>   >  スマホ"インディーズ"にも波及しはじめた3Dビジュアル  Vol.4 全世界で圧倒的な人数にプレイされた"脱出ゲーム"『DOOORS』シリーズを生み出したデザイナーの素顔
スマホ"インディーズ"にも波及しはじめた3Dビジュアル  Vol.4<br> 全世界で圧倒的な人数にプレイされた"脱出ゲーム"<br>『DOOORS』シリーズを生み出したデザイナーの素顔

スマホ"インディーズ"にも波及しはじめた3Dビジュアル  Vol.4
全世界で圧倒的な人数にプレイされた"脱出ゲーム"
『DOOORS』シリーズを生み出したデザイナーの素顔

Unityへの移行がさらなる
ポジティブを生み出す

加えて、Unity導入前後で大きく変わったのは、演出面の強化だ。

「標準機能やアセット導入、そしてパラメータ設定だけで、火や水、煙といったパーティクルや流体的な動きの表現、そして物理演算ができる。本当に手軽になった。また、そうできちゃうのはうれしいと感じる同時に、ますます参入ハードルが下がって、競争相手がどんどんできちゃうなあ、とも思いますが(苦笑)」

そう語る野々山氏が挙げた機能が、Water Mobile、Fire Mobile、Storm Mobileなどといった特殊効果マテリアルで、よっぽど特長的な見た目づくりをしたい、といった強いこだわりが無ければ、これで十分な演出ができるという。モバイル向けに軽量化もされており、パラメータを調節するだけで、十分オリジナリティのある効果になる。

また、謎解きにもよく用いられるオブジェクトの破壊などといった画面演出も、単なる静止画表現ではなく手軽に物理演算で動かせる。手間をかけることなく、こうした表現が水準以上のクオリティで可能になったことで、ゲームの企画部分や手触り感、全体のバランス感といった部分により気を配ることができる。

▲Unityのこれらの特殊効果マテリアルは、軽い動作で使え、見映えもするためちょっとした演出にはもってこい





▲破壊オブジェクトはShadeで作った後、1つ1つ別オブジェクトとして出力してUnityで物理演算にかけて壊す

ただ、標準機能で事足りることが多いとはいえ、そこはもちろんデザイナー出身、ビジュアルへの追求を怠っているわけではない。Unityも使い慣れてきたため、いま開発しているゲームでは、さらにさまざまなリアルタイム表現の工夫もし始めている、と野々山氏。常に手軽で良い効果の出るアセットはないかというのはチェックしていて、最近では頂点シェーダを用いて異なるマテリアルをブレンドできる「Shader Forge」がお気に入りとのこと。

「とにかく何をするにもコードを書くことが劇的に減った。いままでは実装も確認もとにかく面倒! って思ってましたから(笑)。デザイナーの自分にとっては環境移行して良かったと感じることが多い。あとスマホゲームだけではなくて、今後やりたいことが出てきたのも、Unityの存在が大きいと思いますよ」。

▲Shader Forgeによるマテリアルブレンドの例。「岩肌の質感ベースに土が被っている」というようなマテリアル表現も手軽に可能になり、複雑にオブジェクトを作り込まずとも遠景に表情を出せる

インタビューを通じて感じたのは、58Works野々山氏の"総合力"とでもいうのだろうか。万人が扱いやすく、万人が適度な歯ごたえを感じ、万人が面白いと思える、そんな企画力があり、ビジュアルにおいては使える機能をうまく組み合わせていくことによって、万人が美しい、と感じるデザインをつくり上げていく。

CGスキルにしてもプログラム力にしても、飛び抜けた個別の"技術力"を感じさせるものは、あまりないのかもしれない。しかし、全世界でこれだけの支持を受けるゲームを生み出せる秘訣というのは、そのさまざまな要素をバランスよく組み合わせられる"総合的な力"と、常に新しいことに興味を持ち、市場としての新たなジャンルへの創作に挑戦し続けている姿勢にあるのだろう。

今後についても、「次はVRコンテンツをつくってみたい」と開発体制も整え、さらに別の領域へと野々山氏のチャレンジが続く。また直近では、個人的に大好きだったという『ゴルゴ13』とのコラボゲームもリリースされた。

▲58 WORKS初のコラボ作品、『ゴルゴ15×DOOORS』。謎解きはもちろん、ストーリーや台詞等の企画部分とグラフィックスは、野々山氏がほとんど一人で手掛けている

「そんなに大それたことって別に考えてなくって。仕事はあまりやる気にならないからただ興味を持ったことを好きにやってるだけです(笑)。スマホアプリもいまやレッドオーシャンな感じになってきてますしね。効率的に仕事を、とかビジネス的に云々、とかあまり考えていなくって、VRについても個人的に面白いと感じて、つくりたい気になってるのでやる。そういう思いが大事かなー、と」

深く考えてませんよ、と語る野々山氏だが、その興味を持った分野における実現力とそのコンテンツのクオリティ、マスユーザーの手触り感を意識したバランス設計、そして今後の市場などを見据える肌感覚、といったものには、確かなものを感じざるを得ない。

TEXT_SADAMU TAKAGI(@zetto_san

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Profileプロフィール

野々山鉱二 /Koji Nonoyama(58works)

野々山鉱二 /Koji Nonoyama(58works)

合資会社オダコー(58WORKS)/代表
広告代理店でのDTPデザインを経て2000年に独立。受注案件をこなしつつ、2007年よりFLASH脱出ゲームの制作を開始。2011年に公開したスマートフォンアプリ「DOOORS」がヒット。以降、ゲームアプリの開発を中心に活動中。

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