<2>監督が掲げたビジョン
本作のクリス・コロンバス監督は、この映画を少しノスタルジックなムードをもたせるビジョンをもっていたという。さらにその上で、オリジナルゲームでは低解像度のビットマップだったキャラクターたちを現在のCG技術で現実世界にどのように蘇らせるべきかについても明確なイメージを抱いていたそうだ。
「コロンバス監督は素晴らしいディレクターで、VFXやアニメーション技術を完璧に把握しています。彼は各キャラクターたちがオリジナルのゲームに忠実であるようにと常に言っていました。物語後半でキャラクターたちが2次元から飛び出して、3次元空間で動き回るようになっても、ずっとオリジナルのルックやフィールをもたせたかったのです」。
キャストたちに演技指導をするクリス・コロンバス監督(手前・右)
<3>プリビズとアニメーション作業
この映画では随所に素早いカメラワークと、大量のキャラクターの素早い動きがあふれている。これらのシーンの設計を行なったのはDigital Domainのプリビズスーパーバイザーであるスコット・メドウス/Scott Meadows氏であった。
「スコットは、Digital Domainのオフィスのあるロサンゼルスと、撮影地トロントの両方でプリビズアーティストたちを上手く導いてくれました」。メドウス氏は総合VFXスーパーバイザーのマシュー・バトラー/Matthew Butler氏やクリス・コロンバス監督、それにアニメーション・ディレクターのクレイマー氏らと密接にコミュニケーションしながらプリビズ制作を進めていった。素晴らしいカメラワークの多くはプリビズの段階で考案され、実写撮影時のガイドとして使用された。そして撮影後のアニメーション工程でさらにリファインされたという。
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映画『ピクセル』メイキング特別映像
クレイマー氏自身は『ピクセル』プロジェクトには15ヶ月従事していた。プロジェクトの起ち上がり当初は、主に各キャラクターのルック&フィールの開発が行われ、それと平行してボクセル化の技術開発にも着手していたとのこと。
ショット制作に入ってからは、アニメーションチームは12人に増員され、3人のリードアニメーターが主要なシーンを1シーケンスずつ任された。フランキー・ステラト/Frankie Stellato氏は『センチピード』のシーン、エリザベス・バーナード/Elizabeth Bernard氏は『ドンキーコング』のシーン、そしてジャック・カスプルザック/Jack Kasprzak氏が『パックマン』のシーンを担当した。
キャラクターのアニメーション付けは、オリジナルのゲームキャラクターのフィーリングを再現するところから始まった。
「それぞれのキャラクターの最も特徴的な動きについては、できる限りオリジナルに忠実に見えるように心がけました。各キャラクターについては各ゲームタイトルの版元に監修を受ける必要もあったので、その意味でもわれわれはデザイン面とモーション面の両方についてしっかりやりたかったのです。アニメーターたちは短いイーズインやイーズアウトを使って、質量を感じさせつつも、オリジナルの動きを確実に感じられるように心がけて動きを付けていきました」。
パックマンについては、そのスピード感、パクパク食べている動き、クイックな方向転換が再現された。しかしこれも全てゲームキャラとしての動きと、現実世界での物理法則のバランスをとる必要があった。ドンキーコングは、特徴的なポーズは全て再現する必要があり、オリジナルゲームでの独特の制限された動きも再現された。「ドンキーコングの場合、不規則にスピードを変化させたり、火を点けたりする動きがとても頭の痛い問題でしたが、面白い挑戦でもありましたね」。
そして、センチピードは非常に複雑なメカニズムで動き、弾丸がぶつかったり、きのこから離れたりするときには常に長い胴体を分裂させる。「私たちはセンチピードの素早い動きと90度の方向転換については、ゲームよりも少しゆっくり目にしました。彼を生き物のように見せるための挑戦はとても面白かったですね。特にゲーム世界が壊れて、現実世界の人々と干渉するようになってからは大変でしたが」。