>   >  独学からZBrushのマスター認定者へ、Villard 岡田恵太が語るクリエイティブの発想と技術のヒント
独学からZBrushのマスター認定者へ、Villard 岡田恵太が語るクリエイティブの発想と技術のヒント

独学からZBrushのマスター認定者へ、Villard 岡田恵太が語るクリエイティブの発想と技術のヒント

<3>技術は上手い人の下で伸びる 入社試験は一度だけで諦めないこと

――学生やこれからデジタルアーティストの道を目指す方へ、岡田さんの経験を踏まえてのアドバイスやメッセージをいただけますか?

岡田:もし自分が目指している会社に受からなくても一度で諦める必要はないと思います。僕自身、フロム・ソフトウェアはクリーチャーがつくれるのでどうしても行きたかったのですが2回受けて落ちた経験があります。最初は専門学校のとき、次は東京へ来たとき。そして3度目でようやく受かりました。今はすごく仲良くさせてもらっているし、笑い話になっていますが(笑)。

――ある時点では実力が足りなくても、また技術を磨いて受ければ良いと。

岡田:そうですね。そもそも会社って、実力がある人でもプロジェクトの進行具合やその人がアサインできる環境があるか、とか会社側の事情によって断ることもあるんです。落ちたからといって、必ずしも下手だというわけでもない。タイミングの問題かもしれません。そして、もし落ちたとしてもそれで諦めて中途半端なところに行ってやりたくもないことをするくらいだったら、行かないほうがいい。そこで過ごしたとしても伸びしろは少ないと思います。学生は特に最初はどこかに入らなきゃと思いがちですけれども、あまりにも意に沿わないところに行くくらいなら、僕みたいにバイトでもしながら独学をしてもいいし、プライベートで師事する人を見つけたっていい。技術が伸びるスピードは、絶対に上手い人の下にいた方が速いです。そういう人の下で経験を積んだほうが良いと思います。他には懇親会や飲み会でどんどん声をかけていけば良いと思います。自分が若いときもCGWORLD クリエイティブカンファレンスで「自分の作品を見てください」と行ってましたので。うるさがられることはないので、恥ずかしがらずに行ったほうが良いと思います。あとはポートフォリオをつくること。面接でもよく聞くのですが、「頑張ります」と言われても作品がなければ判断できないので、しっかりと見せられるものをつくる目的で動いてほしいですね。


giraffe_(Kirin)

――ZBrushに触れるまでにやっておいた方が良いことは何でしょうか?

岡田:それは間違いなくデッサンです。絶対にやっておいたほうがいい。最初はブロックでも何でもいい。面の取り方とか、例えば固いものを固く見せる描き方、丸を描くのならながれに沿った影の描き方とか、ZBrushの造形にも通じるところがあるんです。デッサン力がない人が使っても上手く使いこなせません。逆に言うと、絵がきちんと描ける人は形を捉える力があるからZBrushをすぐに使いこなせます。だから絶対にデッサンをやっておいたほうが良いと思います。

――岡田さんは2017年に自らが代表となる株式会社Villardを創業されましたが、フリーランスの個人事業ではなく会社を設立したのはどんな理由からだったのでしょうか?

岡田:自分がしたいことをするためです。やはりクリーチャーと造形が好きなので、それに特化できる会社をつくりたかったんです。フリーランスでやるよりも会社にすると社会的な信頼感も大きくなるし、できることの規模が大きくなります。一人の力では限界があると思ったので、それを補うためにきちんと顧問や税理士さん、社労士さんもつけてやっています。

――会社ではスカルプトのスタチューやシルバーの販売をされていますが、これは会社設立時点からの計画でしたか?

岡田:いえ、これは設立して少ししてからですね。Facebookなどで作品を出すと、売ってほしいという声が以前から届いていたんです。その後、海外に量産できる会社を見つけて、自分で現地に行ってクオリティや生産状況を確認してから事業のひとつに加えました。スタチューをお求めになるお客さんは、日本の方もいますが海外の方も多いです。そもそも、スタチューや立体は海外の方が文化として根付いているので、そうした需要があるのではないかと思います。あとこれは計画段階の話ですが、スタチューのアカデミック版を販売しようと考えています。学生さんはなかなか手が出せないかもしれないので、そこは安く提供したり、専門学校にはスカルプトの見本になるようなものを無償に近いかたちで提供していければと考えています。


Villard Inc.のショップページ

――会社の事業展開として今後予定されていることは?

岡田:まずは造形と3DCGの2ラインでいきたいと考えています。クリーチャーだけではなく、機械類や背景もありますが、会社のメインとしてはスカルプトでやっていきたいですね。スタチューは現在色がついたものを販売していますが、お客さんがご自身で色を塗りたいという声も届いているので、少し小さいシリーズでキット販売をできればと思っています。その他の事業としては、スタチューのECサイトにアクセサリーや服飾、ネイルなども加えていけたらと。やはりビジネスにおいて女性とも上手くコラボレーションしていきたいと思っているので。あとは少し余裕ができたら教育ビジネスをしていきたいですね。2018年1月から東京コミュニケーションアート専門学校で講義をするのですが、他にもセミナーのお声がけはいただいているので。

――クリエイターとして、これからやってみたいこととしてはどんなことを構想されていますか?

岡田:創作活動にもっと力を入れていきたいですね。まず、2018年の後半に玄光社から作品集の出版が予定されているので、それに向けて作品を揃えていくことになります。会社の仕事はディレクションだったりクオリティのチェックをしつつ、自分の作品をつくっていきたいです。それはスタチューというかたちかもしれないし、個展かもしれないし、造形好きな人を集めた展示会かもしれないし、そういった創作活動をしていきたいなと考えています。

Profileプロフィール

岡田恵太/Keita Okada(Villard Inc.)

岡田恵太/Keita Okada(Villard Inc.)

デジタルスカルプター、3Dコンセプトアーティスト。1991年7月生まれ、広島県出身。2012年大阪の専門学校を卒業後、大阪のゲーム会社に就職。2013年に退職し上京した後、1年ほど建設現場の作業員(荷揚げ屋)などをしながらZBrushを独学で習得し東京のゲーム会社へ就職。2015年からフリーランスとなり、PS4用ゲームのDLC『Bloodborne The Old Hunters』をはじめ主にクリーチャーなどのコンセプトモデルを手がける。2017年3月、新会社「Villard」を設立
www.artstation.com/artist/yuzuki
www.villard.co.jp

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