第6話以降、CGでやってみたい表現は?
鈴木:今回CGで描かれたのは戦艦、MS、モビルワーカー、カメラマップでの背景と......あとほかにはコックピットは基本的にシート以外はCGになっていますね。
江上:ほかには作画とのハイブリッドですが、群衆シーンに関しても3DCGで作成していたりします。手描きの素材と組み合わせることでだいぶ上手くできると確信しました。クルマに関しても、これから遠景用のモブ車のバリエーションを増やしたいと思っています。また第4話冒頭に紙吹雪が舞うパレードのシーンがあるのですが、パーティクルだと計算だけでできてしまうところを作画のようにイメージを完全にコントロールすると、さらに情感を乗せることができる。これは作画が良いとかCGが良いとかと言う意味ではなく、作画の動きを前提に演出が組まれているので逆に全部をCGで表現しようとするとハードルが高くなってしまう。完全にコントロールするには手でパーティクルを置いていくしかないですからね。
長嶋:CGの弱点は痛感しましたね。CGスタッフはパーティクルを使うと考えたら意地でもパーティクルを計算だけでつくってしまいがちですが、その中で手前の1枚だけでも手でアニメーションさせて情感を出すということは可能だと思います。スタッフには「コンピュータの計算に任せないように」と教えています。モーションでもポージングでもほんのわずかな関節の曲げ具合で変わってくる。カッコ良く撮れるのは当たり前で、重心を含め細かい部分のディテールはシルエットに気をつけて追い込みました。たまにスタッフ間でその話をして、つくったポーズをあえてベタ塗りにして、シルエットでチェックをしてフィードバックをするようにしています。
鈴木:ザクのスカートと脚の部分に関しては、シルエットがはっきり出るようにかなり厳しくチェックした記憶があります。
長嶋:CGスタッフはリテイクの過程で鍛えられて考え方が変わりましたね。一時停止の映像を切り取った画像としてのシーンではなく、止めの画としていかにカッコ良く魅せるかという技量が求められました。限りなく止めに近い印象をもちつつCGで動きを付けていくという過程で「画をもたせることの大切さ」を学びました。「動かさないともたないシーン」ではNGなので、CG屋として根っこの部分を否定されるくらいのインパクトを感じつつ、本作ではそれがちょうどいいくらいでした。まちがいなく厳しいハードルですが、さらに上を目指すべくひたすら修行になりましたね。
鈴木:爆発の色もバリエーションを増やしてほしいという安彦さんからのオーダーがありました。作画っぽくということにこだわる選択肢のほかにも、3DCGで上手く爆発をつくれるといいなと思います。
長嶋:爆発の塊が広がっていきつつ変形して、というような仕込みを再度見直して塊自体にもうねりを加えることで、さらにディテールは上がったと思います。
鈴木:ただ単にパーティクルで飛び散るのではなく、爆発の広がりに関してもレイアウトのかたちとして隙間の空間のバランスにも気を遣って工夫して表現することが重要なんですよね。
井上:爆発の色のバリエーションは今後増やすことを検討しています。ディテールに関してもまだまだ飽くなき追求があり、スタッフ間でも議論が絶えませんので進化させていくつもりです。ちぎれるタコ足爆発(※5)に関してはCGスタッフ泣かせの表現ではありますが、同時にチャレンジのしがいがありますね。
※5:納豆のような糸をひくスタイライズされた爆発
長嶋:第6話では戦艦の破壊表現をもっとハイクオリティにしたいです。内部フレームが火事になるなどモデルからつくりを変えるものや、戦場の背景で戦艦がそれぞれちがうダメージを受けているシーンなどチャレンジしてみたいですね。
井上:壊れるモデルに関しても慣れてきたので、あらかじめ壊れモデルを用意して、破片の飛ばし方にもこだわっています。今後はさらに何種類かの壊れモデルを用意してディテールの差でも楽しめるようにしたいですね。
江上:作品として、安彦さんの見せ方として、戦場での戦争のディテールを描く作品ではないのですが、作品として必要なシーンに関してはディテールを意図的に見せる演出はあると思います。演出意図によってその振り幅を可変にすることで、作品にも厚みが出てさらに良い作品になると思いますので、そこに備えてCGスタッフにも表現力と技術を磨いてもらえると嬉しいですね。
鈴木:私自身はCGはできませんが、私もがんばるので期待しています。
西村:私はCGの知識が多少あって鈴木さんのレイアウトも理解しているので、今後も厳しくチェックして、トータルの画づくりで作品を盛り上げていきたいです。
井上:作画スタッフとCGスタッフは二人三脚なので今後ともよろしくお願いいたします!