<3>秋元流の専門学校講師術とは?
CGW:連載開始の翌年から専門学校の先生も始められましたね。
秋元:東京デザイナー学院から始まって、デジタルハリウッドが加わり、今ではデジタルハリウッドだけになりました。だんだんマンネリになってきたんです。
CGW:いやいや、まだ25~26歳ですよ?
秋元:僕のすごく悪い癖なんですけど、何か新しい仕事があって、話を聞きながら頭の中で算段を付けていって、「できるな」と思ったら、もう興味がなくなっちゃうんです。でも、これは良くないとは思っていたんですね。それで、何か新しいことをしたいなと考えていたときに、専門学校の話が来て。学校で教えたら、若い子から刺激を受けられるだろうし、自分でもノウハウを整理し直せるだろうからと、やることにしました。最初は面白半分でしたけどね。
CGW:そうしたら、どうでした?
秋元:あんまり面白くなかったですね(笑)。でも、まれに熱い学生がいたりすると、良いなと思います。その一方で、熱さを勘違いしている学生も、もちろんいたりして。でも、それなりに毎年何とかやっているなという感じです。
CGW:ずっと続いているのがすごいですよね。学校の先生って、時間がかかるわりにはお金が儲からないですし。
秋元:お金では考えていないですね。1~2年やって、もうやりたくないと思ったんですが、そこから目的を人材発掘に切り替えました。僕も実際、学校の先生に引き抜かれて今の会社に入ったわけで。面接をやるより確実じゃないですか。
CGW:そりゃ、そうですね。だって、ずっと見ているわけですからね。良い人は採れましたか?
秋元:何人か引っ張りました。もちろん、辞めていく人もいるんですけどね。
CGW:授業は、どんな感じで進めているんですか?
秋元:学校には申し訳ないですが、本当にふざけていると思いますよ。というのも、Houdiniの講義は、どうしても座学っぽくなるんです。それだと、面白くないと思うんですよね。だけど、やっぱり面白くないと授業に出てくれないので。
CGW:ご自身の経験からしてもね。
秋元:僕は、自分が学校にあまりちゃんと行かなかったから、ファニーな先生でいようと思っているんですよ。この先生、なんか砕けてるな、という。授業が例えば3時間あったとしたら、Houdiniの授業は実質1時間くらいしかやっていないです。残りの2時間は僕の漫談ですね。季節の話題を振ってみたり。
CGW:1クラス何人くらいなんですか?
秋元:25人くらいから始まって、だんだん来なくなって、最後は10人を切るくらいですね。
CGW:10人前後だと良さそうですが、25人とかだと、きつくないですか?
秋元:楽しいですよ。人前で話すのは嫌いじゃないので。あとは、例えば最初の授業だと、どんな学生がいるのか知りたいんですよね。専門学校の学生は年齢にも幅がありますから、経歴や出身を聞いたり。北海道だったら、北海道のどの辺? とか細かく聞いていく。学生も、まさかそこまで突っ込まれるとは思っていないので、そこで一気に距離感が縮まったりするんです。
CGW:はいはい。
秋元:わりと全国津々浦々行っているので、地理には詳しい方なんですよ。それこそ学生時代はヒッチハイクで日本全国を回ったりとかもしていましたしね。そんな風に聞いていくと、その子がどのくらいシャイな人間なのかとか、どのくらいこっち側に来られるのかがわかるんですよ。
CGW:最初に見極めちゃうんですね。
秋元:自分と目が合うかどうかとか。それを最初に見たいですよね。やっぱり前に出られない子の方が多いんですよ、この業界は。ギークな子が多いし。だから、クラス全体の温度感みたいなものを最初につかんで、そこから進めていきます。
CGW:相手のことをよくわからないと、教え方もわからないですもんね。
秋元:そうなんですよね。授業が始まる前に必ず雑談を挟んで、場をほぐして。じゃあ、そろそろやる? という感じで、Houdiniの授業を始める。
CGW:なるほど、面白いですね。
秋元:そんな感じなので、ある程度のながれは頭の中でできていますが、基本はアドリブです。毎回、何をやるとかも決めてないですし。そのときの状況に応じて、じゃあ、こういうのをやってみようか、というのが基本的なスタイルです。
CGW:なるほどね。その中でも良さそうな学生さんはいますか?
秋元:いるんですが、優秀だなと思う子は、最初から志望が決まっていたりするんですよね。だからこそ優秀ということなんですが。逆に、どこにも行くところがないという学生は、やっぱり落ちこぼれで。ただ、人間の成長はわからないじゃないですか。僕も落ちこぼれでしたから。だから僕の方針としては、人柄が明るければ採るという感じです。
CGW:やっぱり、そこは重要ですか。
秋元:そもそも明るくないと、僕の下でやっていくのはきついだろうと思うので。うちの会社は、根が明るいんですよ。派手なんですよね、基本的に。飲むぞ、という文化も結構あるし。そういうのが苦手な子は、やっぱり辞めていっちゃう。
CGW:クリエイティブ業界にしては珍しいですね。宮下さんの性格でもあるんですか。
秋元:そうですね。あんまりオタクな感じではないかもしれません。僕も今となっては、マンガとかめちゃくちゃ読みますし、わりとオタクな感じだなと思いつつも、性格はそんなに暗くない方だし。その一方で、最近の子は明るいけどおとなしいという印象ですね。