>   >  誰でも簡単に高品質なVFXを。創立者に聞くVideo Copilotの信念
誰でも簡単に高品質なVFXを。創立者に聞くVideo Copilotの信念

誰でも簡単に高品質なVFXを。創立者に聞くVideo Copilotの信念

<2>誰にでも手に入れやすいものを提供したい、Video Copilotの戦略

ーーVideo Copilotの無料チュートリアルに助けられている新人アーティストは多いと思います。ビデオチュートリアルはどのくらいのペースで更新されていますか?

クレイマー:1ヶ月に1本ほどですね。以前は月に2~3本ぐらいのペースでチュートリアルをつくっていましたが、『スターウォーズ』の制作に参加したときは忙しすぎたため、少しお休みしました。私たちのチュートリアルはソフトの使い方というよりは、人々に「ワォ!」と驚いてもらうにはどういう演出にすべきかを気にしていて、それらの効果をソフトウェアで実現するにはどうしたらよいのかを常に考えています。映像の最終形を考えた上で、チュートリアルを提供しているのです。

Realistic Rain Drop FX Tutorial! 100% After Effects!

ーーOptical Flares、Element 3Dなどは、安価なのに多機能で多くの人たちに使われています。さらに無償で提供されているプラグインも数多くありますが、それはなぜですか?

クレイマー:我々のツールの思想は、VFXを素晴らしいものにしたいということです。頻繁なアップグレードでお金を取る会社もありますが、私たちはそうではありません。Video Copilotのプラグインはバージョンが0.5上がるだけで、多くの新しい機能が付加されています。その理由は、会社を起ち上げたときの思想と同じですが、"誰でも手に入れやすいものを提供したい"という思いにあります。映像制作者に価値のある機能を追加していければ良いと考えているのです。

Optical Flares製品サイト

クレイマー:無料のプラグインは、たくさんのアーティストに使ってもらい、我々のプロダクトや、会社、アイデアを知ってもらうために提供しています。多くの人が簡単に使えるツールに驚き、楽しんで活用してもらえれば良いのです。また購入前にどれくらい使いものになるか試してもらうために、無償で提供しているものもあります。特に『スターウォーズ』風のライトセーバー効果を作るSABERという無償プラグインは、簡単に利用し、楽しさを感じてもらうには最適です。無償のものでも、細かい部分までこだわってつくり込んだものを提供しています。

New Plugin Trailer | SABER

ーー開発者であると同時に、ご自身もVFXアーティストであるからこそ魅力的なツールが提供できるのでしょうか?

クレイマー:私自身がVFXアーティストであることは、ツールを開発する上で絶対的に有利です。実際に、私がツールのレイアウトや機能を提案し、それをプログラマに実装してもらっていますから。例えばTwitchでは調整の方法を簡単にしたり、Element 3Dではまず「絶対的に必要!」という機能から実装して、その後、操作が複雑な部分やよく使う機能は設定値をプリセットにして使いやすくするなど、機能や使い勝手をどんどん向上させています。

ーーよりよいツールを提供するために、心がけているのはどんな点ですか?

クレイマー:私たちはユーザーの声をとても気にかけていて、いつも皆さんの要望をどうやって自分たちのプラグインに反映させるのかについて考えています。例えばOpenGLを活用しGPUでリアルタイムにレンダリングし、短時間でアーティストが求める品質を実現するといった具合です。世の中には様々なハイエンドツールがありますが、画が完成するまでに時間がかかることが多いです。日本の放送局などは時間がなく締め切りが厳しいことで知られていますが、そういった現場では素早く合成できて、見た目が良いツールが求められています。Video Copilotはその領域をねらって、ハイエンドアーティストが満足するツールを提供しているのです。(こっそり小声で)Element 3Dの新バージョンではプレビューが超高速になりますよ!

Element 3D V2.2 New Features!

<3>「リアルさ」を突き詰めることの難しさ

ーー映像を制作する際に、現実の事象のリアルさとVFX演出としての事象の現実感、どちらを重視していますか?

クレイマー:実写が良いと考える人もいれば、CGでも良いと考える人もいます。なのでリアルとフェイクとのバランスが重要です。実写とCGどちらを使うにせよ「いかにリアルに見えるか」ということが大切なのです。例えばCGで炎をつくることはできますが、完璧すぎて不自然に見える場合もあります。なのでCGの炎にはグレインノイズや塵などの要素を入れ、自然に見えるようバランスをとっています。一方、実写素材は本物がもつリアルさが良いところなのですが、使えない部分があったり、映像に馴染ませたいのにアングルが合わないということもあります。そのような場合はCGを使ってリアルに見せるなど、状況によってCGと実写を使い分け、最終的にどう自然に見せるかが重要なのです。

ーーVFXアーティストとしての苦労や挑戦を教えてください。

クレイマー:難しく感じていることは、魅力的な映像をつくりつつ、いかにリアルに見せるかを突き詰めることです。単なる「リアル」ではなく「リアルさ」は、とても難しい部分です。具体的に言うと、車の衝突シーンを制作するとき、普通に車がクラッシュしてリアルに見せることはできるのですが、そのままだと映像に面白みがないのです。車の衝突シーンのどこを強調したら良くなるのか、リアルと演出のバランスをどうとって「リアルさ」を表現するのかが重要だと感じています。

次ページ:
<4>クレイマー氏が教えるファイル管理のコツ

Profileプロフィール

Andrew Kramer/アンドリュー・クレイマー

Andrew Kramer/アンドリュー・クレイマー

Video Copilot社の創立者。VFX制作のための無償チュートリアルをブログで公開したのをきっかけに、世界的に注目されるVFXアーティストに。『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』や『スター・トレック イントゥ・ダークネス』の制作にも携わる。
www.videocopilot.net

スペシャルインタビュー