>   >  Cygamesと測量専門会社のタッグが実現した、空撮フォトグラメトリーとレーザースキャンによるスタジアムの3Dモデル化~CEDEC 2018レポート(6)
Cygamesと測量専門会社のタッグが実現した、空撮フォトグラメトリーとレーザースキャンによるスタジアムの3Dモデル化~CEDEC 2018レポート(6)

Cygamesと測量専門会社のタッグが実現した、空撮フォトグラメトリーとレーザースキャンによるスタジアムの3Dモデル化~CEDEC 2018レポート(6)

<2>計測の前提と実際の手順

林 大貴氏(株式会社パスコ 環境文化コンサルタント事業部 技術センター 文化財技術部 技術二課)

続いて株式会社パスコより林 大貴氏が登壇、導入としてパスコの業務内容が紹介された。「パスコでは主に文化財の計測、自社仏閣、古墳などの計測を行なっています。従来手法では計測が困難な地形を3次元計測機器で計測することが主な業務です。また、被災地に行って迅速な被災データの処理にも従事しています」(林氏)。

今回のような大規模空間の3次元測量手順は、次のとおり。

  • 1:地理空間の基準となる基準点を作成
  • 2:UVAを利用した大縮尺の空中写真測量
  • 3:地上レーザーを利用した小縮尺の測量
  • 4:設置標識点を使用した位置合わせと整合

前提として、大規模な現実空間を3次元化する場合に問題となるのは「空間の破綻」だという。大規模な建造物を計測する際は、1箇所で撮影して終わりということはなく、何度も移動しつつ、建造物の周りを計測していくことになる。何度も計測していくと、そのたびに小さなズレが蓄積していずれ大きなズレになり、3次元形状が破綻してしまう。これを測量用語で「誤差の伝播」と呼ぶ。そのため、誤差を小さくする、誤差が収束するための工夫をする必要がある。

何度も計測するうちに蓄積した誤差は、やがて形状の破綻をもたらす

「どんなに頑張っても、誤差がなくなることはありません。今回使用した方法は、基準点を設け、全体として整合のとれた形状を計測するという方法です」(林氏)。この手法自体は、日本全国を測量して歩き、現代的な地図を完成させた伊能忠敬が使っていた1800年頃の手法と同じで、基本的な考え方は進化しておらず、計算式としては古くから使われてきたものだという。

現実世界をモデル化する際には必ず誤差が出てくることの例として、「延々と伸びる海岸線」という逸話が紹介された。「海岸線の総延長が500mとします。これを拡大するともっと細かい誤差が出てきます。500mに見えたところが、拡大してみると実際は501mかもしれません。どこかで拡大をやめないといけませんが、これは求める縮尺がどれくらいかによって変わってきます。つまり、誤差の許容範囲はどのくらいなのか? どの程度まで誤差を許容するのか?といったことです」(林氏)。

「延々と伸びる海岸線」問題

縮尺1/2,500の地図では、10mの距離が地図上の4cmの線になる。これは拡大すれば拡大するほど誤差が目立つ。測量の成果をどのように利用するかによって、誤差の許容範囲を決める必要があるというわけだ。「今回の場合、人の目線で見るため水平精度±12cm、高さ精度±25cmを目指しました」。地図の場合はこの精度が法令で決められているが、ゲームやCGの場合は許容誤差を自分たちで決める必要があるという。

次ページ:
ベストアメニティスタジアムの測量手順

特集