<4>ゲームと映像、両方を知っていることが強み
CGW:仕事の見通しはいかがですか?
福本:おかげさまで、グロスで受注してくれないかというお問い合わせもいただいています。しっかりとしたアウトプットが安定して出せるよう、まずは足下を固めることに注力して体制を整えたいですね。
橋本:リブゼント自体も事務所を増床して、BACKBONEスタジオのスタッフがゆったりと仕事ができるようにしています。
CGW:リギング専門のスタジオは、日本では初となりますが、海外でも例がないのでは?
橋本:だと思います。だからこそ面白いと思っていて。私もそういった変わった試みが好きなんです。
CGW:先ほどのお話にもありましたが、リギングについて提案すると、ワークフロー全体についても提案せざるを得ないですよね。
福本:そこが面白くもあり、難しさでもあると思っていて。我々は各社様のニーズや作法に合わせて、一緒に考えていくスタイルを採っています。ツールや仕様ががっちり決まっていれば、それに合わせて作業をします。逆にこちらから、様々な提案をすることもあります。
CGW:クライアントに傾向はありますか? 映像業界が多いとか、ゲーム業界が多いとか......。
福本:単純に業界傾向というだけでなく、新しい領域に挑戦したいというご相談も多いですね。「これまでプリレンダーCGでやってきたけど、リアルタイムCGにも参入してみたい。ついては、過去のアセット資産を上手く使えないか」などは典型例です。
CGW:なるほど。リアルタイムCGもゲームだけでなく、バーチャルYouTuberなど、さらに事例が拡大していますし、そうした相談も増えそうですね。
橋本:はい、そこは我々も当初から見越していた部分でしたし、実際に増えて来ていますね。VTuber関係でキャラクターのリグやゲームエンジンのセットアップにお悩みの会社さんも気軽にお声がけもらえればと思います。
CGW:リアルタイムCGとプリレンダーCG、もっと言えばゲーム業界とCG・映像業界で、リギングの傾向はありますか?
福本:ゲームはデータの制限が多いので、リギングもそれに則したものにする必要がありますね。ボーンの数だったり、ウエイト情報だったり......あまり凝りすぎると、FBXファイルにエクスポートできなかったりしますし。ときにはボーンの回転軸が問題になったりすることもあります。そうした問題をできるだけ事前につぶしていく作業が求められます。
CGW:逆にゲーム業界で働いていたリガーが映像業界に行くと、どのようなちがいを感じるのでしょうか?
福本:映像業界は制限がないので、逆につかみどころがないかもしれませんね。ゲームだと骨の数やデフォーマの種類に制限がありますが、映像ではいくらでも設定できますし、どの機能を使用しても構いません。一方で機能を詰め込みすぎるとデータが重たくなり後工程の作業に支障が出るので、そこはバランスを考えてリグを設定することが必要です。私も映像とゲーム、両方のリグ制作の経験がありますが、両者のちがいには驚かされました。
CGW:リガー人口が増えない背景に、リギングの面白さが知られていないという点もあるかと思います。福本さんはリギングのどんな点が面白いですか?
福本:ロジカルに組み上げていくことが、パズルを解いている感覚で面白いんですよ。難しい課題であればあるほど、頭を使いますし、達成感があります。筋肉を表現するのも好きですね。ウェイト作業が嫌いな方もいますが、自分は好きですね。それに、リガーは周囲に頼られることが多いんですよ。プレッシャーや責任感もありますが、周囲に頼られて感謝されるのが、自分の性格に合っていると思います。
橋本:ある会社さんからロボットの複雑なリギングを発注されたとき、福本さんがニヤニヤしながら成果物を見せてくれたことがあるんですよ。「自信作です。絶対に先方もビックリして、喜んでもらえると思うんですよね」って。本当にリギングが好きなんだなあと思いますし、彼が心からお客様に喜んでもらいたいと思って日々仕事をしているのが伝わり嬉しく思いました。そうした姿勢が重要だなと思いますね。
福本:私はアニメーション制作時にリグの問題で苦労した経験がたくさんあるので、アニメーターさんの気持ちがよくわかるんですよね。「ここをこうした方が絶対に喜んでもらえる」と思えば、つい手を動かしてしまいたくなります。そんな風に後工程を考えて設計するのはすごく大事ですし、そうした積み重ねの結果として実際に感謝されると嬉しい。