Topic 3
迫力とリアリティを兼ね備えたモーションキャプチャによるアニメーション
外部スタジオと協力してのモーション制作
デスペナルティが大きいというゲームデザイン上の理由もさることながら、戦闘に視覚的な緊迫感を与えているのはモーションキャプチャによるリアルなアクションにある。画面タップというモバイルらしい簡単操作でありながら、迫力のある殺陣をくり広げるキャラクターからはストイックな魅力を感じる。ダンスや歌唱シーンといったキャラクターの動きで魅せるゲームを中心に、3Dモバイルゲームにおいてもモーションキャプチャを積極活用する作品が増加傾向にあるが「剣戟」を魅せる本作も、そうしたトレンドを押さえた仕様を採用していると言えるだろう。
本作では業界内でもモーションキャプチャに強いことで知られるCGCGスタジオに協力を依頼。キャプチャしたモーションのクオリティはアクターの演技の質に依存する部分が大きいのだが、今回は殺陣もこなせるアクターを起用することで高いクオリティレベルを実現した。スケルトンやリグに関しても、負荷軽減のための簡素化を無理に行わず、データの可搬性と円滑なワークフローを優先して、DCCツールやUE4標準のジョイントをもつものを使用している。
これらの方針が奏功して、CGCGスタジオから納入されたアニメーションは申し分なく、ガンバリオンの社内では尺の調整や角度の細かな修正を行うだけで完成させることができたという。モーションキャプチャの積極活用は本作において、クオリティレベルを維持しながら効率的にゲームを完成させるために採った重要な施策のひとつだと言えるだろう。
鎧武者に生命を吹き込むキャプチャアニメーション
開発初期のビジュアル
戦闘時におけるキャラクターの一連のアニメーション。【開発初期のビジュアル】を踏襲しながらクオリティアップを行なっていることがわかる
戦闘以外の動きも収録したモーションが使われている。 CGCGスタジオの全面的な協力もあり、ガンバリオンの社内では戦闘中のカメラアングルを踏まえたポーズ調整、武器の重さ(軽量級・中量級・重量級)による振りの速度や傾きの調整など、繊細な演出部分に集中して作業を行うことができたという
リグとランタイム物理シミュレーションのセットアップ
本作のリグ。主目的はキャプチャモーションのながし込みの受け口であるため、シンプルなものが用意されている。調整用に用意されたリグも手足のIKと武器用のリグのみと、非常にシンプルだ
ランタイムではUE4の物理シミュレーションPhATで、キャラクターの前垂れや布がアニメーションするように設定されている。当初は肩鎧や喉輪などもPhATで制御していたが、めり込みの回避や理想的な動きにするた めのパラメータ設定の難度が高く、手間がかかりがちだった。さらに、効果が期待ほどではなかったこともあり、柔らかい揺れものや目につきやすい部分のみPhisicsTypeで制御し、胴体など物理設定をしないボーンは全てkinematicに設定して、シミュレーションの影響外としている
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