>   >  「SIGGRAPH ASIA 2017 BANGKOK」開催。その見どころを「2018 TOKYO」カンファレンスチェアの安生健一氏が解説
「SIGGRAPH ASIA 2017 BANGKOK」開催。その見どころを「2018 TOKYO」カンファレンスチェアの安生健一氏が解説

「SIGGRAPH ASIA 2017 BANGKOK」開催。その見どころを「2018 TOKYO」カンファレンスチェアの安生健一氏が解説

SIGGRAPH」は世界最大のコンピュータグラフィックスとインタラクティブ関連技術のカンファレンスだ。その関連イベントである「SIGGRAPH ASIA」は、2008年から昨年までの間にシンガポール、日本(横浜、神戸)、韓国(ソウル)、中国(香港、深圳、マカオ)など、アジア各国で開催されてきた。SIGGRAPH ASIAの規模はSIGGRAPHと比較すれば格段に小さいが、回を重ねるごとに内容が充実し、知名度も増している。

今年のSIGGRAPH ASIA 2017は11月27日(月)∼30日(木)の4日間にわたりタイのバンコクで開催され、58の国から6,500人以上の来場者が訪れた。そして来年のSIGGRAPH ASIA 2018は2018年12月4日(火)∼7日(金)にかけて東京国際フォーラム(有楽町)で開催され、10,000人以上の来場者(うち、海外からの来場者1,800人以上)が見込まれている。SIGGRAPH ASIA 2017を視察中の安生健一氏(SIGGRAPH ASIA 2018 カンファレンスチェア/オー・エル・エム・デジタルイマジカ・ロボット ホールディングス)に、今年の見どころと来年の抱負を語ってもらった。

TEXT_尾形美幸 / Miyuki Ogata(CGWORLD)



【左】会場となったBangkok International Trade and Exhibition Centre(略称、BITEC)は、スワンナプーム国際空港から車で約30分、バンコク中心部からは鉄道で約20分の距離にある/【右】初日のレジストレーションカウンターに並ぶ来場者 image courtesy of ACM SIGGRAPH

<1>SIGGRAPH 2017と同様、バンコクでもVR関連の発表が活発

ーーまずはバンコクでSIGGRAPH ASIAを開催することになった経緯を教えていただけますか?

安生健一氏(以後、安生):SIGGRAPH ASIAはオリンピックと同じように、都市対抗で開催地を決めるんです。ACM SIGGRAPHから視察団を迎え、開催地の熱意を伝える活動を各都市が行います。例年同様、SIGGRAPH ASIA 2017でも複数の都市が手をあげましたが、バンコクがすごく積極的に誘致活動を行なった結果、タイでの初開催が決まりました。例えば今年のExhibitionには70以上の企業や学校が出展しており、その中の50以上がSIGGRAPH初出展です。バンコクが熱心に活動してくれたおかげで、地元バンコクを中心に数多くの出展が実現しました。

【左】Exhibition会場。写真右奥はVR ShowcaseEmerging Technologiesの展示会場となっている image courtesy of ACM SIGGRAPH/【右】Exhibition会場の中央に設置されたタイのパビリオン。タイを拠点とする8つの企業がブースを設けていた

【左】写真左はTACGA(Thai Animation & Computer Graphics Association)のパビリオン内に設けられた、The Monk Studiosのブース。映像作品の上映に加え、リクルーティングも行なっていた。同社は国内外のクライアントの映像を手がけており『Kingsglaive Final Fantasy XV』(2016)の制作にも参加している。同社の創業者であるJuck Somsaman氏は今年のComputer Animation Festival(CAF)のチェアを務めた。Somsaman氏はRhythm and Hues Studiosで16年以上VFX制作に携わった後、2007年にバンコクへ戻り同社を設立している。写真右奥はRiFF Animation Studioのブース。同社が手がけた『Midnight Horror』はCAFのElectronic Theaterで上映された/【右】YGGDRAZIL GROUPのブースではVR作品を展示。同社も『Kingsglaive Final Fantasy XV』の制作に参加している。以上の3社は「Thailand Animation Studio Showcase」と題したセッションも実施した。会期中はバンコク市内の学生が数多く招待され、ExhibitionやVR Showcaseの展示を楽しんでいた

