のリファレンスであり、その後ろに立って観察することが日課になっていると語った。


ツールは一人で学習するよりも、チームで一緒に学習した方が効率的に学べる。特にHoudiniはある時点をすぎると飛躍的に制作効率が高まるため、集団による学びがより効果的に作用する

最後にHoudiniの学習方法について議論された。長舩氏は「パイプラインにHoudiniを組み込むのであれば、社内に1人はHoudiniのスペシャリストが必要になる。身近に上級者がいれば質問もしやすい。では、その1人をどうやって育てるか」と質問。これに対してVFXテクニカルディレクターの鳥居氏は「一人で学ぶのではなくチームで学んだ方が、学習効率が高い」と語った。「特にHoudiniはデータの共有がしやすいので、複数人で教え合いながら学ぶのがお勧めです」(鳥居氏)。

これらの議論を受け、長舩氏は「Tokyo Houdini Meetupも参加者間の交流を通して、そうした学びの場にしていきたい」とコメント。2回、3回と会を重ねることも視野に入れつつ、活動を進めていきたいと締めくくった。



  • 「Tokyo Houdini Meetup Vol.1」

    開催日:2017年12月22日(金)
    時間:18:30~22:30
    会場:株式会社ミクシィ
    主催:Tokyo Houdini Meetup運営委員会
    connpass.com/event/72305

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