>   >  2Dを超えた"3D視点の制作環境"へ―VR空間でのドローイングの実現を目指すワコムによる「Wacom Creators' Symposium」レポート
2Dを超えた"3D視点の制作環境"へ―VR空間でのドローイングの実現を目指すワコムによる「Wacom Creators' Symposium」レポート

2Dを超えた"3D視点の制作環境"へ―VR空間でのドローイングの実現を目指すワコムによる「Wacom Creators' Symposium」レポート

<2>VRアイドル「Hop Step Sing!」快適で刺激的なPV体験への試行錯誤 by 講談社VRラボ

石丸健二氏(株式会社講談社VRラボ 取締役 プロデューサー)

続いて、講談社VRラボの石丸健二氏が登壇。「VRアイドル「Hop Step Sing!」快適で刺激的なPV体験への試行錯誤」と題して、VR空間でのPV制作における知見を共有した。

「Hop Step Sing!」は、講談社がしかけるVRアイドルグループ。Twitterで生活の様子を配信するほか、リアルタイムのライブ配信によるファン交流も行うなど、"実在感"を重要視するグループだ。現在同グループは2枚のシングルで3曲を発売しているが、デビュー曲の『キセキ的Shining!』ではVR初のタイトルということで反省点が複数あったという。

【360°】 Hop Step Sing! 『キセキ的Shining!』 Short ver. 【VRアイドル】ホップステップシング!

大きく取り上げられたのは「ステージを広くしすぎた」「観客のぼっち感」という2点の問題。当初のコンセプトは「アイドルコンサートをパーソナルな体験として楽しんでもらう」というものだったが、「VRの世界はゴージャスで広い空間を体験した方が面白いのではないか」という先入観のもと広いステージを作成した結果、広い空間を埋めるためにキャラクターが縦横無尽に動き回るかたちとなり、結果的にプレイヤーは遠い位置からライブを眺めるだけとなってしまった。また、ステージが途中で宇宙に変わるというギミックを急遽採り入れたのも、画面の変化に乏しくユーザーが飽きてしまうという問題に制作途中で気がついたからだ。

【360°】 Hop Step Sing !『kiss x kiss x kiss』 Short ver.【VRアイドル】ホップステップシング!

そこで2曲目の『kiss x kiss x kiss』では、8m四方の狭い空間にキャラクターを収め、その後は壁が移動して回廊が出現したり、水の中に入っていくなどコンスタントに背景が変わっていくしくみを用いた。また、1曲目にはなかった目線プログラムを導入し、センターのキャラクターが常にこちらを見ているよう設計された他、立体音響も導入したため没入感も向上した。

【360°】 Hop Step Sing !『気ままに☆サマーバケーション』 Short ver.【VRアイドル】ホップステップシング!

続く3曲目の『気ままに☆サマーバケーション』では、海に向かう演出として電車による横移動を試した。VR酔いを心配したが予想外に問題はなく、2作目と比較してモデル面も向上したキャラクターが自分の真横に座るという密接感のある演出などを含め、ポジティブ・フィードバックが非常に多かったという。

以上を踏まえて、快適なコンテンツにするための5つのルールが提案された。「ルール1:VR酔いは徹底的に避ける」「ルール2:基本は前方180度くらいの視野で完結」については、ケーブルなどの関係で後ろを振り向くのが困難なことから挙げられた。また、「ルール3:プレイヤーをひとりぼっちにしない」「ルール4:プレイヤーが誰なのかをわかりやすく表現」「ルール5:インタラクティブ要素」については、視聴コンテンツとして成立することが大前提でありながらも、インタラクティブ機能を使って、ユーザーが干渉できる領域をつくるなどの工夫が疎外感を阻止する結果に繋がると説明された。

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<3>3年間のVRゲーム開発における3D制作フローの進化と課題 by GREE VR Studio

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