>   >  誰でも簡単に高品質なVFXを。創立者に聞くVideo Copilotの信念
誰でも簡単に高品質なVFXを。創立者に聞くVideo Copilotの信念

誰でも簡単に高品質なVFXを。創立者に聞くVideo Copilotの信念

<4>クレイマー氏が教えるファイル管理のコツ

ーースキルアップのコツやアドバイスがあれば教えてください。

クレイマー:ショートフィルムをつくってみると様々なことが学べるので、オススメです。作品を公開して、多くの人に見てもらう機会も得られます。監督の立場やアーティストの立場になって考え、どうしたらもっと良い映像をつくることができるのか、実験してみると良いかもしれません。まずは1本ショートフィルムをつくってみれば、そこから様々な新しいアイデアが生まれてくると思うので、長編を1本つくるよりも、ショートフィルムを何回もつくって、アイデアを具現化していくようにすると良いと思います。

ーー高機能で多機能なツールを使いこなすコツはなんでしょう。

クレイマー:何かをつくり始めるときに、はじめからきちんとデザインして、最終的にどういう映像になるのか、見本やサンプルをつくって試してみることが重要です。まずはラフでも良いので、どういう映像になるのかを確認しながらつくっていくと上手くいきます。最終的なイメージを具体的に固めてからつくりはじめないと、大抵の場合、失敗すると思います。またアセットを綺麗にまとめておくことも大切です。小さなことかもしれませんが、いつもまとめて管理し、ファイルや素材をバラバラにしないで綺麗に整理しておくことが重要です。デスクトップ画面にバラバラに置かないようにし、綺麗に整理しておくで、アイデアの点と点が繋がって線になっていくのです。参考までに、私のファイルの整理の仕方を紹介します(※下記参照)。

(1)プロジェクトフォルダ全体
(2)カテゴリ
(3)プロジェクト
(4)2Dアセット
(5)3Dアセット
(6)参照ファイル(制作の参考にするためのリファレンス素材)
(7)プリビズ
(8)After Effectsフォルダ
(9)メインアセット

レンダリングフォルダは、

(1)テスト
(2)ショット
(3)アウトプット
(4)ファイナルレンダー

と分けておくようにしています。

クレイマー:また、プロジェクト名の付け方は、_v1、_v100などと、数を増やしていきます(頭に「_」を付けるのは、ファイル名順に並べたとき最初に来るようにするため)。プロジェクトによっては、フォルダの数が100種類ほどに増える場合もあるので、versionA、versionB2やfinal-super-finalといったようにバラバラに名付けると管理が大変で、最悪ですよね(笑)。Element 3Dでは、Save 3Dの設定で、全てのセッティングを1つのファイルに保存することができます。プロジェクトフォルダに参照リンクを含め全てを保存し、何かあってもすぐ元に戻すことが可能です。

ーー様々なコンポジットツールがあるなかで、After Effectsに力を入れているのはどうしてでしょうか。

クレイマー:After Effectsが安価であることが理由のひとつです。また、NUKEなど良いツールはたくさんあると思うのですが、After EffectsはPhotoshopとの親和性がとても高い点も特長です。NUKEなどの高価なツールは大きなプロジェクトのパイプラインに組み込まれて利用するには良いと思いますが、私達は個人や小さなチームのために、After Effectsに力を入れています。

ーー「カメラを買おう!」とアドバイスされていますが、その理由は?

クレイマー:カメラで写真を撮ることによって、様々なことを学ぶことができるためです。モーショングラフィックスの"究極"はフォトリアリズムなので、カメラで様々なものを撮影し、それをモーショングラフィックスの中で再現し、どういった「ボケ」()になるのかをしっかり学習するのです。"究極"と言った理由は、実際にあるものを理解して、自分なりに再構築することがとても重要だと考えているからです。現在、カメラのシミュレーションをする新しいプラグインの開発準備をしているのですが、カメラレンズのキャリブレーションやボケ方の調整、カメラの動き、リアルタイムのモーションブラー、カメラブラー、グレインなど、カメラが行なっていることを再現する機能を実装できないかと考えています。

※ボケ:被写界深度を浅くした際の、焦点周辺のぼやけた領域の美しさのことを示す。英語でもBokeh

<5>日本のVFXアーティストへ伝えたいこと

ーークレイマーさんは、どのようにして今の仕事に就いたのですか?

クレイマー:11歳のときに、Tyco Videocamというおもちゃのビデオカメラを手に入れたのが映像制作をはじめるきっかけでした。はじめてつくったVFXは、ジャンプしたカットだけを繋いだ映像です。その後、高校生のときにFinal Cut ProやVHSビデオカメラを扱うようになり、グリーンスクリーンでの撮影がとても面白かったのを覚えています。Final Cut Proでシンプルなエフェクトをつくったり、After Effectsの体験版を使ってシンプルなタイトルをつくったりしていました。After Effectsのバージョンが4.1の頃でしたね。チュートリアルのサイトをつくり始めたのもその頃です。当時はILMのWebサイトに書いてある情報をよく参考にしていましたね。というのも、その頃に観た映画『ジュラシック・パーク』(1993)のマットペイントに感動し、いったいどうやってつくっているのかと、VFXやコンポジターに興味をもったのです。ほかにも映画『マトリックス』(1999)にあったように、壁を走っていくシーンを真似たりもしていました。撮影とVFXの技術、両方を同時に試していましたね。

ーーVideo Copilotの様々なツールのおかげで3DCGでつくらずとも、凝った映像を制作できるようになりました。それについて何かご意見はありますか?

クレイマー:3DCGでフォトリアリスティックを追求すると、レンダリングにも時間がかかり、家庭用ムービーのように簡単にはつくることができません。一方、エフェクト処理はYouTubeにたくさん格好良い動画があるように、誰でも手軽につくることができます。自分としては、全ての映像を3DCGに置き換える必要はないと考えています。ちょっとドアを開けるといった映像であれば3DCGではなく、グリーンバックで実写撮影してしまった方がお金も時間もかからない。3DCGは世の中にない、バーチャルなものをつくるときにこそ活用すると良いのではないでしょうか。

ーー最後に日本のVFXアーティストにコメントをお願いします。

クレイマー:Video Copilotを暖かく迎えてくれてありがとうございます。そして「VIDEO COPILOT LIVE!」に参加してくれた方々に、ありがとうと伝えたいです。「VIDEO COPILOT LIVE!」に参加してくれた方々との情報交換はとても嬉しいものでしたが、スキルアップのための情報はその他にも様々な場所で行えます。なので皆さんも様々なものを吸収して、自分自身を高めていってほしい。そして、動画をつくることを楽しんでいただければと思います。

Profileプロフィール

Andrew Kramer/アンドリュー・クレイマー

Andrew Kramer/アンドリュー・クレイマー

Video Copilot社の創立者。VFX制作のための無償チュートリアルをブログで公開したのをきっかけに、世界的に注目されるVFXアーティストに。『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』や『スター・トレック イントゥ・ダークネス』の制作にも携わる。
www.videocopilot.net

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