>   >  技術と仲間で乗り越える!「UI!UI!UI! ~トライ&エラーに負けない技術~」|CGWCCレポート(7)
技術と仲間で乗り越える!「UI!UI!UI! ~トライ&エラーに負けない技術~」|CGWCCレポート(7)

技術と仲間で乗り越える!「UI!UI!UI! ~トライ&エラーに負けない技術~」|CGWCCレポート(7)

5:ブラッシュアップ

最後の工程がブラッシュアップだ。どんなUIも実装して、実際にテストしてみなければ、本当に意図通りの内容になっているかはわからない。逆にできるだけ実装までを短期間で行うことで、ブラッシュアップにたっぷりと時間がとれるようになり、完成度を上げることができるのだ。もっとも、その際にもコツがある。

 5-1:チェック環境を整える(重要)
 5-2:他パートが絡むところを優先
 5-3:まんべんなくクオリティアップする
 5-4:意見を集めるときのコツ(重要)

まず重要なのは、UI単体でテストできる環境を構築することだ。特定のUIをみるために毎回ゲームを起動したり、プレイを進めるのは非効率的。UIチェック用の専用レベルを用意したり、起動と同時に任意の画面が表示できるようにしたりすると、一気に効率がアップする。特定の画面をすぐに表示させられるデバッグコマンドを用意してもらうなども有効だ。いずれもUI/UXデザイナーから声を上げることが必要になる。

また、チェックと修正で気を付けたいのがヒューマンエラーだ。開発終盤でステージの内容がロールバックするのは、絶対に避けたいところ。もっとも、起こりえるヒューマンエラーは、遅かれ早かれ発生する。ポイントはヒューマンエラーを発生させないしくみをつくることだ。ここでもまた、UI/UXデザイナー視点で欲しい機能をエンジニアにオーダーできるようにすることが必要になる。「人が悪いのではなく、"しくみが悪い"という意識をもつことが重要です」。

一方でブラッシュアップ時には、3D演出とUIが混在するシーンなど、他パートが絡むところを優先するようにしたい。ともすれば誰も手を着けずに、そのままになっている危険性があるからだ。UI/UXデザインは、アートワークで唯一全ての工程を俯瞰しているパートなだけに、こうした点に敏感になれるのが強みだという。通常モデル・エフェクト・サウンドなどのアセット発注はプランナーが行うが、UI/UXデザイナーも率先して目を光らせると良いだろう。

エンジニアの残工数を意識することも重要だ。全ての案件には納期があり、優先順位が存在する。ときにはUI/UXの改善を差し置いても、先に手を着けるべき部分が存在する。その上でフロントエンドのクオリティアップに要する期間を確保するよう、先手をとって声を上げていくのだ。「こうしたことができるのも、UI/UXデザインが究極の中流工程だからです。様々なパートと関係性をもつUI/UXデザイナーだからこそ、見えてくるものがあるはずです」(太田垣氏)。

最後に社内から意見を集める際のコツについても補足された。太田垣氏はUI/UXデザインについて、誰もが「ひとこと言いたくなってしまう」ものだという。そこでテストプレイ時には、実装進捗としてのステージを明言するなどして「どこを見てほしいかポイントを明確にする」ことが重要になる。また、寄せられた意見を適切に分類して、要望の本質を見極めることが必要だ。他人の「言いなり」で作業をするのでは、チームもお客様も決して幸せにならないという。

運営タイトルが増加する中、求められるUI/UXの体制強化

このようにUI/UXデザインはプロジェクトの最初から最後まで気が抜けないセクションだ。これは全ての工程で、常にトライ&エラーが発生するからでもある。しかし、太田垣氏はだからこそ楽しいパートだとも強調する。トライ&エラーが頻発するのは、UI/UXがそれだけユーザーに近い存在だからだ。だからこそ、襲い来る問題に立ち向かうための「負けない技術」をもつことで、試行錯誤がぐっと楽しくなる。

また、UI/UXデザインはゲームがリリースされた瞬間にクリエイターからお客様のモノになると補足された。特に近年では運営タイトルが増加しているため、この意味がより大きくなっている。売り切りタイトルでは開発に際して100点満点の着地が求められる。これはともすれば、UI/UXデザイナーのエゴを押し付けることにもつながる。一方で運営タイトルでは、長期にわたって80点を取り続ける姿勢が必要だ。そのためにはUI/UXデザインのタイミングとクオリティのバランスを、しっかりと見極めることが必要になる。その前提となるのが、UI/UXデザインの体系化と開発力の強化というわけだ。

最後に太田垣氏はこのように語り、講演をまとめた。「万人にとって完璧なUI/UXデザインは存在しません。きっと、いつまでも改良を続けることになります。怒濤のごとく押し寄せる意見と修正の嵐に、心が折れそうになる日もあるでしょう。そんなとき『技術』と『仲間』があなたを支えてくれます。チームメンバー&お客様と一緒に、ベストなUI/UXデザインを探求し続けましょう」。

講演者インタビューはこちら>>

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