<6>線画抽出用のマテリアルを使う
私はFreestyleをメインとして使っていますが、場合によってはFreestyleの使用を避けることがあります。Freestyleのレンダリングはシングルスレッドで行われるために、スカルプトモデルやオブジェクトの多い場合など、ポリゴン数が多いシーンでは非常に時間がかかってしまうからです。私はコンポジターのノードをFreestyleの補助目的に使うのですが、このようにFreestyleが苦手なシーンではノードのみで出力する方法も考えます。
コンポジターのノードを使ってパスから線を抽出する方法は先に述べましたが、シェーダーエディターで線抽出用のマテリアルを組む方法もあります。ノーマルや深度、オブジェクトごとに色を付けるなどの設定をマテリアルの情報にもたせます。この方法の場合レンダリングするオブジェクト全てにこのマテリアルを反映させる必要があるために、マテリアルオーバーライドを使いたいのですが、この機能はまだBlender2.81のEeveeにはありません。いずれ実装されるものとも思いますが、今現在ではCyclesを使用する必要があります。
1.マテリアルとレンダリングの設定
シェーダーエディターで線画抽出用のマテリアルをつくります。ノーマル情報やオブジェクト情報をコンポジターのソーベルフィルタの線抽出ができるようにノードを組んだものです
レンダープロパティでCyclesに切り替えます。線抽出用が目的なので多少のノイズは無視し、レンダリング時間短縮のため[サンプリング→レンダー]の値を1にします
[ビューレイヤープロパティ→オーバーライド→マテリアルオーバーライド]に線画抽出用のマテリアルを設定します
2.レンダリング結果
レンダリング前【左】とレンダリング後【右】。線抽出用のマテリアルでレンダリングした画像をコンポジターのソーベルフィルタで抽出し、線を黒色にします
実際の制作例
最後に、実際にBlenderで描いた漫画のひとコマをご紹介します。
完成
Blenderの開発力に期待
BlenderにFreestyleが実装されたのは2.67だったと思います。私はこのときFreestyleに出会い、Blenderを漫画制作に使い始めました。昨年、Blenderは2.8になりEeveeという強力な機能が追加されました。しかし、それにともない2.79までの標準レンダラは廃止されてしまいました。その影響でノンフォトリアルの分野ではそれまでのテクニックのうち、使えなくなったものもあります。私も2.8を漫画制作に使う上で2.79より不便だなと思う箇所がいくつかあります。けれど、Blenderの開発スピードはとても速く、今不便に感じているところもいずれ新機能や改善で解決していくことでしょう。2.8で強力になったグリースペンシルや実装が予定されているLANPRも漫画制作に活かせそうです。今回の記事でBlenderや3DCGを漫画制作に取り入れてみたいという方がひとりでもいれば幸いです。