>   >  「作画に追いつき、追いこせ」の時代は、終わった?松浦裕暁社長が見すえるアニメCGの未来とは〜サンジゲン創立10周年記念インタビュー〜
「作画に追いつき、追いこせ」の時代は、終わった?松浦裕暁社長が見すえるアニメCGの未来とは<br>〜サンジゲン創立10周年記念インタビュー〜

「作画に追いつき、追いこせ」の時代は、終わった?松浦裕暁社長が見すえるアニメCGの未来とは
〜サンジゲン創立10周年記念インタビュー〜

<3>創立10周年から次なる5年は、世界市場に向けて

――昨年にはサンジゲン福岡スタジオを開設されましたが、福岡という場所を選んだ理由は?

松浦:まず、福岡を選んだのは単純に若年層が多いという、人口比率に依るものです。

――ゲーム会社が多い地域ですから、そのあたりも関係してくるのかなと思いました。

松浦:いえ、ゲーム会社があると、何か表現をしたいと燻っている若者もゲーム会社に流れてしまうので、そうはならないんですよ(苦笑)。こと人集めは根気ですね。

――そして、すでに京都スタジオも存在しますが、こちらを含めサテライトスタジオ体制を推し進める目的についてお聞かせいただけますか。

松浦:京都スタジオがそろそろ単独で1話分を制作できそうなんですよ。福岡スタジオも似たような感じにして、東京の一班としてできるといいなと思います。演出家が東京にいるのでハードルはありますけど、やがて地方スタジオとしてグロス受けできるようになって、行く末は1タイトルまるごとできるようになってほしいですね。

僕たちにとってはデジタルネットワークは当たり前のことで、地方で展開するのは単純に全国から優秀な人材を集めたいだけなんです。東京に来られない人もいますから。サンジゲンのスタッフも将来は実家の近くで働きたい人もいますし、そういう人は地方にスタジオがないと辞めてしまうので、そんなもったいないことはしたくない。海外でも準備は進めていますが、日本人をまず集めたいですね。

――海外展開でお話できることはありますか?

松浦:まだちょっと話せる段階にはありませんが、今年は進めていく考えです。

――2016年のアニメ業界において注目している事柄についてお聞かせ下さい。

松浦:今年だけではないかもしれませんが、ビデオパッケージが売れなくなってきているのは明らかですから、これまでとコンテンツの売り方が変わるのはまちがいないでしょうね。ただアニメ映像を制作するというだけではおそらく済まなくなるし、ただつくるだけではますます過酷になってくるんじゃないかなと思います。

特にフリーランスで仕事をするのは非常に難しくなるでしょう。僕ら自身も『009 RE:CYBORG』の頃と比べてシステム(ワークフローならびに技法)は全然ちがうし、これからも独自に進んでいくでしょう。そうした状況で途中からフリーランスで関わろうとしても、覚えることが多すぎる。ついていくには、ひとりでできる作業量をとっくに超えているので難しいと思います。

しかも、ビデオパッケージ向けのアニメのつくり方とは変わってきているんです。だから僕は投資も含めて、そうした取り組みをいち早くやっている会社に入って、みんなでより大きな、世界で戦うような作品をつくっていきたいという希望があります。目の前で見えるものだけではなく、より大きな仕事を、重要な位置に行くために早くつくってもらいたい。2016年は僕らがその一歩を踏み出すのかもしれないし、何かが変わる年になるんじゃないかなと思います。

――今年サンジゲンは10周年を迎えますが、現在の状況は10年前にどのくらい見通されていましたか?

松浦:見通しはありました。むしろちょっと遅かったなと思っているくらいです。5年で3DCGのTVシリーズを出したかったんですよ。実際は6年目に『009 RE:CYBORG』、7年目に『アルペジオ』、10年目に『ブブキ』ですから。そして作品をつくれるようになったら、次はヒット作を出さなければならない。それを出すまでバッターボックスに何回立つかという話でもあり、今はようやくその入口に立っているという状況です。ちょっと遅かったなと思いますが、10年で立たせてもらっているのはありがたいとも感じています。

――この次の10年はどんな風に考えていますか?

松浦:全然ちがうことをやっているかも(笑)。とにかく世界ですよ!今も出ているといえば出ているけど、僕のイメージする世界ではありません。世界市場に向けて、世界と一緒につくるというのが次の10年、できれば5年で達成したいですね。そのためにウルトラスーパーピクチャーズ(USP)というグループもあります。

映像はもちろん出していきたいと思っていますが、アニメは映像を売るだけのビジネスではないと思っているので、USPも含めてIPを持つことを考え、徐々にそれをつくっていかなければいけないなと思っています。


【作品紹介】

TVシリーズ『ブブキ・ブランキ』
毎週土曜22:00からTOKYO MX / AT-Xほかにて放送中!

<STAFF>
原作:Quadrangle
監督:小松田大全
キャラクターデザイン:コザキユースケ
ブランキデザイン:吉川達哉
ブブキデザイン:あさぎり
シリーズ構成・脚本:イシイジロウ, 北島行徳
メカニックデザイン:高倉武史
プロップデザイン:岩永悦宜
サブキャラクターデザイン:尾崎智美
ビジュアルデザイン:有馬トモユキ, 瀬島卓也
CGスーパーバイザー:鈴木大介
モデリングディレクター:足立博志
テクニカルディレクター:金田剛久, 小嶋理子
アニメーションディレクター:植高正典, 石川真平, 三村厚史, 中村基樹
美術監督・設定:金子雄司
色彩設計:垣田由紀子
撮影監督:池田新助
編集:廣瀬清志
音響監督:明田川 仁
音楽:横山克
音楽制作:KADOKAWA
制作:サンジゲン
製作:BBKBRNK Partners

© Quadrangle / BBKBRNK Partners

http://bbkbrnk.com/

Profileプロフィール

松浦裕暁/Hiroaki Matsuura

松浦裕暁/Hiroaki Matsuura

1972年生まれ。福井県出身。株式会社サンジゲン代表取締役。
2006年3月に株式会社サンジゲンを設立。様々な作品で3DCGプロデューサーを務め、3DCGで作るリミテッドアニメーションという新しいアニメの表現を確立していく。2012年10月にはフル3DCGの劇場作品『009 RE:CYBORG』を制作、翌年2013年10月には『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』でTVシリーズでのフル3DCG作品の制作に挑戦した。
また、2011年には、サンジゲンを含む5社をグループとした「株式会社ウルトラスーパーピクチャーズ」を設立。クリエイティブとビジネスの両面から日本のアニメを見据え、正しくものづくりをして、市場を広げることの実現に向けて意欲的に取り組んでいる。

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