【左】バンコクに本社を置くYannixのブース。ハリウッドに支社があり、映画やTV番組のモーショントラッキングを手がけている image courtesy of ACM SIGGRAPH/【右】同じくバンコクのLumio 3Dが展示していたカメラ。球状のカメラ内に物体を格納すると、その形状やテクスチャデータを撮影できる image courtesy of ACM SIGGRAPH

【左】Global CGI Projectのパビリオン。韓国の企業が共同でブースを設けていた image courtesy of ACM SIGGRAPH/【右】マレーシアのパビリオン

【左】日本のFORUM8のブース image courtesy of ACM SIGGRAPH/【右】VRモーションシートを体験するバンコクの学生。このシートはVRシミュレーションと連動しており、HMDの映像に合わせて揺動する image courtesy of ACM SIGGRAPH

【左】Thammasat University(バンコクの国立大学)のブースでは、VRとグリーンバック合成を組み合わせた展示を行なっていた/【右】同大学のブースを見学するバンコクの学生。彼らの前にあるのは同大学の学生が制作したポートフォリオで、コンセプトアートやキャラクターデザインなどが掲載されていた image courtesy of ACM SIGGRAPH

【左】フロリダにあるRingling College of Art & Designのブース image courtesy of ACM SIGGRAPH/【右】京都の立命館大学映像学部のブースと、同大学教授の大島 登志一氏。ここ数年、SIGGRAPH ASIAには連続して出展しているという。「SIGGRAPH ASIAのExhibition会場は、学術界と産業界の中間地点のような空間だと感じています。ここで学生の作品や研究成果を展示していると、学術界と産業界の両方から有益なフィードバックを得られます。加えて映像学部の国際的なPRの場として期待しており、出展を始めて以降、海外の学生からの問い合わせが増えました。そういう効果があるから、他国の有名な学校も複数出展しているのだと思います」(大島氏)

ーーSIGGRAPH ASIA 2018の場合も、東京都が積極的な誘致活動を行なったのでしょうか?

安生:はい。東京都が随分サポートしてくれました。今回も東京観光財団の方々がわざわざ現地に来て、SIGGRAPH ASIA 2018のPRブースに立ってくれています。バッジに付けるリボンまでつくってくださり、細やかな気配りが嬉しいですね。加えて、今年のCAFでもアドバイザーをなさった塩田さん(※)をはじめ、数多くの方々が協力してくださいました。

※ 塩田周三氏。ポリゴン・ピクチュアズ 代表取締役。SIGGRAPHやSIGGRAPH Asiaにおいて、CAFの審査員や審査員長を歴任している。

【左】SIGGRAPH ASIA 2018のブースと、東京観光財団 コンベンション事業部誘致事業課の須藤智子氏/【右】バンコクの学生にSIGGRAPH ASIA 2018をPRする同財団の池山貴大氏(写真中央)と、ケルンメッセの宮﨑 元一郎氏(写真右)。来年は学生を連れてSIGGRAPH ASIA 2018に参加したいという教員からの問い合わせもあったという

【左】会場ロビーで記念映像を撮影するバンコクの学生。彼らの中から、将来バンコクのCG業界を牽引するエンジニアやアーティストが生まれるかもしれない。たとえ制作者の路を選ばなくても、CG制作のよき理解者やファンになってくれれば、CG業界にとって追い風になるだろう/【右】東京開催をPRするため、東京観光財団が制作したリボン(安生氏のパスの最下部)

安生:私はこれまでに横浜(SIGGRAPH Asia 2009)でSketchs & Postersのチェアをやり、神戸(SIGGRAPH Asia 2015)でCoursesのチェアをやってきましたが、東京ではカンファレンス全体のチェアをやりますから、さらに責任重大です。SIGGRAPHは一般的な学会とはちがい、それ以外の要素もすごく多いので、学術界と産業界が一致団結して盛り上げていく必要があります。そのために国内外のあちこちの方に協力を依頼しています。なかなかにやりがいがありますよ。

ーー今年のExhibitionやCAFではバンコクの企業と学校が確かな存在感を示していますから、来年の日本ではより一層の盛り上がりを期待したいですね。そんな中で今年の見どころをあげるとしたら、何だと思いますか?

