>   >  「SIGGRAPH Asia 2017 BANGKOK」開催。その見どころを「2018 TOKYO」カンファレンスチェアの安生健一氏が解説
「SIGGRAPH Asia 2017 BANGKOK」開催。その見どころを「2018 TOKYO」カンファレンスチェアの安生健一氏が解説

「SIGGRAPH Asia 2017 BANGKOK」開催。その見どころを「2018 TOKYO」カンファレンスチェアの安生健一氏が解説

<2>インタラクティブなプログラムを充実させたい

ーーSIGGRAPH ASIAは開催国が毎回ちがうため、その国やその都市のカラーが出やすいという特徴があります。SIGGRAPH Asia 2018では、どんなカラーが出せると思いますか?

安生:多くの産業が集結していることが、東京のカラーであり強みですね。数多くの産業界の方々がSIGGRAPH Asia 2018に参加してくれるよう、ゲームやアニメ、映像はもちろん、医療や建築のビジュアライゼーションなど、エンターテインメント以外の産業の方々にもお声がけしています。東京は色々な国、文化、産業の人とものが交錯するのに相応しい場所だと思います。そういう思いを込めて、来年のテーマは「Crossover」にしました。とはいえ私の思いを強要するつもりはないので、来年のチェアたちには「Crossover」というテーマを基点に、各自が思いつくことを自由にやってくださいとお願いしています。

最終日のクロージングセッションにて、SIGGRAPH Asia 2018のテーマである「Crossover」や、開催地の東京をPRする安生氏 image courtesy of ACM SIGGRAPH

ーー来年のチェアとプログラムがどんな構成になるか、楽しみにしています。

安生:来年は、インタラクティブな、その場に行かないと体験できないプログラムをさらに充実させたいと思っています。準備も実施も難易度は上がりますが「参加したい」と思わせる訴求力は一番強いですからね。まずはそれが東京で実施できることを担保し、ACM SIGGRAPHの承認を得る必要があるので、協力してくれる仲間を探しています。先ほども言ったように東京には色々な産業が集まっているのに加え、海外と連携している企業も多いので、必然的に色々な人が集まりやすい環境にありますね。それとは別に海外の方々にもダイレクトに協力を依頼しており、ローカルに偏りすぎないように気を付けてもいます。

ーー東京在住の人にとっては、国内に加え、海外からの来場者とも「Crossover」できる場になりそうですね。

安生:そうです。国内外にわたるネットワーキングはSIGGRAPHで得られる大きなメリットの1つです。そのメリットを、まだまだ先の長い若い方々に、いっぱい体験していただきたいですね。SIGGRAPH Asia 2018が、その体験のきっかけになればと願っています。例えば理工系の大学生であれば、まずはPostersに応募してほしいです。Technical PapersTechnical Briefsは難しいかもしれませんが、Postersであれば学部生でも採択される可能性は充分にあります。美術系の大学生や専門学校生であればCAFに応募するという選択肢があります。そういう場に発表者として参加し、他国の人と交流する体験を積んでいけば大きな財産になるでしょう。

Technical Papers

SIGGRAPH Asia 2017 - Technical Papers Trailer

Technical Papersには合計312件の応募があり、その中から75件が採択された。チェアを務めたのはヘブライ大学のDani Lischinski氏。90年代からCGの研究を続けており、ピクサー・アニメーション・スタジオ(以後、ピクサー)でサバティカルイヤー(大学教授に与えられる半年∼1年の研究休暇)を過ごしたこともあるという経歴の持ち主だ。

SIGGRAPH Asia 2017ダイジェスト

先のTechnical Papers Trailerの0:45∼1:08で紹介されている「A Hyperbolic Geometric Flow for Evolving Films and Foams」は、石田定繁氏(ニコン東京大学)、山本真史氏(東京大学)、安東遼一氏(国立情報学研究所)、蜂須賀 恵也氏(東京大学)の共著による論文。シャボン玉の動きを数学的(幾何学的)に再定式化し、自然なゆらめきを表現しながら、プラトーの法則(Plateau's laws)と呼ばれる自然法則に従う形状を実現するシミュレーション手法を作成した。この手法を用いると、美しいシャボン玉の動きを従来よりも高速に計算できるため、大量のシャボン玉を扱える。外力の作用を直接記述できるといった恩恵もある。詳しくはProject Pageを参照してほしい。

Avatar Digitization From a Single Image For Real-Time Rendering」は、南カリフォルニア大学のHao Li氏らの研究グループによるアバター作成に関する論文。Li氏らは「Pinscreen」というベンチャー企業を設立し、同名の顔認識技術の開発を精力的に続けている。Pinscreenは2016年に180万ドル(約2億円)の資金を調達しており、その動向が注目されている。今回の論文もその技術開発の一貫で、正面から撮影した人物の顔写真1枚から3Dのアバターを生成し、リアルタイムに描画するシステムを提案した。 Li氏らは以前からこのシステムの開発を続けており、頭部と髪が別メッシュのアバターを生成できる点が、今回新たに加わった代表的な成果だ。生成されたデータは既存のゲームエンジンとの互換性を有しており、ゲームやVRアプリケーションをはじめ幅広い用途に活用できるという。

Technical Briefs, Posters

Technical BriefsはいわゆるShort papers扱いの論文で、完成度では前述のTechnical Papers(いわゆるFull Papers にあたる)には及ばないが、先端的な試みが発表される場として注目を集めている。SIGGRAPH Asia 2017では合計60件の応募があり、その中から27件が採択された。

なお、さらに初期段階の研究、斬新で有望なアイデアを発表する場としてPostersも設けられている。こちらは合計111件の応募があり、その中から58件が採択された。

BRDF Reconstruction from Real Object using Reconstructed Geometry of Multi-view Images」は、奈良先端科学技術大学院大学の大野大志氏、久保尋之氏、舩冨卓哉氏、向川康博氏の共著による論文。近年ゲームや映画制作で多用されているフォトグラメトリに関する研究で、物体の形状やテクスチャに加え、BRDF(いわゆるツヤツヤ、ザラザラといった反射特性)までキャプチャできる手法を提案している。フォトグラメトリで物体を復元する際には、物体の周囲に満遍なく光源を焚いた環境で数十枚の写真を撮影する。これに加え、本研究では1つだけ光源を焚いた環境でも写真を撮影しておく。そうすれば、従来のフォトグラメトリによって被写体の形状と法線、さらにカメラ方向まで復元できるため、その情報を基に、被写体の反射特性(入射光と反射光の