安生:夏のSIGGRAPH 2017と同じくVRだと思います。VR Showcaseはもちろん、ExhibitionEmerging Technologies、CAFのPanel & Production Talksなど、様々なところでVRに関する発表がなされています。VRやARはこれまで分岐する一方だったCG技術を総結集させることで実現するので、今年のテーマである「The Celebration of Life and Technology」に相応しいとも思います。日本の企業や大学も様々なVR技術を披露しているので、このながれを来年へと継続させたいですね。

【左】VR Showcaseにて、Anatomy Builder VR: Comparative Anatomy Lab Promoting Spatial Visualizationの解説をするTexas A&M UniversityのJinsil Hwaryoung Seo氏(写真右)/【右】本展示はVR技術を使った解剖学教材で、様々なステージが用意されている。この写真は「Sandbox(砂場)」と名付けられたステージで、無重力状態の空間内でヒトの全身骨格を組み立てることができる。骨格データは実物を3Dスキャンしてつくられているため、非常にリアルで高精細だ。筆者も試してみたが、例えば腓骨の上下を見分け、脛骨の関節面に合わせる作業はなかなかに難しいと感じた

同展示の別ステージ。VR空間内に表示された骨の名前と合致する骨を拾い、バスケットボールのゴールに投げ入れて得点を重ねるという奇想天外な発想が印象的だった

同じくVR ShowcaseのReverseCAVE Experience: Providing Reverse Perspectives For Sharing VR Experienceは、落合陽一氏のDigital Nature Group筑波大学)による展示。SIGGRAPH 2017のPostersで発表した内容を、今回のVR Showcaseでは実際に展示したという。VRゲームのプレイヤーを囲む4枚の半透明スクリーンにプレイヤーの見ている空間を投影することで、周囲の観客はプレイヤーとVR空間を同時に確認できる。【左】は投影前、【右】は投影後の状態

【左】床に設置された4台のプロジェクタを使い、4方向から映像を投影している/【右】本展示の研究開発メンバー。本展示に使われたゲームは、落合氏の依頼を受けたVRワイバオ・ジャパンの長谷川 雄一氏(写真の左から2番目)が、展示機器に合わせてUnreal Engineで制作したという。「せっかくの展示ですから、見映えのするコンテンツをつくってほしいという依頼を受けて制作しました。こういう形で学術界と産業界がコラボレーションしていくことは面白いと感じます」(長谷川氏)

Digital Nature Groupは、Emerging Technologiesでも2件の展示をしていた。Telewheelchair: A Demonstration Of The Intelligent Electric Wheelchair System Towards Human-Machineはその中の1つで、VR技術を活用した電動車椅子のシステムだ。【左】写真奥の男性が装着したHMDで車椅子の上部に取り付けられた360度カメラの映像を確認できるため、車椅子を押す人の視点での遠隔操作が可能となる/【右】本展示の研究開発メンバーである、橋爪 智氏(写真左)と高澤和希氏(写真右)。共に筑波大学の修士課程の学生だ

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<2>インタラクティブなプログラムを充実させたい

Profileプロフィール

安生健一/Ken Anjyo

安生健一/Ken Anjyo

株式会社オー・エル・エム・デジタル 技術顧問。株式会社イマジカ・ロボット ホールディングス 事業戦略部 アドバンスト リサーチ グループ ディレクター。工学博士。国内外の研究者・技術者との「使える」技術開発のコラボレーションに加え、SIGGRAPHを始めとするCGの国際会議での研究発表などの対外活動も活発に行なっている。「SIGGRAPH ASIA 2018」ではカンファレンスチェアを務める。
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